内需主導・対外開放を促進

最近の中国メディアに「双循環」という単語が頻繁(ひんぱん)に登場する。馴染(なじ)みのない言葉だが、文脈上では国内と国際の二つの柱を相互に促進する経済発展を目指すという意味合いで使われる。

双循環は5月に行われた政治局常務委員会議や全人代で提起されたが、7月下旬に開かれた習近平国家主席と企業家代表との座談会で強調され、クローズアップされるようになっている。

周知のように、米中対立の長期化や新型コロナウイルスの感染拡大でグローバル・サプライチェーンにおける脱中国の動きが出始めており、中国を取り巻く環境が変化している。そうした外部環境の急変に備え、中国は双循環モデルの構築を提唱し始めた。その含意として、国内の内需主導による経済発展により注力しながら、対外開放を深めていくと理解されている。

内需型成長は従前からの方針であり、それほど斬新さがないものの、「国内大循環を主体とする」という表現は国内経済の力を一層高める決意の表れだと思われる。とりわけ、消費を促進するために、不動産価格の上昇を抑制する姿勢を改めて表明している。また、新興ハイテク企業向けの「科創板」での上場条件の緩和をはじめ、株式市場の強気相場を育成し、中国企業の発展をサポートしようとしている。

一方、習近平国家主席は「双循環が決して門戸を閉ざすわけではなく、国内・国際市場を利用した持続的発展の実現へ」と明言している。

振り返ってみれば、1978年に実施した「改革・開放」は、それまでの社会主義と資本主義とのイデオロギー論争に終止符を打ち、実利を重視する方針への転換であった。対外的には門戸を広げて外資の誘致に注力し、中国を経済発展の軌道に乗せたわけだ。

中国にとって、開放は重要な意義を持つが、約14億人がいる巨大なマーケットのさらなる開放は実現されるだろうか。ここ2、3年、外資銀行の業務範囲の拡大や証券会社への外資出資比率の上限撤廃など、金融分野における外資参入に対する規制緩和が目立つ。自動車産業においても、合弁会社の外資出資比率の制限緩和を進めており、乗用車でも2022年に外資出資比率制限をなくすことになっている。

また、双循環が目指す開放は、従来から重視してきたような、高度な人材や技術を有する外国企業の誘致だけでなく、中国企業の海外進出を支える狙いもあると考えられる。

現時点で詳細情報は乏しいものの、中国は双循環のコンセプトを「第14次5カ年計画(21―25年)」の経済方針にしようとしている。今後の具体的な施策の展開に注目したい。

伊藤忠総研産業調査センター主任研究員 趙瑋琳

◇伊藤忠総研産業調査センター主任研究員 趙瑋琳