自然保護の楽園を「イスラム国」が襲撃し崩壊寸前、モザンビーク

ナショナル ジオグラフィック日本版6/16(月)19:00

自然保護の楽園を「イスラム国」が襲撃し崩壊寸前、モザンビーク

自然保護の楽園を「イスラム国」が襲撃し崩壊寸前、モザンビーク

 数日後、ベッグ氏のキャンプを守るために21人のモザンビーク軍兵士が送り込まれた。ベッグ氏はマリリから自動車やコンピューターや航空機を移動させ、略奪を防ぐために12人の密猟対策レンジャースカウトチームを残した。

 しかしこの対策は不十分だった。29日、覆面武装集団がマリリを襲い、銃撃を開始した。ベッグ氏の指示に従い、レンジャーたちは低木地帯に逃げ込んだ。武装集団はレンジャー2人と兵士6人を殺害した。

 ベッグ氏のチームメンバーの1人、マーリオ・クリストバン氏は、たまたま襲撃の日にキャンプに到着していた。氏は武装集団から3発撃たれたが、長い草が生い茂る木立の中に身を隠すことができた。

 その場しのぎの添え木で足を縛り、飲まず食わずで3日4晩隠れ続け、左足の血まみれのブーツでハイエナを追い払った。最終的にモザンビーク軍がキャンプを守るために戻ってきたときに救出されたが、5月末にモザンビークの首都マプトの病院で地元紙のインタビューに答えた氏は、「眠っていたら私は死んでいたでしょう」と語った。

今後数週間から数カ月間の支援が極めて重要

 襲撃事件から一カ月半が経過し、憂慮すべき心理的変化が起きている。ベッグ氏の現地スタッフの85%はニアッサで生まれ育った人々だが、今はその半数近くが家を離れ、保護区外に安全な住居を求めている。さらに多くの人々が後に続くと予想されている。

 ベッグ氏は、若い世代はもう保護区に戻ってこないのではないかと心配している。「彼らはニアッサの土地と深く結ばれた最高の守護者でしたが、彼らの子どもたちはそうはならないでしょう」とベッグ氏は言う。その結果、自然保護活動にも支障が出るかもしれない。武装集団が一掃されれば人々が戻ってくるかもしれないが、すぐには実現しそうにない。

「長年にわたる努力の成果が踏みにじられ、ニアッサの野生動物や人々のコミュニティーは傷つけられました」と、襲撃後に支援に駆けつけた野生生物保全ネットワークの保全プログラム担当シニアディレクターのポール・トムソン氏は言う。

「私たちは日々状況を注視していますが、不安定な状況が続く中、自然保護やコミュニティーの安全、観光に基づく生活などへの長期的な脅威は増大する一方です。今後数週間から数カ月間の地元の保護活動家の支援が極めて重要になると思います」

 ベッグ氏のチームのレンジャーのうち2人はまだ行方不明だが、今は努力を続けることにしている。現地に残っているチームは、助けを必要とするすべての人に、金銭的な支援、食料の提供、精神的な支援を行っている。「過激主義への唯一の対抗策は、自然保護活動を続けることです」とベッグ氏は言う。

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