自然保護の楽園を「イスラム国」が襲撃し崩壊寸前、モザンビーク
ナショナル ジオグラフィック日本版6/16(月)19:00

自然保護の楽園を「イスラム国」が襲撃し崩壊寸前、モザンビーク
モザンビーク北部のニアッサ特別保護区に設立した「マリリ環境センター」が過激派組織「イスラム国モザンビーク州」(IS-M)に襲撃された。「ニアッサ肉食動物プロジェクト」で大型肉食動物の保全に取り組む保全生態学者のコリーン・ベッグ氏のスマートフォンにそのメッセージが届いたのは、2025年4月29日の夜7時過ぎだった。
氏は夜を徹して救助活動の対応にあたったが、朝には厳しい現実を突きつけられることになった。レンジャースカウトチームのうち5人が行方不明になっていて、氏と夫のキース氏が20年以上にわたり心血を注いできた自然保護活動は崩壊の瀬戸際に立たされた。
襲撃からひと月半ほど経った今も状況は好転していない。ニアッサ特別保護区の半分が閉鎖され、武装勢力を警戒するモザンビーク軍の完全な軍事占領下に置かれている。村人たちは安全な場所に避難し、観光業者は被害を最小限に抑える対策に追われているため、ニアッサの経済・ビジネスモデルは破綻しつつある。
ルジェンダ川沿いの9つの観光利権付き保全区域と22のスカウト詰め所は放棄された。英国と米国の国務省はモザンビークへの渡航警告を発した。ベッグ氏は、「今回の襲撃で、観光による収入の基盤は壊滅的な打撃を受けました」と言う。「観光客は来ません」
古代から人々が動物たちと共存
ニアッサ特別保護区は、モザンビークがポルトガルの植民地支配下にあった1954年に狩猟保護区として設立された。内戦が集結した1999年に自然保護区となって以降、保全活動に熱心に取り組んできた。
近年では、保護区のライオンは800〜1000頭まで増えた。この規模の群れはアフリカに7つしか残っていない。2008年からの10年におよぶ密猟危機で壊滅状態にあったゾウの群れも回復しはじめ、平原にはリカオンが約350頭生息している。
非常に辺ぴな場所にあり、知名度も低いニアッサは、その広さと自然保護へのアプローチのいずれにおいてもユニークな存在だ。日本の面積の1割を超えるおよそ4万2000平方キロメートルの柵のない大自然の中に47の村があり、約7万人が暮らしている。
住民のほとんどは自給自足生活を営む農民と漁師だ。アフリカの他の保護区ではしばしば地域社会を犠牲にして動物の保護を優先する思想が見られるが、ニアッサには古代から動物たちと共存してきた人々の暮らしが残っている。
次ページ:人間と野生動物は共存しているだけでなく協力している










