元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が11月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。経済産業省が示した原発活用行動計画案について解説した。

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原発活用行動計画案、さまざまな意見を踏まえて取りまとめへ

経済産業省が廃炉となる原発の建て替えを念頭に、次世代型の原子炉の開発を進めるなどとした行動計画の案を示したことについて、西村経済産業大臣は、さまざまな立場の専門家の意見も踏まえ、議論を取りまとめていく考えを示した。

飯田)経産省の審議会で11月28日に示された案ですが、「最長60年」と定められている原発の運転期間について、停止期間を除外することや、次世代型の原子炉の開発を進めることが盛り込まれたようです。原発をどうするのかは、ここ10年〜20年ほど問題になっていますが、どうご覧になりますか?

現状では原発はある程度活用せざるを得ない

松井)原発はある程度活用せざるを得ないと思います。行動計画案を読むと、もっともなことだと思います。東日本大震災があり、やや日本社会全体が原発に対するアンチに振れすぎて、菅直人さんや小泉純一郎さんなどからは、禁原発に近いような議論が出た。あるいはFIT制度という、太陽光発電の固定価格買取制度ができて、太陽光パネルが設置されたのは、それはそれで効果はあったと思います。

新エネ絡みの技術開発を応援しきれていない日本

松井)他方で太陽光パネルの生産、また蓄電器の生産技術など、新エネ絡みの技術開発が日本に根付いていればよかったのですが、しっかり応援できていないですよね。

飯田)新エネ絡みの技術開発に対して。

松井)新エネ・代エネも進めるべきなのだけれど、やはり今年(2022年)の1月や2月に経験したように、天気が悪ければ発電できないわけです。冬場に荒天が続くと、ブラックアウトの危険がある。およそ先進国では考えられないような状態になったことも事実です。

どの分野でイノベーションを進めるのかを考える必要がある 〜新しい技術の芽を育てることに萎縮している

松井)やはり、ベースロード電源としての原子力は、いまの日本社会では必要です。「どういう安全性が必要なのか」ということをきちんとチェックした上で、少なくともここ20〜30年は使っていくことになると思います。

飯田)20〜30年は。

松井)同時に、カーボンニュートラルを考えると、原発は引き続き20〜30年を越えて大切だというのが経済産業省の認識です。だからこそ、次世代型の原子炉の開発が入っているのでしょう。どの分野でイノベーションを進めるのかということを、よく考える必要があると思います。

飯田)どの分野でイノベーションを進めるのか。

体力をつけることに投資するべき 〜官民含めた思い切った技術開発が必要

松井)この先を考えたとき、新エネの新しい技術の芽をどう育てていくのかという発想に関して、日本全体が萎縮していると思います。

飯田)萎縮している。

松井)電力料金を下げるための補助金も、当面は悪くないと思います。それから物価高対策も大事だけれど、将来的に日本経済が成長していくような分野に対し、きちんと資金を投下するべきです。

飯田)日本経済が成長する分野に。

松井)その場その場でしんどいことはわかりますし、ある程度は激変緩和措置も必要だけれど、官民含めてやれるような思い切った技術開発にお金を使わないと、先が見えません。対症療法ばかりして、体力をつけることに投資していないのが決定的な問題だと思います。

飯田)体力をつけることに投資しないことが。

松井)それはもしかすると、次世代型の原子炉開発で、より安全でより効率性の高い、カーボンニュートラルに資するような開発かも知れません。そういう意味では新エネについても、「新エネは全部ダメ」ということではなく、バランスを取りながら、エネルギーミックスのなかで将来につなげるものに思い切って投資をして欲しいと思います。

韓国政府が助成して復活したサムスン

飯田)先日、エネルギーの専門誌の方にインタビューしたのですが、実証実験などにはいろいろお金をつけてくれるので、ある程度の技術が育った。しかし、「これから市場か」というところになると、「あとは皆さんでどうぞ。民間で頑張ってください」になってしまう。そうすると民間の厳しい競争にさらされて、結局、「新しい技術がものにならない」ということを20年〜30年繰り返している、という話をされていました。産業政策的なものが忌避された時代もありましたね。

松井)例えば日本の東芝も、世界最先端の企業だったのにダメになってしまった。もちろん、それだけが理由ではないですよ。いろいろな問題があります。

飯田)経営の問題もあったかも知れないけれど。

松井)サムスンのように一時死に絶えていたのを、韓国の場合は政府が助成したのです。政府の助成がすべてワークするわけではありませんが、例えば昔で言うと、超LSI技術研究組合をつくって、日本の半導体を一気に国際レベルまで引き上げたという成功事例もあるのです。

国家の命運を握るエネルギー産業

松井)電気自動車と言っても、日本はまだまだハイブリッドなのです。完全に1世代遅れてしまっている。世界に冠たるトヨタが20年後〜30年後、世界に冠たるトヨタであり続けられるかどうか。トヨタも必死になってリカバリーしていますが、トヨタが全部のものを電気自動車に置き換えるにはまだ時間がかかるので、明らかに遅れているのです。

飯田)電気自動車ということでは。

松井)産業政策は一時、否定されていたけれど、いまの時代にやるべきところはやらなければいけないと思います。その意味では、エネルギーは国家の命運を握るような産業です。エネルギー産業だけではなく、エネルギーを使う製造業なども含め、産業の視点から見ても必要です。原発をこの時期に復活させるだけでなく、大事な研究開発を怠らないで欲しいと思います。