2021年のノーベル物理学賞は、気候変動モデルを提唱し、地球温暖化と二酸化炭素濃度の関係性を予測した功績で、米プリンストン大学の真鍋淑郎氏と、ハンブルク大学のクラウス・ハッセルマン氏、ローマ・ラ・サピエンツァ大学のジョルジョ・パリージ氏に授与されることが決まりました。
 日刊工業新聞社が発行した書籍『トコトンやさしい異常気象の本』(一般財団法人日本気象協会 編)から、全球気候モデルに関わる項目を抜粋して紹介します。

仮想空間の実験装置で地球の将来を占う

 

何かわからない事柄に出くわした時、私たちはどのように対応するでしょうか。小学校の理科の時間では、まず「こうなるであろう」という仮説をたて、その仮説に基づいた実験を実施し、その結果をみて仮説が正しいかどうかを確認することを学びました。例えば今から250年以上前、アメリカのフランクリンも「雷は電気である」との仮説をたて、それを確かめるべく凧を揚げ糸に電気が流れるのを確認することで、雷は電気であることを明らかにしています。これも「実験による証明」の一つです。

 

それでは同じ大気現象である地球温暖化などを実験で確認することはできるのでしょうか。

 

この100年の間、地球上のCO2濃度は上昇し続けています。この結果がどうなるのか、まさに私たちはその結果を「実験器具」の中に入る形で固唾をのんで見守っているところです。しかし、この状態が続いた場合に100年後にどうなるかということはわかりません。100年前に戻り、現代と同じレベルのCO2ガスを放出することができないからです。

 

このように地球のような大きな対象物に対し長い期間にわたる現象を評価する場合、「全球気候モデル」という計算機上の仮想の実験装置を用いて仮説を検証します。

 

これまでの研究結果から、地球上の大気や海の状態はすべて物理計算により再現できることがわかっています。例えば現在の気象条件を最初の状態として計算機上に再現します。このあと、例えばCO2が現在と同じだった場合、あるいは倍増した場合、100年後がどのような気候状態になるのかといった「実験」を計算により求めることができます。この計算装置が「全球気候モデル」といわれるものです。

 

全球気候モデルはアメリカやヨーロッパの他、日本も気象庁気象研究所などがモデルを開発し、地球の気候に関する研究を進めています。

イラスト:小島サエキチ
(「トコトンやさしい異常気象の本」p.30-31より一部抜粋)

<書籍紹介>
書名:トコトンやさしい異常気象の本
編者名:一般財団法人日本気象協会
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,650円

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア

<目次(一部抜粋)>
第1章 異常気象とは
異常気象とはどんな気象?/私たちの社会生活が気候を変える?/21世紀末は極端現象が極端でなくなる/大規模な火山噴火が大きな気候変動をもたらす/100年後、異常気象は増えるのか

第2章 雨の異常気象
大雨が降る頻度が増えている?/大雨が降る地域が全国に広がっている/極端な大雨と都市化が内水氾濫をもたらす/豪雨災害をもたらすバックビルディング現象

第3章 風の異常気象
近い将来、台風が強大化する?/突然に襲いかかる猛烈な風/発達した低気圧による強風災害/砂漠化の進行と砂塵嵐

第4章 気温の異常気象
四万十はなぜ暑くなったのか/北半球を襲った異常高温/冷害をもたらすやませはどこから吹くのか/風のない晴れた夜が霜害をもたらす/つるつる路面はどうしてできる?

第5章 雪の異常気象
豪雪年と少雪年の違い/どうして大雪が降るのか?/白魔が視界を奪う!ホワイトアウトとは?/空から降ってきた雨が凍る?

第6章 海の異常気象
南太平洋の島々が海に沈む?/海水温の上昇が異常気象を呼ぶ/不意に襲う沿岸の高波/船舶を襲う沖合の高波/気圧の低下と強風が高潮を招く/海洋生物に悪影響をもたらす海の酸性化

第7章 異常気象から身を守る
大雨の降っている場所を知る/大雨から身を守る/強風や突風から身を守る/災害時に身を守る情報を知る/ 熱中症から身を守る/吹雪から身を守る/自助・共助・公助の考えで身を守る/情報だけでは人は動かない/もしもの時のために

第8章 地球温暖化への挑戦
地球温暖化にどう向き合うのか/地球温暖化対策に向けた世界的な取り組み/二酸化炭素を回収・貯留する/天気予報で二酸化炭素を削減する/将来の水害を防止軽減するために/農作物の栽培適地は北上するのか?