【光学望遠鏡利用】

天気予報やカーナビゲーションシステム、衛星放送など、我々の生活は今や宇宙からのサービスと切り離せなくなっている。宇宙の利用は今後ますます拡大していくだろう。それとともに我々が解決すべき課題がある。宇宙デブリである。

宇宙デブリとは、人類が宇宙開発を始めて以来、打ち上げられたロケットや人工衛星、およびそれらの破片である。その多くが軌道上に残留し、高速で飛来しているため、活動中の人工衛星などと衝突すると、たとえ小さなデブリであっても甚大な被害を及ぼすばかりか、新たな宇宙デブリを大量に発生させる危険性をはらんでいる。だが、人工衛星に衝突するデブリの位置を事前に知ることができれば衝突を回避することが可能となる。

深刻なデブリ混雑状況にある低軌道(高度2000キロメートル以下)における10センチメートル以上のデブリは主に米国のレーダー監視網によって把握されている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では光学望遠鏡を利用して、これまで状況把握が困難であったそれより小さな、10センチメートル以下の低軌道の宇宙デブリ観測技術の研究開発を実施している。

【観測画像処理】

開発しているのは、図に示すように、多数の観測画像を宇宙デブリの移動方向を仮定して重ねることにより、1枚の画像では認識できない非常に暗い(小さい)宇宙デブリを検出する画像処理技術である。宇宙デブリのあらゆる移動方向を仮定して大量の画像処理を実施する必要があることから、これまで膨大な計算時間がかかっていたが、専用のFPGAボード(集積回路の一種)やGPU(画像処理用の演算装置)用のアルゴリズムを開発することによりこの弱点を克服している。

これらの技術により、大規模な設備を用いなくても、口径20センチメートル程度の小型望遠鏡から得られる観測画像を解析することによって、低軌道の10センチメートル以下の宇宙デブリを検出することが可能になった。

JAXAではこれらの観測技術の有効性を確認するために豪州に遠隔観測施設を構築して日々観測運用を実施している。今後は発見した宇宙デブリの軌道を把握し追跡する技術を開発して行く予定である。

【米監視網と連携】

光学望遠鏡による宇宙デブリの観測はレーダーと比較して天候などの影響を受けやすいという弱点があるが、宇宙デブリの位置決定精度が高く、観測装置の準備に費用がかからないという利点がある。

今後は米国のレーダー監視網と連携することにより、軌道上の宇宙デブリを把握し、宇宙活動の安全確保を目指したい。

◇研究開発部門 第二研究ユニット 主任研究開発員 柳沢俊史

2000年から航空宇宙技術研究所(JAXAの前身の一つ)で宇宙デブリなどの観測技術の開発に従事。05―07年米航空宇宙局(NASA)の宇宙デブリプログラムオフィスに勤務。子どものころから望遠鏡で星をみるのが好きだった。光学デブリ監視網を構築するのが夢。趣味はランニング、読書、模型製作。

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