自然保護の楽園を「イスラム国」が襲撃し崩壊寸前、モザンビーク
ナショナル ジオグラフィック日本版6/16(月)19:00

自然保護の楽園を「イスラム国」が襲撃し崩壊寸前、モザンビーク
なかでも興味深いのは、ノドグロミツオシエという鳥たちと人間との関係だ。ノドグロミツオシエはハチミツを求める人々をミツバチの巣に案内し、ごほうびに人間が壊したハチの巣をもらう。
「ニアッサでは、人間と野生動物は共存しているだけでなく協力しているのです」とマリリ環境センターと近隣のムバンバ村との共同研究プロジェクトを10年以上率いてきた進化生態学者のクレア・スポティスウッド氏は言う。「ニアッサは、人間とノドグロミツオシエのユニークな協力関係がいまだに残っている数少ない場所のひとつなのです」
ニアッサ特別保護区は、この地域で最大の雇用主でもある。17の観光利権付き保全区域があり、格安のエコツーリズムから豪華なサファリやスポーツハンティングまでさまざまな事業が展開され、数億円の収入と数万人の雇用を生んでいる。
「この地域はモザンビークでも最貧地域の1つです。襲撃によって地域が不安定になることは、私たちが最も避けたいことなのです」と、ニアッサ肉食動物プロジェクトの保全責任者であるアゴスティーニョ・ジョルジェ氏は言う。IS-Mによる今回の襲撃はトウモロコシの収穫日の数日前に発生したため、今年の収穫ができなかった。
地元の自然保護活動家と当局は、長い時間をかけて、野生動物の密猟とその肉(ブッシュミート)の消費を禁止する規制を幅広く整備してきた。「今やすべてが台無しです」とベッグ氏は言う。
保護区の年間数億円の観光収入の大部分を支払っているのはトロフィーハンターだが、そのほとんどが今後の旅行をキャンセルしている。「野生動物が心配です」とジョルジェ氏は言う。「野生動物を保護できない状況が長く続けば、再び密猟やブッシュミートの消費が始まり、数はどんどん減ってゆくでしょう」
過激派組織「イスラム国モザンビーク州」(IS-M)
今回の襲撃は、2017年にモザンビーク北部に広がりはじめたISの反乱に端を発している。ISは地域全体で連携して襲撃を行い、支配地域を拡大し、戦闘員を増やし、恐怖を広めようとしてきた。
勢力がピークに達したのは2021年頃で、戦闘員は約3000人と推定されていた。その年、武装集団は初めてニアッサを襲撃し、地元の村でキリスト教の牧師の首を斬り、自然保護活動を脅かした。これに対してルワンダと南アフリカからの部隊が反撃し、グループの勢力と規模を劇的に縮小させた。
しかし2022年5月、ISはモザンビーク北東部のカーボ・デルガード州で国軍の屯所を襲撃し、新たに設置した「モザンビーク州」(IS-M)の活動だと発表した。さらに2025年4月中旬から、武装勢力は再びニアッサの東の境界付近の小さな村々を襲撃しはじめた。
4月19日には、マリリから見てルジェンダ川の対岸にあるカンバコの狩猟ロッジを襲撃した。彼らは4日間そこにとどまって食料や燃料や物資を略奪し、地元の大工2人の首を斬り、キャンプを焼き払ってから去って行った。
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