日立製作所は2030年度をめどに、1メガビット級の処理能力を持つシリコン量子コンピューターを開発し、顧客との実証事業を始める。東大などとの共同研究で進める量子計算ソフトウエアの開発成果を生かし、金融や化学といった顧客のビジネスにつながる実証内容を想定する。実証を通じて量子コンピューターを、金融取引システムや創薬バイオ材料といった新しい価値を生み出す将来の柱事業に育てる。

日立は既に、量子コンピューターを疑似的に再現する相補型金属酸化膜半導体(CMOS)アニーリングと呼ばれるコンピューターを事業化している。一方、汎用計算に適したゲート型の量子コンピューターは、科学技術振興機構(JST)による「ムーンショット型研究開発事業」に参加し、50年の実現を目指して開発中。ゲート型には超電導やイオントラップなどの方式があり、日立が開発するシリコン方式は技術的に成熟したシリコン半導体を使うため開発コストが抑えられ、大規模化しやすいメリットがある。

30年度に目指す1メガビットの処理能力は日立が同事業の過程で独自に置く目標。「NISQ」と呼ばれるコンピューターで、「誤り訂正機能」を持つ本格的なゲート式量子コンピューターの前段階に位置づけられる。1メガビットの処理能力は米グーグルや米IBMも開発目標に据えている。

日立は東大やトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループなどが参加する量子イノベーションイニシアティブ協議会(QII)の共同研究でも、IBM製のゲート型量子コンピューターを使い、金融や化学分野向けアプリケーション(応用ソフト)の開発に取り組んでいる。

30年度に目指す実証事業は自社製の量子コンピューターにQIIのソフトウエア開発成果を掛け合わせる計画。ハード、ソフトの両方の開発を並行して進め、事業化の道筋を探る考えだ。


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