ジャイアントパンダやコアラなど人の心をわしづかみにする動物たちは、愛くるしく、思わず抱きしめたくなるという共通項がある。ぬいぐるみにすれば子どもたちに大人気のおもちゃになる動物たちだ。「でもブロブフィッシュがぬいぐるみになることはありません」と、生物学者でコメディアンのサイモン・ワット氏は皮肉交じりに言う。氏は、見過ごされがちな動物たちの認知度を上げるために、「醜い動物保護協会(Ugly Animal Preservation Society)」というウェブサイトと活動組織を立ち上げた。

「ほとんどの動物はかわいくありません」とワット氏。その上、「怖い」とか「醜い」とかという印象を抱かせるとなると、その動物の保護活動はさらに困難になる。ここでは、自然界全体を保護することに価値があると教えてくれるナショナル ジオグラフィックの「ヤング・エクスプローラー(探求者)」たちとその活動を紹介しよう。

好奇心旺盛で子犬のようなサメ

「サメについて、多くの人は映画『ジョーズ』で知っているだけです」と、サメを研究する生物学者のデボラ・サントス・デ・アゼベド氏は言う。サメに関する誤解を解き、海にとって貴重な存在であることを人々に伝えるのが氏の重要な仕事だ。

 アゼベド氏がサメの研究者であること知ると、大概の人はサメに噛まれたことはあるかと聞くという。

「噛まれそうになったこともありません」と氏は笑いながら答える。そんな質問をされた時は、氏が大好きなニシレモンザメ(Negaprion brevirostris)について、決して人には危害を加えないサメだと説明する絶好のチャンスだ。

「好奇心旺盛でまるでゴールデンレトリバーのようなサメです。人間に近づくことをまったく恐れず、しょっちゅうぶつかってきます。『おい、元気か?』などという感じでね」とアゼベド氏は言う。

 フロリダで暮らす移民で、家族の中で初めて大学に通ったアゼベド氏にとって、研究者への道は平たんではなかった。ニシレモンザメが出産するバハマを定期的に訪れるのは経済的に無理だった。

 しかし氏はサメ保護団体である「American Shark Conservancy」の仕事をする機会に恵まれ、地元でニシレモンザメの調査と研究を始めた。国際自然保護連合(IUCN)が危急種(vulnerable)に指定するニシレモンザメはフロリダとフロリダ周辺の海に暮らしている。

 アゼベド氏は現在、ナショナル ジオグラフィックのヤング・エクスプローラーとして市民科学プロジェクトに参加し、一般の人々と共にニシレモンザメが生き残るためには何が必要かを研究している。

 またこのプロジェクトは氏と同じ世代の若者に海に入ってもらい、サメへの恐怖心をなくしてもらうチャンスでもある。

「プールにしか入ったことのない人たちにサメと一緒に泳いでもらいました」

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