地政学・戦略学者の奥山真司が11月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。海外で臓器移植をあっせんし実刑判決が言い渡されたNPO代表について解説した。

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海外での臓器移植あっせん、NPO代表に実刑判決

海外での臓器移植を希望する患者に国の許可なく臓器提供をあっせんしたとして、NPO法人の理事に対し東京地方裁判所は11月28日、無罪の主張を退けて懲役8ヵ月の実刑判決を言い渡した。海外での臓器移植を無許可であっせんした罪について裁判所が判断を示したのは初めて。

飯田)NPO法人「難病患者支援の会」理事の菊池仁達被告(63)は2022年、海外での臓器移植を希望する患者2人に対し、ベラルーシで腎臓の移植手術を受けさせるなど、国の許可を受けずに移植をあっせんしたとして、臓器移植法違反の罪に問われました。裁判では無罪を主張していましたが、懲役8ヵ月の実刑判決が出ました。菊池理事側は判決を不服として控訴しており、今後は高裁での審理となります。

奥山)「判決も指摘しているように、海外での臓器移植を希望する患者が正規のルートで安全・適正に手術を受けられるような仕組みを整備する必要がある」と専門家が指摘しており、その通りだと思います。医療と生命倫理の問題、それと法整備ですね。この辺りはテクノロジーが進めば進むほど問題になってきて、国としての対応を迫られ、社会問題になると思います。

同性カップルの体外受精について「無法状態」の日本

奥山)イギリスの雑誌『エコノミスト』の最新号に、日本での体外受精に関する記事が掲載されました。女性同士のカップルの方々が、子どもが欲しいので「精子バンクを使いたい」と思っても、日本はまだ同性婚は違法ではないですか。

飯田)法律婚にはなっていません。

奥山)体外受精で子どもを産みたいと考えても、日本には精子バンクが少ないし、法整備もできていないので「無法状態である」と、記事では指摘されています。

精子の提供者をSNSで募集

奥山)精子の提供者をSNSで探すような状況になっているそうで、危険ではないかと思います。

飯田)「提供者のプロフィールがどこまで信頼できるか」というところですか?

奥山)記事に出てくる女性カップルの方は、SNSで募集して、東京のネットカフェで会った男性から精子の提供を受けたようです。幸い健康な赤ちゃんが生まれたそうなのですが、このようなことは、これから問題になっていくと思います。

特定のドナーに人気が集中し、全米中に腹違いの兄弟が存在

奥山)海外では精子バンクが大問題になっています。アメリカでは、精子バンクは整備されているのですが、特定の提供者が人気になるのです。

飯田)プロフィール的に魅力がある人など、特定のドナーの精子を欲しがる人が多くなる。

奥山)『ワシントン・ポスト』の2018年の記事によると、あるドイツ系の白人男性が大人気だったそうです。学歴もある方で、何と40人の子どもがいると言われています。写真家の方で、「勇気のある軍人の家系」なのだそうです。名前は「ドナー2757」という匿名で……。

飯田)実名では出ていないですものね。

奥山)ただ、この方があまりにも人気なので、腹違いの兄弟が全米中にいるらしいのです。その兄弟たちが、知らない状況でお互いにDNA検査をしたら、「共通の人がいる」ということを専門のSNSを通じて知り、「お父さんが一緒だよね」ということで兄弟で会い、たまに会合しているそうです。今後、こういう問題が出てくるのではないでしょうか。

飯田)アメリカでは戸籍という概念はありませんが、日本的に言えば戸籍上はまったく別人だけれど、遺伝子上は兄弟になる。

奥山)お母さんは違うのですが、生物学的に父親が同じという子どもが増えてしまいます。

不妊治療の医師が患者に自分の精子を体外受精させる事件も

奥山)また、ドナーの精子を選んで不妊治療を行う男性医師が、患者さんに無断で自分の精子を体外受精させた事件が、オランダで実際に起きました。「私が注文したのは青い目の人なのですが、この子のDNAは茶色い目のようなのです」というような事件です。オランダの医師が勝手に自分の精子を渡してつくった子どもが200人いるという、カオスな状況が生まれている。また、精子のドナー側が学歴詐称するような問題も起こっています。

飯田)ドナー側のプロフィールが異なる。

奥山)あるいは病気を隠していたり、別人だったり。臓器の話もそうですが、精子バンクも大きな課題を我々に突きつけるのではないかと思います。

飯田)テクノロジーだけが先に進んで、社会の仕組みや法律が追い付いていない。ただ、仕組みをつくっても、このように海外では問題が起きています。臓器移植法に関しても、これから判例で積み上げていくのかも知れませんが、海外の場合はまだ未整備です。一方で、患者さんたちの「何をしても助かりたい」という気持ちを否定するわけにもいきません。