父親になることは健康に良い、より幸せで長生きに、科学の教え
ナショナル ジオグラフィック日本版6/15(日)10:00

父親になることは健康に良い、より幸せで長生きに、科学の教え
父親になる代償はよく知られている。経済的な責任や、それを負うストレス、睡眠不足、自由時間の減少などだ。その一方で、子育てというこの上なく重要な役割を担うことには、実は心にも体にも恩恵が多い。
もちろんそれは、母親やそのほかの保護者・養育者にも当てはまるが、特に父親になると人生にどんな(主に良い方向への)変化が起こるのかを見てみよう。
心の健康
親になると、思いやりの心が増し、人生が充実し、仕事の業績やワークライフバランスに関する満足度が高くなるなど、男性の精神的な健康に多くの好ましい影響を与える可能性がある。
「自分の子どもの世話をし、一緒に時間を過ごすのが、すべての親、特に父親の感情面への恩恵と関係していることは、研究で繰り返し報告されています」と、米アリゾナ州立大学「社会的つながりとポジティブ心理学研究所」の所長で行動科学者のキャサリン・ネルソン・コフィー氏は言う。
こうした恩恵を測るため、ネルソン・コフィー氏は複数の研究で、男性が日常的に携わる活動について、誰と行い、それぞれの活動中にどのような感情を抱くかに注目しながら比べた。
すると「どの研究でも父親たちは一貫して、子どもたちと一緒に過ごしているときのほうが、ほかの活動に携わっているときよりもポジティブな感情を抱き、意義を感じると報告しました」と氏は説明する。
さらに、新しく父親になると、いわゆる「幸せホルモン」が大量に分泌される。米ノートルダム大学のホルモン・健康・人間行動研究室長で生物人類学者のリー・ゲトラー氏らが2021年4月に学術誌「Developmental Psychobiology」に発表した論文は、生まれたばかりの赤ちゃんを初めて抱くとき、父親のオキシトシンが著しく増えることを示している。
もう一つの注目すべき変化は、幼いわが子と一緒にいるときにテストステロン(男性ホルモンの一つ)が減ることだ。
「テストステロンの値が高いと、恋愛相手を見つけるための努力や競争に時間とエネルギーを使いがちです。逆に値が低いと、パートナーとの協力や子育てに時間とエネルギーを注ぐようになります」と、ゲトラー氏は言う。
ゲトラー氏らは、この変化を測定した初の大規模な長期研究を行い、その結果を2011年9月に学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表している。
男性が子どもたちのすぐそばで暮らす文化では、争いごとを好まず、戦争を始める可能性も低い傾向があることに人類学者たちは昔から気づいていた。その理由の一つが、これらのホルモン変化によって生まれる共感や理解なのだと、米カリフォルニア大学デービス校の名誉教授で、『Mothers and Others: The Evolutionary Origins of Mutual Understanding(母親とその他の人々:相互理解の進化的起源)』の著者であるサラ・ブラファー・ハーディー氏は言う。
ホルモンが変化するだけでなく、父親は多くのポジティブな感情も抱く。子どもが何か面白いことを言ったり、新しい能力を身につけたり、言葉や行動を通して優しい愛情を示したりするときなどだ。「このように頻繁にポジティブな感情を抱くことが、心の健康や幸福感を築く重要な土台となります」とネルソン・コフィー氏は話す。
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