新型コロナウイルスをきっかけに、様々な分野におけるニューノーマルへの対応が加速している。特に、サプライチェーンの分野においては、加速する変化への対応がより強く求められている。世界的なパンデミックにより、調達・生産・物流・販売といったサプライチェーンにおいて、需要に対する不確実性、生産制約、出荷・物流の遅延といった様々な課題が浮き彫りになったが、今日では、将来に向けて準備していたデジタル技術の活用や、CSR強化といった社会情勢への対応は、より強制的に、より早いスピードで必要となってきている。

私自身は、外資系サービスベンダーで10年以上、グローバルサプライチェーンに関わるアプリケーションやプラットフォームサービスに関わる提案をしている。我が社は、グローバルサプライチェーンのトップパフォーマンス企業を筆頭に、世界130万社以上に利用していただいており、年間9兆ドル(約1,000兆円)を超える取引を支える世界最大規模の商取引ネットワークを運営している。そのため、欧米の同僚と共に、海外顧客向けに提案する機会も多い。文化の違いはもちろんだが、欧米の提案アプローチや、欧米企業が考えている先進的な取組みから学ぶことも多くある。欧米の動向を交えつつ、サプライチェーン高度化に必要なステップを紹介したい。

日本企業の現在地

弊社顧客の欧米企業に目を向けると、アフターコロナはもとより、将来を見据えたビジネスの見直し・展開、変化への対応力を備えるべく、多額の投資を実施する企業も多く見受けられる一方、日本企業においては、必要性は十二分に認識しつつ、取組みのスピードは十分とは言えず、限定的な対応に留まっている企業も多い。

日本の製造業を支える業務システムは、長年の現場業務や業務改善を反映して作り込まれており、きめ細かな機能が装備されている。一方で、長年積み重ねたシステム変更と属人化により、全体仕様の把握が困難となり、刷新の際に、棚卸や影響調査に多大な工数がかかることも少なくない。また、サプライチェーン最適化は、取引先や各業務領域間で足並みを揃える必要があり、ビジネスの関係性から調整にも時間がかかる。

このような課題に直面しているため、サプライチェーンDXを始めとするサプライチェーン高度化という命題に対して、多くの日本企業は、サプライチェーンをエンドツーエンド(端から端まで)で最適化するのに苦労しているのが現状だ。これは、「令和2年度 ものづくり基盤技術の振興施策」、いわゆる「2021年版 ものづくり白書」においても「データ連携における課題」として、「擦り合わせ型」「部品点数の多さ」「生産拠点の多さ」「間接販売」「製品のデジタル化の遅れ」などが指摘されていることからもよく分かる。

こういった現状により、各業務範疇内での局所的デジタル化に留まるケースも多い。各業務システムが、独立して高度に完成されているがゆえに、計画・調達・生産・物流・販売間のエンドツーエンドで利活用したいデータの収集・取得が困難であり、サプライチェーン高度化が効率的に進んでいない。

さらに、欧米企業との違いとして、サプライチェーン上のプレーヤーとの関係性があると考える。欧米企業のOEMは、サプライヤに対して、取引条件を明示化しており、受発注の手段も、OEMがEDI(Electronic Data Interchange=電子データ交換)を提示すると、その手段に強制的に従うことになる。これにより、デジタル推進については、日本企業よりも2〜3年ほど先行して進んできた。

一方、日本の製造業は、DXを実施しなくても、近隣周辺のサプライヤとの強固な関係性から、擦り合わせ型で現場の調整力で成立する。また、BuyサイドであるOEMが、サプライヤの環境を考慮するケースが多く見受けられ、ダイナミックに舵を取りづらいという声も聞く。

こういった日本の商習慣や文化もサプライチェーン高度化の阻害要因となり、欧米企業と比較して遅れを取っている一因かもしれない。

ビジネスに国境がない現代においては、自社の取組みに加え、サプライチェーン全体を見据え、国内外や業種業態を問わず、異業種を含めたエコシステム形成と実効性のある事前対策の検討が、ニューノーマルのサプライチェーン構築に必要と考える。

サプライチェーン高度化ステップ

では、サプライチェーン高度化を推進していくにあたり、どのようなステップが必要なのか、考慮すべき点はどういったことか、弊社は次の①〜④のステップが重要だと考えている。

【サプライチェーンデジタル化】

高度化の第一歩であり根幹となるのが、「サプライチェーンデジタル化」である。これまで、電話・メール・FAX等で実施されていたマニュアル作業を削減し、紙ベースのプロセス撤廃を目指し、サプライチェーン上のエンドツーエンドでの100%デジタル化の実現が必要だ。この際、欠かせないのが、ビジネス関係と企業規模に応じた統合手段の提供だ。

大規模で取引量が多い取引先には直接接続のEDI連携やVAN(Value-Added Network=付加価値通信網)を介した連携、中小規模で取引量がさほど多くない場合にはWeb EDI連携やモバイルによる手段の提供といった具合だ。ビジネス上の関係で、相手先の指定に従う必要があるが、その際、取引先やその業界指定のデータフォーマットや通信手段といった標準仕様が自社とは異なり、その標準に合わせる対応が自社で必要となる。

このように、企業間データ連携においては、業界標準の熟知や専門的スキルも必要となるが、取引先との接続調整を含めた導入からの運用サポートは、弊社のアウトソーシングサービスを利用することで自社対応は不要となる。また、弊社のプラットフォームには、国内外含めて130万社が接続されており、多くの企業が既に利用しているため、効率的な連携が可能である。

また、既存のマニュアル業務からデジタル化をすることで、領域毎に業務プロセスの見直し・改革は必要となるが、次のステップに進む上で必須であり、最終的に得られる価値も大きく、弊社でもデジタル化のためのB2Bコンサルティングサービスを提供している。これまで電話、メール、FAX等で実施していた取引先との調達業務や販売業務などを、弊社サービスを活用してデジタル化するにあたっての業務整理を事前にさせて頂いている。

次回は、「サプライチェーンの高度化ステップ」の第2ステップである「サプライチェーンDX」について、話を進めたいと思う。

(文=オープンテキスト株式会社 ソリューションコンサルティング本部 マネージャー 深井麻紀子)