「私は雪深い秋田の農家の長男に生まれ、地元で高校まで卒業しました」。第99代内閣総理大臣に就任した菅義偉氏は、自民党総裁選への出馬表明からきょうまで、何度この言葉を言い続けてきたことか。

もう何度目だろうと、聞く側はややあきあきしていた。そこで思い出した。かつて大手メーカートップに取材した時「私は自分の考えを他人に理解してもらうには、壊れたテープレコーダーのように、同じことを何回でも言い続けなければと思い実践している」と言われた。

菅氏もこれを実践しているのだと、はたと気づいた。知らないうちに、地方を大切に思う菅氏の政治信条が、こちらの頭にすっかりすり込まれていた。

そのトップに取材をしたのは、自民党から民主党への政権交代が起こった歴史的な総選挙の直前。選挙に向けて「将来世代が抱く不安を解消し、明るい展望を持てるよう、何をやらなければならないか。国民に分かりやすい言葉で説明してもらいたい」とも述べた。

当時と変わらぬ課題がそのまま今もある。盤石と見える政権も、国民に伝える努力を怠ればすぐに足をすくわれる。菅首相も国民にとって大切なことを、何度でも語り続けてほしい。