脱炭素やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)をめぐり開発競争が激しさを増す中でも、自動車メーカー各社は車を運転する楽しさを追求している。16日まで千葉市美浜区で開催されたカスタムカーの展示会「東京オートサロン」では、モータスポーツで得た知見を反映した車や電動化時代を見据えた車を相次ぎ披露。乗ると“ワクワク”“ドキドキ”するような車本来の魅力をアピールした。

レースの知見応用

「車好きに喜んでもらえる車を持ってきた」。トヨタ自動車の佐藤恒治執行役員は14日にオンラインで開いたプレスカンファレンスでこう強調した。

その一つが世界初公開した小型スポーツ車「GRMNヤリス」。プロのドライバーが開発から参画し、GRヤリスと比べボディーの剛性を強化し約20キログラム軽量化するなど性能を高め「より安心して速く走れるクルマ」にした。夏頃に500台限定での発売を予定。14日から予約抽選を始めた。市販レース車カテゴリーの「GT3」用車両として「GR GT3コンセプト」も公開。「年末には試作車が完成する」(佐藤執行役員)。

トヨタは2020年9月発売のGRヤリス以降、レース現場で車を壊れるまで走らせて改良点を洗い出し、直し、鍛えて再び走らせるサイクルで“もっといいクルマづくり”に取り組んできた。豊田章男社長は「GRヤリスをきっかけに開発の仕方がずいぶん変わった」と実感を込める。

EV時代も見据え

スバルのEVコンセプトカー「STI E―RA」。東京オートサロンで世界初公開した

電気自動車(EV)時代も見据える。佐藤執行役員はEVの差別化ポイントは「(車の)『味』だ」とし、「軽量化や剛性など車の基本をモータースポーツの現場で磨き、その技術を持ってEVを作る」と、EVでも「走る楽しさ」の知見が生きると見る。

SUBARU(スバル)はEVのコンセプト車「STI E―RA」を公開。四つのモーターの4輪駆動方式で出力は1000馬力超となる。モーターはギアとインバーターが一体となったヤマハ発動機製を採用した。

同社モータースポーツ統括会社のスバルテクニカインターナショナル(STI、東京都三鷹市)はEV開発を急ぐ。平岡泰雄STI社長は独自の走行制御技術を生かしながら、「(エンジンから)モーターになっても『スバルらしい』と言われる技術を培っていきたい」と力を込める。

「運転がうまくなったような感覚を覚えられる」。日産自動車の内田誠社長は世界初公開したスポーツ車「フェアレディZ」の新型車の魅力を興奮気味にこう話す。

排気量3000ccのガソリンエンジンを搭載。加速性能だけでなく操縦安定性も高め、走りの楽しさを追求した。240台限定の特別仕様車を含め6月下旬に発売。価格は500万円台からを想定する。

東京オートサロンはオンライン中継と会場のハイブリッドで開催。コロナ禍にも関わらず車愛好者が熱い視線を注いだ。車が持つ走る楽しさを求める需要は根強い。メーカーには脱炭素への取り組みと愛好者の期待に沿い続ける難しい対応が求められる。