【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

さんが焼き弁当

東京から身近なお出かけ先で、夏を感じられるエリアといえば、やっぱり千葉・房総の海。青い海に白い砂……昭和の頃は、夏になると数多くの臨時列車も運行されてきました。そんな東京から房総への特急「さざなみ」「わかしお」が、この夏で運行開始から50年の節目を迎えました。なかでも、外房線を走る「わかしお」は、いまも一定の本数が運行され、終着の安房鴨川駅では、郷土料理が詰まった名物駅弁も販売されています。

255系電車・特急「わかしお」、外房線・安房天津〜安房鴨川間

「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第36弾・南総軒編(第1回/全5回)

太平洋に沿ってラストスパートをかける外房線の特急「わかしお」号。「わかしお」号は、昭和47(1972)年7月15日、総武本線の東京地下駅開業に合わせて誕生し、今年(2022年)で運行開始50年の節目を迎えました。現在は、間もなく30年戦士の“房総ビューエクスプレス”255系電車と、平成16(2004)年デビューのE257系電車によって、1日12往復が運行されており、東京〜安房鴨川間(京葉線経由)は、約2時間で結ばれています。

安房鴨川駅

「わかしお」が発着する安房鴨川駅は、大正14(1925)年の開業。昭和4(1929)年に、房総半島を一周する鉄道が開業した後、房総西線・房総東線の“終着駅”となりました。いまから50年前の電化の際、房総西線が内房線に、房総東線が外房線に改称されて、特急列車が走り始め、現在に至ります。これに合わせ、安房鴨川駅は駅弁販売駅となり、いまは駅構内のNEWDAYSで駅弁が販売されています(土休日限定)。

さんが焼き弁当

安房鴨川駅弁を手掛けている「南総軒」を代表する駅弁が「さんが焼き弁当」(1080円)。さんが焼きとは、地魚をたたき味噌と薬味と混ぜ合わせた房総の郷土料理「なめろう」を焼き上げたもの。千葉・鴨川のご当地丼“おらが丼”の取り組みの1つとして2000年代に駅弁化されました。駅弁膝栗毛の恒例シリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第36弾は、南総軒で「さんが焼き弁当」の製造に密着いたしました。

南総軒の「なめろう」作り

●ワラサとサバで“コクのある味”を出す、南総軒の「さんが焼き」

なめろうには、一般的にアジが多く使われますが、南総軒では味わいをよくするため、ワラサ(ブリの子供)とサバを使用しています。鴨川の港に揚がった魚を仕入れると、スグにさばいて、味噌で「たたき」にして真空で冷凍保存、需要に応じて順次出していくのだそう。まずは、たたきに葱、玉ねぎ、生姜、大葉をみじん切りにしたものを手作業で混ぜ合わせ「なめろう」を作っていきます。

南総軒の「さんが焼き」作り

なめろうを1つ1つ、ちょうどハンバーグのように程よく小判型にしたら、大葉を載せて、油をしいたフライパンへ。「さんが焼き」は房総の家庭料理が起源ということで一般家庭と同じようにフライパンで焼き上げていくといいます。最初はふたをして蒸し焼きに。色が変わってきたら、ふたを外して、返しながら焦げ目を付け、焼き上げていきます。調理場は、魚と薬味のいい香りでいっぱいになってきました。

南総軒の「さんが焼き」作り

メインのさんが焼きが焼きあがると、今度は細かくしたなめろうを、ホロホロした食感に焼き上げて、白いご飯の上に敷く、さんが焼きのそぼろを作っていきます。通常、安房鴨川駅のNEWDAYSに並ぶ「さんが焼き弁当」は、1日10個程度で全て手作り。このあと、長狭米の白いご飯の上に錦糸玉子と共にそぼろが敷かれ、真ん中に大きな「さんが焼き」が鎮座したら、「さんが焼き弁当」の完成です!

さんが焼き弁当

【おしながき】
・白飯(長狭米使用)
・さんが焼き 大葉
・錦糸玉子
・ひじき煮
・人参煮
・ししとう
・セロリのピリ辛炒め
・煮豆
・しば漬け

さんが焼きおにぎりサンドの製造

●片手で食べられる郷土料理と評判! 「さんが焼きおにぎりサンド」

「じつは今、さんが焼き弁当よりすごく売れているモノがあるんです!」とご案内いただくと、製造ライン一面に広がっていたのは焼海苔! その海苔の上に、炊き上がった白いご飯が盛られていきます。さらに千切りキャベツを敷いてマヨネーズをサッとかけて、真ん中には、小ぶりな「さんが焼き」が載せられていきました。じつは南総軒では、「さんが焼き弁当」の姉妹品として、「さんが焼きおにぎりサンド」(280円)も製造しているんです。

さんが焼きおにぎりサンドの製造

おしまいに、海苔をくるりと巻いたら「さんが焼きおにぎりサンド」の完成となります。南総軒によると、さんが焼きを“おにぎりサンド”にしようと思ったきっかけは、社長さんが新作駅弁開発のため、取材中で立ち寄ったファーストフードだったそう。今年50周年を迎えたこのファーストフードが、長年手掛けている“ライスバーガー”が目に止まり、これは「さんが焼き」でもできるんじゃないかと思いついたといいます。

さんが焼きおにぎりサンド

【おしながき】
・白飯(長狭米使用) 海苔
・さんが焼き
・キャベツの千切り
・マヨネーズ

さんが焼きおにぎりサンド

普通のおにぎりよりはるかに大きな「さんが焼きおにぎりサンド」に思いっきり食らいつくと、大葉の香りと一緒に魚の旨味がジュワッとあふれて、マヨネーズの酸味・まろみと一緒に心地よい味のハーモニーを作り出します。安房鴨川駅の売店を何度か観察してみると、このおにぎりサンドより、お得なおにぎりは数多くあるのに、一番値段が張る「さんが焼きおにぎりサンド」から、お客様が手に取っていく様子が伺え、その人気が感じられました。

E257系電車・特急「わかしお」、外房線・浪花〜御宿間

南総軒の「さんが焼きおにぎりサンド」は、安房鴨川駅のNEWDAYSのほか、圏央道・木更津東インターに併設の「道の駅木更津 うまくたの里」でも、週末に販売されています。そんな高速道路を走る高速バスやクルマ社会との厳しい競争のなかで、奮闘する千葉・房総半島の鉄道。その歴史を紐解きながら、駅弁屋さんの厨房ですよ・南総軒編では、次回から安房鴨川駅弁と共に、その魅力に迫ってまいります。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/