MBTIテストの分類イメージ。
MBTIテストの分類イメージ。 / Credit:canva,いらすとや,ナゾロジー編集部

こんな性格診断の画像を見たことはないでしょうか?

これはMBTIと呼ばれていて、思考と行動のパターンを4つの次元に分け、16のタイプに分類する性格診断です。

ネットで「MBTI」と検索すると、一番上に出てくる「16 Personalities.com」は無料で診断でき、自分の性格タイプをかなり詳しく知ることができるためSNSを中心にかなり人気が高まっています。

しかしこの「16 Personalities」の性格診断テストは、実は正式なMBTI®ではないのです。

日本MBTI協会は、注意喚起をするため「16 Personalities性格診断テストはMTBI®とは似て非なるものである」という趣旨の声明文を公開しています。

ただ心理学の領域では、正式なMBTI®も性格検査としての信頼性や妥当性、ベースとなった理論に関しては疑問が呈されているようです。

本記事では無料で受けることができる性格診断テストを「MBTI(あるいは16 Personalities)」、その元ネタである正式な性格診断を「MBTI®」と区別し、その登場した歴史と、性格診断としての科学的根拠があるのかについて解説していきます。

目次

  • 無料で診断できる「16 Personalities」は正式なMBTI®とは異なる
  • 実は本家MBTI®も科学的根拠が乏しい

無料で診断できる「16 Personalities」は正式なMBTI®とは異なる

4文字のアルファベットと共に「管理者」とか「論理学者」などのタイプに分けて、性格診断してくれるサイトを利用したことはないでしょうか?

これはMBTIと呼ばれる性格診断テストで、質問項目が多く、詳細に正確のタイプや分析結果を表示してくれるため、X(旧Twitter)などを中心に拡散され、診断結果を共有して多くの人が楽しんでいます。

これについては、分析結果がかなり細かいので「なんだか信頼できそう」と感じている人もいるでしょうし、逆に「この結果は本当に信頼できるの?」と疑っている人もいるでしょう。

そんな多くの人が無料で受けているMBTIの診断ですが、実は正式なMBTI®ではありません。

正式なMBTI®は有料で、診断を受けた後にMBTI認定ユーザーによるカウンセリングを受けるなど、無料版の「16 Personalities」の性格診断テストとは大きく異なります。

本家であるMBTI®(Myers-Briggs Type Indicator)は、米国の作家キャサリン・ブリックス(Catherine Briggs)氏とその娘であるイザベル・マーヤーズ(Isabel Myers)氏により開発されました。

キャサリンとイザベルは心理学者ユングの認知機能を分類する理論に魅力を感じて研究を行い、一般には難しすぎるこの内容をわかりやすく整理してMBTI®︎性格タイプ分類テストを開発しました。

ただユングなどの研究をしていた二人ですが、正規の研究者というわけではなく大抵は作家として紹介されています。

MBTI®︎では、個人の性格を、興味関心の方向、物事の見方、判断の仕方、外界との接し方の4指標で捉え、それらの組み合わせから16タイプに分類します。

16タイプ分類の基準になる4つの指標。
16タイプ分類の基準になる4つの指標。 / Credit: Canva

米国では、自己分析の手法として一定の理解が得られており、大手企業の研修や、学生時代のキャリア形成支援の一環としてMBTI®が用いられていることもあるようです。

日本で流行しているのはこの本家MBTI®ではなく、これを元ネタとして作られた16 Personalities性格診断テストのMBTIです。

最初に述べた通りこのMBTIについて、日本MBTI協会は、「16 Personalities性格診断テストはMTBI®とは似て非なるものである」と似ているだけで別物であると述べています。

ではMBTIはどういう理由で日本で流行りだしたのでしょうか?

日本でMBTIの関心が高まったきっかけは、韓国アイドルのBTSだったとされています。

YouTubeにて、2022年5月6日にBTSメンバーそれぞれがMBTI診断をする動画が投稿され、広く日本で知られることになったのです。

Google TrendsでMBTIの検索ボリュームを見ても、2022年から徐々に検索数が右肩上がりに増えてきています。

そのためか、いまやinstagramやTikTok、YouTubeでMBTIに関するコンテンツが増えています。

特に「性格が悪いMBTIランキング」や「相性が良いMBTIの組み合わせ」など、人をタイプに当てはめ、優劣の順序を決めるようなコンテンツが目立ちます

本来のMBTI®の目的は、MBTI認定ユーザーの支援を借りながら、自分自身の行動・認知への考えを深め、自分と異なる他者への理解を促すことであるため、MBTIの方は本家の開発者の意図とはだいぶズレた方向で盛り上がっていると言えるでしょう。

もちろん自分自身を見つめ直したり、自身への理解を深めるためにMBTIの性格診断を楽しんでいる人達もいるでしょうが、いずれにせよこの診断テストを利用した人が気になるのは、この性格診断って本当に合ってるの? という部分でしょう。

MBTIにしろ本家のMBTI®にしろ、この細かな性格診断の結果は、本当に科学的根拠があるものとして信じてよいのでしょうか?

実は本家MBTI®も科学的根拠が乏しい

MBTI®は、米国の作家ブリックスとマイヤーズ、ユング派の心理学により長年に渡って性格検査の改良が進められ、検査としての精度に関して検証が繰り返されてきました。

そのため米国では一定の支持を得ている性格検査ではありますが、その一方でこの診断については疑問を投げかけられているのも事実です。

ではこの診断のどこに問題があるのでしょうか? ひとつずつ見ていきましょう。

性格を検査で捉えきれていない可能性がある

まず他の性格検査との相関が小さく、妥当性が低い点です。

心理検査における妥当性とは、その検査が測定を試みているもの(ここでは性格)を的確に測定できているかを意味します。

妥当性が担保されているかは、もう既に確立されている検査との相関を見ることなどで評価されます。

ノルウェー経営大学のエイドリアン・ファーナム(Adrian Furnham)氏が行なった研究では、MBTI®が心理学研究でよく使用される性格検査NEO-PI-Rとの相関が小さく、妥当性に欠けることを報告しています。

つまり、MBTI®は性格を検査で捉えきれていないという指摘があるのです。

期間を空けて再度診断を受けると結果が変わってしまう

次に性格検査としての信頼性が低い点です。

心理検査における信頼性とは、期間を空けて検査しても前回の検査結果と同じになる、という結果の安定性を指します。

米国オクラハマ大学のケン・ランドール(Ken Randall)氏らが行なったメタ分析の研究では、興味・関心の方向、物事の見方、外界との接し方の3指標に関しての信頼性は十分だったものの、判断の仕方に関しては信頼性が低いとの結果を報告しています。

MBTI®の診断結果が昨日と今日で違うとなると、会社でのポジションや学業成績の予測に利用したとしても、検査時と現在では診断されたタイプが変わってしまっている可能性があります。

当然そうなると、公の場で使うのが難しくなってきます。

MBTI診断を受けて毎回結果が変わってしまう人は、この検査がもともと内包する問題によって、結果が変わっている可能性があります。

おそらく、時間を開けて診断したら結果が変わってしまったという人は、判断の仕方に関するタイプ分けの思考型(T)と感情型(F)が入れ替わっていたのではないでしょうか?

客観的なデータに基づいていないユングの理論がベースになっている

3つ目は「夢分析」などで有名なカール・ユング(Carl Jung)の理論がベースになっている点です。

キャサリン・ブリックス氏とその娘であるイザベル・マーヤーズ氏は、ユングが提唱した性格のタイプ分けを試みた理論に、判断型か、知覚型かという「外界との接し方」の4つ目の指標を加え、MBTI®を作成しました。

しかしユングによる性格の分類は、ユング自身の観察や経験に基づいて作られており、客観的なデータに基づいたものではないとされています。

そのため、性格検査として利用することには問題が指摘されているのです。

二項対立型の指標で、その中間層を考慮していない

最後に、この診断では思考か直観かのような二項対立型の指標を用いて、タイプを決めているため、その中間となる部分が考慮されていないという問題があります。

二項対立型の指標に基づく診断は、外向的でも内向的でもない人や、考え込むわけでもなく感情的でもない人などを、どちらか一方のタイプに無理やり当てはめる必要性が出てきてしまいます。

現在の心理学では、性格とは特定のタイプに当てはめるものではなく、連続的なグラデーションによって表現されるべきだという意見が優勢です。

そのため、現在はタイプに分類する類型論に基づく性格検査ではなく、誠実性や協調性などのいくつか性格特性を設け、それぞれの程度で性格を評価する特性論に基づく性格検査が主流になっています。

MBTIは仲間内での話のネタとして楽しむのが一番良いかもしれない
MBTIは仲間内での話のネタとして楽しむのが一番良いかもしれない / Credit: Canva

このようにMBTI®は、性格検査としての信頼性や妥当性をはじめ、ベースになった理論、性格を分類する仕組みに問題が指摘されています。

その点を考慮すると、MBTI®を元ネタにした考えられるMBTIの診断結果も、あまりあてにならないと考えた方がいいでしょう。

血液型診断や星座占いなどと同じくひとつのエンタメとして楽しむのがいいのかもしれません。

「言われなくても、そんな楽しみ方しかしてないよ」という人の方が多いかもしれませんが、本来のこの検査の目的や経緯を知ることは、安心してサービスを楽しむために大切なことでしょう。

参考文献

Why using Myers-Briggs at work Might Be a Terrible Idea (MBTI)
https://www.psypost.org/using-myers-briggs-work-might-terrible-idea-mbti/

Myers-Briggs
https://www.psychologytoday.com/us/basics/myers-briggs

元論文

Evaluating the validity of Myers-Briggs Type Indicator theory: A teaching tool and window into intuitive psychology
https://doi.org/10.1111/spc3.12434

The Big Five Facets and the MBTI: The Relationship between the 30 NEO-PI(R) Facets and the Four Myers-Briggs Type Indicator (MBTI) Scores
https://doi.org/10.4236/psych.2022.1310095

Validity and Reliability of the Myers-Briggs Personality Type Indicator: A Systematic Review and Meta-analysis
https://www.scirp.org/reference/referencespapers?referenceid=3245993

ライター

AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしていました。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。

編集者

ナゾロジー 編集部