【機体改修不要】

近年、世界的に脱炭素化の動きが加速している。運輸部門である航空業界においてもその流れは同じであり、国際民間航空機関(ICAO)が2020年以降の国際線における二酸化炭素(CO2)排出量を増加させないこと(27年以降義務化)、また国際航空運送協会(IATA)では50年までに航空機からのCO2排出量を05年比で50%削減することを掲げている。

これらの目標を実現するための手段の一つとして、バイオジェット燃料などの持続可能な航空燃料(SAF)の利用がある。

SAFは既存の機体を改修することなくそのまま利用できることがメリットであるが、現在は既存のジェット燃料と混合し利用することが定められている。その混合割合は、国際標準規格(ASTM)で規定されているが、現状では体積で50%が最大である。

一方、今後のSAFの普及と脱炭素化促進に備え、最近では大手航空機製造メーカーが100%SAFに適合するような航空機開発の取り組みや飛行試験を実施しており、また、大手ジェットエンジン製造メーカーでも100%SAFで稼働するエンジンテストを実施すると公表している。先述した世界的な潮流に合わせ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)でもSAFの燃焼・排気特性を調べる研究を行っている。

使用しているSAFは牛脂を原料として「HEFA技術」(廃食油などを水素化処理で液体燃料を合成する技術)を用いて製造された燃料と、木質チップを原料として「ガス化FT合成技術」(木質セルロースなどの固形物をガス化し、触媒を用いて液体燃料を合成する技術)を用いて製造された燃料(新エネルギー・産業技術総合開発機構〈NEDO〉委託事業にて製造)の2種類だ。

高温高圧燃焼試験設備で燃焼器入口温度・圧力を実際のエンジン燃焼器入口条件に設定し、空燃比やSAFの混合割合を変化させ、燃焼時の火炎画像や窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、全炭化水素(THC)、粒子状物質(PM)などの排気成分、燃焼振動などを取得している。

SAFの特徴としてNOx、CO、THCは従来のジェット燃料と大きな差がないものの、PMに関しては大きく低減することが確認され、それは燃焼火炎時の輝度の差としても確認されている。また、PMが飛行機雲の生成に関係しているとの報告もあり、SAFの利用は温暖化抑制に直接貢献する可能性がある。

そのため、JAXAではSAFを対象とした飛行解析モデルや排気特性モデルを作製し、飛行時の環境影響評価を行う研究も進めている。このような取り組みを通し、SAFの優位性をアピールするとともに、SAFの普及が促進され、少しでも温暖化の抑制に貢献できればと考えている。

航空技術部門 推進技術研究ユニット 主任研究開発員 水野拓哉
東京都出身。03年入所。SAF関連やジェットエンジンの着氷研究、運転試験などに従事。趣味は車、山登りとその後にゆったりのんびりつかる温泉。