高齢者はワクチンを接種していても、新型コロナウイルスに感染して重症化するリスクが高いことを示す証拠が積み上がっている。これに関して科学者は、意外なことではないという。新型コロナウイルスに対して高齢者はそもそもハイリスクであり、ワクチン接種を完了した後でもそれは変わらない。

 10月18日に、米国のコリン・パウエル元国務長官が新型コロナウイルス感染症の合併症により死亡したことが報道されると、ワクチンを接種しても感染するブレイクスルー感染への懸念が再び高まった。だがパウエル氏の場合84歳と高齢だったことに加え、白血球のがんである多発性骨髄腫を患っていた。このタイプのがんにかかっている人は、ワクチンにあまり良く反応しない傾向がある。

 免疫機能の低下に加え、高齢者のリスクが依然として高いことはデータで示されている。米疾病対策センター(CDC)がまとめた10月12日時点のデータによると、ブレイクスルー感染で入院した人の67%、死亡した人の85%は65歳以上だった。また、米ワシントン州シアトルと英国のデータも、ワクチンを接種した高齢者が重症化するリスクは、ワクチン未接種の子どもと同等か、場合によってはそれより高いことを示していると報道されている。

「年齢は非常に大きなリスク要因です」と話すのは、米バージニア大学の免疫学者ウィリアム・ペトリ氏だ。「45歳未満であれば死亡する確率はゼロに近いレベルです。けれど、それよりも年齢が高くなると、リスクはどんどん高くなります」

 ブレイクスルー感染への懸念から、米食品医薬品局は65歳以上を対象に、ファイザー製、モデルナ製、ジョンソン・エンド・ジョンソン製の3種類すべてのワクチンについて追加接種を承認した。

 そこで、免疫系の老化についてと、ブレイクスルー感染しても新型コロナワクチンの有効性があらゆる年齢の人にとって高いことに変わりはない理由について、今わかっていることをまとめてみた。

老化で過剰になる免疫と低下する免疫

 ワクチン接種が始まる前から高齢者がハイリスクだったのはなぜかに関しては、いまだに十分な説明がつかないと、専門家は言う。米アリゾナ大学の免疫学者ディープタ・バッタチャリャ氏は「このウイルスの大きな謎の一つです」と話す。

 老化の研究をする科学者は、加齢に伴う現象と関係があるのだろうという。人間の体は通常、病気や怪我、ストレスで損傷を受けた細胞を取り除くことができる。

 だが、体が老化するとこの機能が効率的に働かなくなる。すると、損傷を受けているものの死んでいないいわゆる「老化細胞」が体に蓄積し始める。この老化細胞が炎症やがんを引き起こす物質を分泌して、周囲の細胞に害を与える。こうして体が弱くなり、病原体と戦うことが難しくなる。

 しかし、老化した体には他にも多くのことが起こっており、様々な要素が作用しあって免疫反応を損なっているのだろうと、米カリフォルニア州にある生物医学研究グループ「バック老化研究所」所長で最高経営責任者のエリック・ベルディン氏は言う。

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