大量閉店「セブン&アイ」はどこへ行く?

大量閉店「セブン&アイ」はどこへ行く?

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、グループ企業で百貨店業態のそごう・西武と、総合スーパー(GMS)のイトーヨーカ堂で2022年度末までに約3000人の人員を削減する。そごう・西武は21年2月までに5店舗を閉鎖。イトーヨーカ堂は33店舗を対象にグループ内外との連携を検討し、「連携が難しければ閉店する」(井阪隆一社長)としている。そごう・西武とイトーヨーカ堂は業績不振で営業赤字が拡大しており「さらなる構造改革をしないといけない」(同)。セブン―イレブン・ジャパンも会計部門の人員を1100人から550人に、店舗開発人員を820人から520人に減らす計画だ。セブン&アイはどこへ向かうのか。

 今年4月、ニュースイッチではセブン―イレブンの創業や、流通業界初の銀行「セブン銀行」の設立。日本の流通業界に数々の革命を起こしたセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文名誉顧問にインタビューした。再掲し再生へのヒントを考える。

 数々の革命を起こせた理由
 −コンビニの創業をはじめ、数多くの“国内初”や“業界初”を実現しました。
 「社内も流通業界の大物も、スーパーマーケット全盛期に小さなコンビニは成り立たないと反対した。だが、いつまでも続くものはない。小規模店が時代の変化に対応できていないだけだと考え、コンビニで生産性を高めた。私は長く流通業界にいるが、現場は経験していない。いつも常に客観的に、世の中は常に変わると見ていた。変化にショックを受けたこともない」

 −新しい発想を生むには何が必要ですか。
 「難しいことは考えてない。あれば便利だから工夫して実現した。現在のセブン銀行は、時間を気にせず現金を出し入れできたら喜ばれると思った。過去の成功や経験にとらわれると発想できない。プロはそうなりがちだ。『雨が降れば傘をさす』のと同じで、世の中が変わるのは当たり前。その変化を捉え、困り事を見つけ、常に挑戦する意欲を持つことが重要だ」

変化はネットで終わりじゃない
 −ネット通販が拡大してきた今の小売業界をどう見ていますか。
 「私は現役時代の最後に『オムニチャネル戦略』を始めたが、ネットは手段で、重要なのは商品開発だ。スーパーなどの既存の小売店は、どの店も同じ商品を販売しているため、飽和状態になって沈滞した。自主マーチャンダイジング(商品企画、MD)を行い、自分たちの力で差別化しなかったからだ。最初に自主MDを行ったのはセブン―イレブンだった。衣料品では『ユニクロ』、家具では『ニトリ』。いずれも自主的に差別化した企業が残っている」

 −平成の時代の国内産業界を振り返ると、電機や出版業の衰退が顕著でした。
 「新しいものを生み出さなければ、衰退するのは当たり前だ。従来のものは、いずれ全て成長が止まる。ただ、時代の変化に挑戦すれば、また状況は変わる。例えば、雑誌や新聞などの活字媒体はガタガタきて、今はネットと騒いでいるが、これで終わりではない。次に受け手がどう変わるか考え、そこに対する手を打つ。5−10年後、人工知能(AI)やITで世の中は更に変わる。どう変わるのかを考え、現在は何をするべきかを考えるといい」

リーダーに必須の力
 −これからの時代の経営トップの条件は。
 「どんな業種であれ、トップがきちっと先を見て決断し、それを徹底できなければ、企業は衰退する。自分で発想できる人間でなければ、新しい時代のリーダーにはなりえない。ビッグデータやコンサルタントの助言は過去の話。人に頼ってはいけない。自分で発想できないなら、トップになってはいけない」

 −発想のために普段から続けてきたことはありますか。
 「私は勉強家でも何でもないが、出社時には車のラジオをつけたままにしていた。出てきたいろいろな話を何となしに頭の中に置いておく。何かを学ぼうと思って聴くのではない。雑誌や出版物で読んだ内容もそうだ。すると、何かに挑戦しようとした時、それをもとに発想できる」
 「不況は発想するチャンスだ。何かが欠けた状態の方が、それを埋めようと工夫し、努力する」

どう仕事と向き合うべきか
 −日本でも転職が簡単になり、働き方の選択肢が増えました。鈴木名誉顧問も出版業界のトーハンから流通業界へ転身しましたが、今、仕事との向き合い方についてどのように考えていますか。
 「私は流通業界に興味はなかった。番組制作プロダクションを立ち上げるためトーハンを辞め、ヨーカ堂にプロダクションのスポンサーになってもらうため一時期の手伝いのつもりで入社した。入ってみると話が違い、転職も考えたが、トーハンを辞める時に散々反対されたため『そら見たことか』と言われるのが癪(しゃく)で居着いた」
「私にとって、仕事は給料を得ると同時に、自分の発想を生かす場。目の前のことに挑戦すれば、思わぬところからもやりがいは出てくる。今の仕事を越えるものを見いだせるなら転職もいいが、今の仕事で挑戦もせず、うまくいかないから辞めるのはよくない」

 −独立して、自分の会社で自分の発想を実現するという考えはなかったのですか。
 「ヨーカ堂では人事として社員の満足を考え、セブン―イレブンではコンビニオーナーの生活を考えてきた。自分のことは二の次、三の次だった。学生に『ウチの会社に来て』と言ったのに、私が辞めたら無責任だろう。伊藤雅俊名誉会長との相性もよかった。そうでなければ何十年も一緒にやってこれない」

若者よ、全ては挑戦だ
 −若い世代に引き継いでほしいことは。
 「全ては挑戦だ。この山を越したら、次の山が見える。それを越そうと思って私はやってきた。誰かに頼まれたわけでも、命令されたわけでもない。これが生きがいだ。日本人の多くは、まねすることが勉強だと思っているが、まねでは二番手や三番手にしかなれない。皆が新しいことに挑戦すれば、日本はより豊かな国になる」
日刊工業新聞2019年4月10日掲載より加筆
 


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