年間200本以上の映画やドラマを鑑賞するe-NAVITAスタッフのKが「こんなかたにおすすめ」「楽しむポイント」などのプチ情報も交えながら、おすすめの映画をご紹介するこの連載。

今回は「ためになって面白い!傑作ドキュメンタリー映画」を5本厳選しました。ドキュメンタリー映画の魅力というと、知らない業界の裏側を知ることができる点や、わたし達の視野を大きく広げてくれるという点が挙げられます。社会問題を扱った映画や、普段触れることがない舞台裏の話など、ためになって面白い傑作ドキュメンタリー映画をセレクトしましたので、興味の湧いたかたはぜひチェックしてみてください。また、紹介する映画はU-NEXT、Hulu、Amazonプライムビデオ、dTV、Netflixなどの各動画配信サイト(VOD)で配信されています。


ためになって面白い!傑作ドキュメンタリー映画5選

 

1.「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」
アメリカに足りないものとは?他国のアイデアを盗み出せ!

「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」は、アメリカをいい国にするために、ヨーロッパや北アフリカの社会的な施策をアメリカに持ち帰るというドキュメンタリーです。過激なアポなし突撃取材で知られるマイケル・ムーア監督が、アメリカ人の代表として各国に赴き、 他国の教育や福祉を見聞きしていきます。そこで知る衝撃的な事実に彼は驚きを隠せずに愕然としたり、「アメリカは非ジョーシキ」と批判されます。フランスの子どもたちがアメリカの給食を見て「キモい」とドン引きしたり、アメリカに有給制度がないことを知って憧れが霧散するイタリア人の様子は爆笑必須です。その一方で日本にとっても他人事じゃないなあ、と感慨にふける場面も多数あります。主役はアメリカですが身近な社会問題を扱っているため、普遍性のある映画になっています。


ここがすごい!
「いいところだけをピックアップすれば、どんな国だって理想郷のように見える」のは当然ですが、それは監督自身の意図的な演出。ある物事がどうやってこんなに酷くなったのかについてだけではなく、「どうすればよくなるのか?」というソリューションを見つけて実行することが大事であるとインタビューで語っています。「理想的すぎ?」と感じることがあっても、「こういう社会になったらいいと思いませんか?」と訊かれれば、素直に「YES」と答えることの重要さ。「現実的に考えているようで、実は悲観的に考えているのではないか?」という疑問。こういったメッセージを発信しながら、ユーモラスに社会問題を扱う手腕は、さすがドキュメンタリー映画の巨匠だと思います。

あらすじ

度重なる戦争がいい結果をもたらさなかったと認めるアメリカ国防総省幹部は、政府の天敵である映画監督のマイケル・ムーアに相談を持ちかけた。ムーアは国防総省に代わって自らが「侵略者」となり、世界各国へ出撃することを提案。世界各国の様々な「幸せ」の形を根こそぎ略奪してアメリカに持ち帰るというミッションを背負う。

 

2.「シチズンフォー スノーデンの暴露」
元CIA職員による暴露!世界中の人が監視されている

「シチズンフォー スノーデンの暴露」は、アメリカの政府機関で働いていたエドワード・スノーデンが、政府によるアメリカ国民へのスパイ行為をリークした事件の舞台裏を覗くドキュメンタリーです。スノーデンはリークをするためにひそかに新聞記者と本作の監督と接触し、最終的に亡命します。彼はCIAとNSA(国家安全保障局)の元職員で、ある日に政府が人々のプライバシーを無視してあらゆる個人情報にアクセスできることを知り、暴露を決意しました。NSAは私たちがネットで調べものをするように個人情報を入手することができるそうです。元々はテロを企てている人を監視するためのシステムであったはずのものを、犯罪とは無縁の人々にまで範囲を広げて使用するのは人権の侵害なのではないか。そのことについて世界中で議論をしてほしい、と彼は語っています。もちろん日本も例外ではなく、彼は一時期横田基地に転勤していて、そこで「NSAの仕事」をしていたことがあります。そのことに関しては、オリバー・ストーン監督が製作した「スノーデン」で描かれていますので、併せてご覧になると、より理解が深まるかと思います。

ここがすごい!
本作のインタビューは香港のホテルで極秘裏に行われました。その際、スノーデンと取材陣は自分たちの居場所や言動をアメリカ政府に知られないよう、細心の注意を払いながらインタビューをしており、それがまるで映画のワンシーンのようで驚きの連続です。部屋の中でスマートフォンは使用禁止で、電波を遮断するという理由で電子レンジの中にしまわれます。部屋に備え付けてある電話から盗聴されてないかを調べたり、パソコンでパスワードを入力するときは盗撮を警戒してブランケットを被るなど、「ほんとうにそんな方法で監視されることがあるのか?」と思ってしまいそうになります。しかし、実際に政府機関で働いていたスノーデンがそういった対策をとっているという状況が、リアルな現実を物語っていると思わざるを得ません。日常的にインターネットを使う人なら、ためになる内容が盛りだくさんの映画としておすすめいたします。

あらすじ

ドキュメンタリー映画作家のローラ・ポイトラスに突然接触をしてきた元CIA職員のエドワード・スノーデン。彼は重大な機密情報をリークしたいと告げ、インタビューの舞台がセッティングされた。そこで語られたのはアメリカ政府による数々のスパイ行為。世界各国の要人に加え、一般国民の電話やインターネット等も傍受しているという驚くべき真実だった。

 

3.「ようこそ映画音響の世界へ」
音から紐解く映画のこだわり!映画がもっと好きになる

「ようこそ映画音響の世界へ」は、ハリウッドの映画音響にスポットをあてたドキュメンタリーです。技術的側面だけではなく、「いかにして映画に音がついたのか」「音響はどのように進化していったのか」といった部分にも触れているので、映画史を知る上でもためになる作品です。いまでは音響を売りにしている映画館もあるくらいですが、ご存じの通り映画史の初期に製作された映画は「サイレント映画」でした。初のトーキー(映像と音声を同期させた)映画として「ジャズシンガー」が1927年に大ヒットしてから、徐々に音を重要視するようになり、役者の息遣いや、空間に響き渡る歌声、BGM、効果音などにこだわりが生まれていきます。他にも、スピーカーがモノラルからステレオに進化したことや、録音機の発展により野外での撮影が可能になったことなど、様々な点が複合的に絡み合って音響は進化してきました。これらのことが「スターウォーズ」や「マトリックス」、「トイストーリー」といった有名な映画を引用しながら説明されていくので、わかりやすくて面白い構成になっています。

ここがすごい!
SFやファンタジーの作品ですと、誰も訊いたことがない未知の音が必要になります。「スター・ウォーズ」のライトセーバーの音や、「ジュラシックパーク」の恐竜の鳴き声などが顕著な例で、類まれな想像力がなければ創り出せない代物です。「そんな音をどうやって創り出すことができたのか」について、実際に製作した音響技術者や監督たちへのインタビューによって、インスピレーションの源に触れることができます。また、出来上がった音を立体的にスピーカーから出力することで、空間(遠近感)を感じられるようにするこだわりの演出など、映画は映画館で観るのがベストであることを再認識させられる語りが盛りだくさんです。映画の楽しみ方の幅が広がるドキュメンタリーですので、映画好きのかたはぜひご覧ください。

あらすじ

1927年に初のトーキー映画「ジャズシンガー」が誕生。それ以降、映画音響は常に進化を続けている。「キング・コング」「スター・ウォーズ」「ROMA」など、新旧名作群の映像を使用しながら映画音響の世界を紹介。ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグ、デビッド・リンチ、クリストファー・ノーランら監督陣、「スター・ウォーズ」のベン・バート、「地獄の黙示録」のウォルター・マーチ、「ジュラシック・パーク」のゲイリー・ライドストロームといった映画音響界のレジェンドたちのインタビューを盛り込み、映画における「音」の効果と重要性に迫る。

 

4.「ホドロフスキーのDUNE」
映画ファン必見!製作中止になった企画が映画史を変えた!?

「ホドロフスキーのDUNE」は、実現に至らず製作中止となった幻のSF大作「DUNE」の驚きの企画内容や、中止に追い込まれていった過程を明らかにしていくドキュメンタリーです。「DUNE」は同タイトルのSF小説を原作としており、ドラッグをキーアイテムとした物語になっています。当時のアメリカ(1960〜1970年代)はドラッグ・カルチャーの真っ只中で、「DUNE」は神聖視されるほどの人気を博しました。そして「DUNE」の映画化にあたり、監督を務めることになったのはカルト映画監督アレハンドロ・ホドロフスキー。彼は、同時期に公開した映画「エル・トポ」がジョン・レノンといった有名人をも熱狂させるほどの大ヒットとなり、大きな注目を集めていました。そんな監督が大人気の小説を映画化するのですから、とても魅力的な企画であるはずです。しかし、最終的に製作は中止になってしまいます。「どうして?」と疑問がわいてきますが、企画内容を見ていくと「これは製作不可能」と納得できる様々な理由が明らかになっていきます。

ここがすごい!
本作の見どころは、「DUNE」の企画書が後世の作品に与えた影響と、ホドロフスキーの強烈な個性です。企画書は絵コンテ、キャラクター/宇宙船のデザインといった膨大な資料がまとめられており、どれも非凡な才能を持っているスタッフたちが手がけたものでした。「DUNE」の製作中止後、唯一残された宝石箱のようなこの企画書が一部の映画関係者たちの目に止まり、後世の映画に様々な影響を与えたそうです。その映画とは「スター・ウォーズ」「インディ・ジョーンズ」「マトリックス」など、そうそうたるタイトルばかり。ホドロフスキーはそれだけ優秀なスタッフを世界中から集めてきました。そんなことができたのはホドロフスキーのカリスマ性がなせるわざ。彼は生粋の芸術家で、人並外れたインスピレーションや、まったく臆することなく「世界を変える」と公言できる豪胆さなど、芸術家らしい魅力の持ち主です。一生懸命に取り組んだ企画が頓挫しても、へこたれずにまっすぐ進んでいくエネルギッシュなその姿は、彼に魅了されたスタッフたちの気持ちがわかるような気がします。映画ファンはためになる映画ネタが楽しめ、ものづくりに携わっている人は元気が貰えるドキュメンタリーです。

あらすじ

カルト的人気を誇る「エル・トポ」「ホーリー・マウンテン」の監督で知られるアレハンドロ・ホドロフスキーが映画化に挑んだものの、実現しなかった未完の大作「DUNE」。フランク・ハーバートの小説「デューン 砂の惑星」を原作に、サルバドール・ダリやミック・ジャガー、オーソン・ウェルズ、メビウス、H・R・ギーガー、ピンク・フロイドら豪華スタッフ&キャストをそろえるも撮影前に頓挫してしまう。その経緯をホドロフスキー自身やプロデューサー、関係者へのインタビュー、膨大なデザイン画や資料などから明らかにしていく。

 

5.「ファッションが教えてくれること」
「プラダを着た悪魔」のモデルと言われた「VOGUE」の女帝に迫る!

「ファッションが教えてくれること」は、アメリカ版「VOGUE」の敏腕編集長アナ・ウィンターの実像に迫ったドキュメンタリーです。彼女は大ヒット作「プラダを着た悪魔」のモデルとも言われており、ファッション業界のリーダー的存在。セレブを表紙に使う手法は、彼女が早くから取り入れたもので、「セレブ文化」が世界的な流行になることを察知していました。本作はそんな彼女を主軸に、特大号である9月号の製作風景を5か月に渡っておさめています。アメリカのファッション業界の新年とも言われる9月号は、各雑誌が一番力と金を注ぐ月で、ページ数も普段より増えます。その中でも「VOGUE」は群を抜いていて、電話帳のような厚さを誇っています。当然、作業量も膨大なものになり、関係者たちは分刻みのスケジュールで忙しなく働くことに。トレンド傾向を調査し、特集するべきテーマを決め、撮影準備に入っていくなど、製作の裏ではどのようなことが行われているのかを覗くことができます。

ここがすごい!
アナはバリバリ働くキャリアウーマンの代表的な人で、一切妥協を許さない鉄の心の持ち主です。努力して最高の物を用意しないとアナは納得しないため、「VOGUE」を去っていく人も多くいます。そのワンマンぶりは「VOGUEはアナの雑誌」と評されるほどですが、彼女の実績は確かなもので、撮影当時(2007年)の「VOGUE」はアメリカ女性の10人に1人、約1300万人が読む雑誌となっていました。妥協の無さだけではなく、行動力と素早い決断力、トレンドの動向を見極める類い稀なセンスなど、働く上で大事なことを網羅的に体現しているため、バリバリ働きたい人にとってはお手本になるような存在かと思います。もう一点注目したいのが周囲のスタッフたち。徹底的にこだわるアナは締め切り直前まで修正を次々と指示していきます。それに付き合うスタッフたちの心境を想像すると同情したくなりますが、彼らは「できない」とは言いません。多少の愚痴はこぼしながらも、アナのセンスを信じて最後までベストを尽くそうとする姿には、信頼関係の深さを感じられて感動的です。

あらすじ

2007年、アメリカ版「VOGUE」9月号の締切り5か月前。秋のファッション特大号は一年で最も重要で忙しく、編集長のアナ・ウィンターは多忙な毎日を送っている。締め切りが刻一刻と迫ってくるなかでも妥協を許さないアナは、スタッフたちが用意した服やモデル、大金を使って撮影した写真に納得ができず、次々とボツを出していく。 意見が衝突し、対立することもしばしばあった。それでもファッションの最先端を進んでいくため、アナとスタッフたちは真摯に仕事に取り組んでいく。

 

まとめ

以上、「ためになって面白い!傑作ドキュメンタリー映画5選!」でした。「事実は小説よりも奇なり」という言葉の通り、フィクション作品にも劣らないエンターテインメント性を備えたドキュメンタリー映画は多くあります。同じテーマでも監督の個性によっても作品の雰囲気が変わり、見ごたえが変わるので、ぜひ色々な作品に触れてみてください。