損害保険大手4社は自動車保険の2022年1月改定に合わせて業界初の補償を投入する。22年1月改定では任意加入の自動車保険料が平均1―2%程度引き下げられる見通しで、保険契約者にとって分かりやすく恩恵が及びうる新たな補償を提案する。各社は社会課題や生活様式の変化を反映する補償も準備しており、その輪郭が見えてきた。(増重直樹)

東京海上日動火災保険は全損事故発生時、車両保険の設定金額を上回る形で補償する特約を販売する。一般に車両保険の保険金額は車両の時価額を基に設定するため、車両購入から年数を経るごとに減少する。同社は新車購入時に設定した保険金額を上限に、車両の買い替え費用を補償する類似の特約を販売しているが、この特約を付帯できない契約者にも“救済手段”を差し伸べられる。

背景にあるのが激甚化する自然災害や修理費の高額化だ。大規模な水災害による買い替え需要の高まりで一時的な市場価格の上昇や、車両の高性能化で修理価格の高額化が起きている。新特約では全損事故で車の買い替えなどを余儀なくされた場合に自己負担を回避できる利点がある。

損害保険ジャパンはモビリティー(乗り物)の多様化やMaaS(乗り物のサービス化)の発展に焦点を当てた改定を計画する。その一環で車外における乗り物事故を補償する特約の範囲を拡大する。例えば利用者の増加に伴い、事故が急増する電動キックボードにはねられてケガをするケースなどを補償範囲に加える。保険金の支払い方法もこの特約においては業界の主流である定額払いから実損払いに変更。同社は「医療費が高額化した場合に定額払いでは足りないケースがある。実損払いが実態に即していると判断した」と理由を明かす。

三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、自動車保険に付加できる人身傷害保険で、被保険者が重度後遺障害になった場合の支払限度額を無制限とする。人身傷害保険金は9割超が5000万円以下で設定しており、3000万円以下が最多となっている。

ただ重度後遺障害を被ると、年齢や家族構成にもよるが、1億円超の高額な損害が発生するケースもある。三井住友海上は「改定前の支払限度額は人身傷害保険金の2倍だが、それだと心もとない場合がある。無制限とすることでお客さまの経済的不安を軽減したい」とする。

自動車保険は損保事業における主力商品に位置付けられる。保険料収入に占めるボリュームが大きい故に、保険料の引き下げは減収要因として作用しかねない。成熟化する自動車保険は改定の余地がさほど大きくない。ただ、その中でも新特約などで補償ラインアップを拡充する背景には保険料収入を維持したい思惑もありそうだ。

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