【住吉 光】長崎の暮らし経済ウイークリーオピニオン。
今週は“長崎の次世代につながる取り組み”ということで、Pintで毎月放送している『長崎NEXTスタイル』とのコラボ企画になります。

「地域を担う“人財”どう育てる「長崎サミット」注目点は──

【平家 達史 NBC論説委員 】長崎サミットとは、長崎の産学官のトップが集う会議です。

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2010年から開催され、今回が25回目ですが、その内容について詳しく見ていきます。

地域課題解決のために経済4団体と自治体トップ、長崎大学学長が連携

【住】長崎大学の移転に関するニュースも1日のサミットで発表されたとのことですが、こうした“トップの会合”は他の地域でも行われているんでしょうか?
 

NBC

【平】いえ、長崎サミットのように団体のトップが定期的に集まる会議は 全国的に見ても珍しいと思います。
そもそも長崎サミットは“人口減少”と“産業の衰退”など『長崎が直面する課題の解決』に“産学官で連携して取り組もう”としてスタートした会議です。

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メンバーは長崎商工会議所長崎経済同友会長崎県経営者協会長崎青年会議所の経済4団体の代表と、知事長崎市長、そして長崎大学学長の7人で構成されていて、これまで年2回ぐらいのペースで開催されています。

【住】第1回の開催から今年で13年目になるということですが、現在はどんなテーマについて議論されているのでしょうか。

【平】おもなテーマはこちらの4つです──
 ・行きたくなる、住みたくなるまちづくり
 ・地域の産業を担う人材育成・確保
 ・長崎を知っていただくブランディング
 ・長崎をさらに発展させる産業振興

これらを各組織が横断的に活動する分野と位置付けて、産学官が連携して取り組む方向性を提示したり、確認したりする会合となっています。

人材の確保・育成には “働く基盤見直し” と “郷土愛”

【住】どれもいまの長崎にとって避けて通れない課題と感じますが、今回はどのテーマが取り上げられたのでしょうか?
 

NBC

【平】今日の会議は、この4つのテーマのうち「地域の産業を担う人材育成・確保」について議論されました。

私も傍聴したのですが『人材育成・確保』にとって重要なキーワードは──
 

NBC

・働くOS(基盤)の見直し
・シビックプライド(郷土愛)の醸成
だと感じました。

最初の『働くOS(基盤)の見直し』について、私が気になった発言をまとめました。

田上 富久 長崎市長:
若い世代の皆さんの中には“自分というアプリ”がサクサク動ける、作動できるOS(基盤)をもつ企業だったり、まちを求めている。
まちも、企業も、社会全体も、今の時代は、全てが“OSを書き換える時期”にきているのではないか。

長崎経済同友会 鈴木 茂之 副代表幹事:
いわゆる就社意識──この会社に就職するんだという意識は大分薄れてですね、やはり仕事を選ぶようになっているんじゃないかと。若い人たちがどういったことを考えて仕事を選んでいるのかとか、なんで長崎に残ってくれないのか、その辺は実際の意見を聞かないといけない

長崎県経営者協会 石瀬 史朗 会長:
経営者の方々、それから働く方々との間で、“こうしたいんだ”っていう夢なり、目標がなかなか議論できていない、共有できていない。

長崎大学 河野 茂学長:
大学自体がやっぱり若年層の人口の減少ということで本当に直撃を受けております。やっぱり大学が生き残ろうとみんな思ってるわけです。
そのためには得意なもの魅力のあるものを作らないといけない。

【平】今、みなさんの発言にあったとおり“人財”を確保するには『若い人の夢』や『やりたい事』をしっかりと聞いて、それを自らの事業などにどう反映させるかということが重要だと感じました。

また、今、目の前にある“人手不足”に対して、短期的に企業が考えるべきことについて、長崎商工会議所の森会頭はこのように発言されていました。

長崎商工会議所 森 拓二郎 会頭:
この“慢性的な人手不足”という状況は、ある意味、自社の事業のありようを見直す── いわば変革を促すための機会
業務を棚卸して『不要な業務を廃止』できないか、『人財のポートフォリオ(資産構成)を再構築』する必要があるのではないか。

【住】次に、平家さんがあげられた2つめのキーワードである『シビックプライド(郷土愛)の醸成』については?

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【平】“長崎からの若い人の流出”を減らしたり、一度、“長崎を離れた人に長崎に戻ってもらう”ためには、『シビックプライド = 郷土愛』が必要だということです。

これについては、まずは教育の場で取り上げることが重要ですが、教育現場だけで醸成される訳ではなく「企業を含め、まち全体で取り組むべき」と大石知事は発言されていました。

大石 賢吾 長崎県知事:
県内の企業が何をしているのか知らないとか、県内にもチャンスがあるのに何となく外に出ていってしまっている。そういったことは非常に残念なこと。
企業の中でもいろんな努力をしていただいたりとか、官学でしっかり連携しながらやるとか、いろんなところで魅力を作っていく、それをしっかり発信していくことが大切。

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【平】また、進行役である日本銀行長崎支店の鴛海支店長は「人が減るということは、“人を大切にする社会”になるということである」とまとめられていましたが、まさにその通りだと思います。

【住】参加者のみなさんが長崎の課題に向き合って、各々立場から真剣に議論されているように感じました。

【平】今日の長崎サミットでは『先行きどのように取り組むべきか』という発言が多かったと思います。

また、出席者からも「人口減少対策は、行政の責任と考えられることは多いが、“人”の問題は産学官の各々の問題という認識ができた」
「長崎サミットで産学官がつながることは有意義である」という感想が聞かれました。

次回のサミットでは今回、議論した内容について、具体的な施策や産学官での役割分担を議論していきたいということであり、議論がさらに深まり、実効性のある取り組みに繋がっていくことを期待します。