ナショナル ジオグラフィックが2018年の記事で伝えている通り、ムスワティ3世は長年、アフリカ以外の人々がスワジランド(Swaziland)をスイス(Switzerland)と間違えると不満を漏らしていた。

 しかし、「スワジ人の地」を意味するエスワティニは、スイスに比べて面積は半分未満(四国よりやや小さいくらいだ)。スイスの直接民主制と異なり、ムスワティ3世は、82年も在位した父ソブーザ2世から1986年に王位を継承した。

 近年、エスワティニはサイの角の取引で物議を醸している。2019年のワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)締約国会議で、エスワティニはシロサイの角の国際取引を再開することを提案した。エスワティニはすでに、生きたミナミシロサイと狩猟で仕留めた個体の限定的な取引を認められている。しかし、角の国際商取引に参入するという提案は完全に退けられた。

 米国の公共ラジオ局NPRが報じているように、エスワティニでは、700人近くの命を奪った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いが続いており、政府は教師への賃金支払いに苦労している。こちらも2021年に入ってから抗議行動に発展した。その一方で、「国王と15人の妻はぜいたくな暮らしを続けている」と指摘する。

 貧しい国の名前を変えても、国民にとって解決策にはならないことを王家は学んでいる。新しい国名は過去を取り戻し、国民の誇りを呼び覚ますことを目的としたものだが、国民の多くは未来に目を向け、アフリカ最後の絶対君主への抗議行動に参加している。

 ある若者は6月、カタールのテレビ局アルジャジーラの取材に対し、「私たちスワジランドの若者は政府にとても失望しています」と語った。「私たちの政府は公平ではありません。この国はたった1人の男に所有されています」

独裁的な支配に抗議の声

 エスワティニでの抗議行動を受け、ムスワティ3世は2020年12月にCOVID-19で死去したアンブロセ・ドラミニ首相の後任としてクレオパ・ドラミニ氏を首相に指名した。この発表が行われたのは今年7月、民主的に首相を選出する権利などの改革を求めるデモが起きた後だった。

 ムスワティ3世は聴衆の前で、「国を正常に戻し、回復させ、経済をよみがえらせる人物であることを祈っています」と言った。しかし、BBCの報道によれば、ムスワティ3世は君主制に反対する抗議行動を「邪悪」で国を後退させる行為と言及したという。

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