接種停滞防ぐ情報発信課題に

新型コロナウイルスのワクチン接種が新たな段階に入った。厚生労働省はオミクロン株に対応した新たなワクチンの接種を10月半ばに始める方針を決めた。感染拡大の抑制と社会経済活動を両立させるのが狙いだ。ただ新ワクチンを打てるまで接種を待つ「接種控え」の懸念もある。情報発信の強化など導入に向けた課題は多い。(幕井梅芳)

全国では新型コロナの新規感染者数の増加に伴って療養者が増加。これに伴い重症者や死亡者も増加傾向が続いていることから、「今後の動向に注視し、適宜適切に対応していく」(加藤勝信厚労相)としている。

感染拡大のピークが見えない中、政府は経済活動との両立を図る方針。「行動制限を伴わないコロナ対策を行う」(岸田文雄首相)とのスタンスを強調する。

行動制限を伴わないコロナ対策の切り札となり得るのは、やはりワクチン接種だ。今回の感染拡大はオミクロン株の広がりによるものと専門家は分析している。オミクロン株は重症化リスクが低いものの感染力が強いのが特徴。現行ワクチンでは効果が低いとされる。今回の「第7波」では、病床逼迫(ひっぱく)だけではなく、航空機や鉄道、バスといった社会インフラに影響が及び、変異株に対抗できる手段を必要としている。

「重症化予防だけでなく、感染や発症を防ぐ効果も期待できる」―。8日の厚労省の専門部会では、2回目接種を終えた全世代で新ワクチンの接種を進めることで委員の意見が一致した。「2価ワクチン」といわれるワクチンで、すでに米ファイザーと米モデルナが厚労省に承認申請を行っている。厚労省は「承認されれば9月中にも輸入が可能になる」としている。

一方で、新ワクチンの導入に向けた課題もある。政府は現行ワクチンの3、4回目接種を進めている。特に4回目については、対象である高齢者らが8月に接種する場合、厚労省の想定する5カ月の接種間隔を前提とすると、新ワクチンを接種できるのが2023年1月になる。

このため10月まで現行ワクチン接種を控える懸念がある。新たな変異株「BA.2.75」による第8波が危惧される中、この間、高齢者などの免疫が落ちると大きな影響もある。

8日の専門部会でも「現行ワクチンにも重症化予防効果はある。時期を待たずに打ってほしい」との意見が相次いだ。政府はワクチン接種に関する情報発信と説明責任をより充実させることが求められる。