ネツレンは約75年前に確立した工業用の誘導加熱(IH)熱処理技術をベースに、モノづくりや社会基盤形成を支えている。大宮克己社長は「持続可能な社会構築の流れは当社に追い風」とし、一般市民への理解活動やアピールを強めている。

「クッキングヒーターでもおなじみのIHです」。2022年2月に開かれた個人投資家向け説明会(IR)では、自社の技術を分かりやすい言葉で紹介した。IH熱処理はクリーンでかつ省資源という“ダブル・エコ”が競争力の源泉で経営の根幹だ。電気を使うため金属の加熱効率が高く、二酸化炭素(CO2)の直接の排出はないとされ、硬さや耐久性、耐摩耗性などの機能を持たせられる。

同社は熱処理業界の変革者であり、しばしば縁の下の力持ちと表現される。ただ自ら説明能力を持たないと社会の共感は得られないとし、紹介には準備を重ねた。参加者の反応に「確かな手応えがあり、ネガティブな意見はなかった」と大宮社長は笑顔をみせる。

IH技術は、自動車軽量化のための高強度バネ鋼線「ITW」、操舵(そうだ)装置用部品「ハイブリッドラックバー」などの自社製品を生み出した。ほかの熱処理法と組み合わせたり、対象の場所ごとに処理を加減したりできる。「ステーキの焼き加減を場所ごとに調節できるようなものだ」(大宮社長)。

同社は30年ビジョンや現中期経営計画を策定した21年春に「CO2排出量削減委員会」を発足。再生可能エネルギーの最大活用、製品・技術の拡販によるCO2排出量削減への貢献などを具体的に進めている。

こうした中で自社の成長を持続させるため優秀な人材の獲得に力を入れる。IH熱処理に不可欠なのが加熱コイルで、職人技による一品生産だ。技能継承をより円滑化しようと熱処理方案のモデルベースの開発、CAE(コンピューター利用解析)や金属3次元(3D)プリンターとの連動などデジタル化にも注力する。

「環境負荷の低減」を旗印に、本業を通じた地道な取り組みで社会に寄与する考えだ。


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