KDDIが7月に起こした大規模通信障害の教訓を糧に、企業の事業継続計画(BCP)支援に取り組んでいる。24日、1台の端末で複数の携帯通信網に接続可能なIoT(モノのインターネット)向けソリューションの申し込み受け付けを12月23日に始めると発表した。障害時には自動で他の携帯通信事業者の回線に切り替わる。7月の障害では、物流など最大約150万のIoT回線に影響が及んだ。通信の多重化を推進し、障害発生に備えたい需要に応える。(張谷京子)

「顧客はBCPの観点から、いろいろな(障害対策の)選択肢を考えないといけないという意識が高まっている。我々はそれに応える責務がある」―。24日の会見で野口一宙5G・IoTサービス企画部長は、今回のソリューション提供に至った背景についてこう話した。

新ソリューションは、1台の端末に2枚のSIMカード(契約者情報記録カード)を挿入する「デュアルSIM」に加え、1枚のSIMで2回線の利用が可能な「シングルSIM」の二つのパターンを用意した。メーンのKDDI回線が切断した場合には、自動でNTTドコモやソフトバンクのサブ回線に切り替わる。販売価格は非公表だが、サブ回線は従量課金制。回線未使用時は月額費用を抑えられる。

KDDIは以前から、顧客の要望に応じて、個別にメインとサブの両回線を利用できるようなサービスを提供してきた。ただ、従来は「受け身でお客さんの要望に応えていた」(野口部長)。

社会インフラであるATMを停止させないための対策が求められている(イメージ)

今回はルーター端末の導入から保守などをパッケージ化して提供。銀行の現金自動預払機(ATM)や交通機関のキャッシュレス決済、物流における貨物や運送記録、産業用機器の遠隔監視など、幅広い業界・用途で利用してもらうことを想定する。

KDDIは政府の政策を踏まえた通信料金引き下げなどの影響で個人向け通信事業が伸び悩む中、法人事業に注力。特にIoTサービスの拡大では、大手通信会社の中でも先行しており、2022年3月期の法人向けIoT累計回線数は19年3月期比3倍超の2450万回線にまで伸長した。

高橋誠社長は2日の決算会見で「今回の障害が(法人事業の)成長に大きな影響を及ぼしているわけではない」としつつも「(障害後にIoTを利用する顧客各社を回ったところ)BCPの大切さを語る企業が多かった」と述べていた。通信障害を未然に防ぐ努力を続けるとともに、発生してしまった場合の対応策を充実して顧客のBCP強化に貢献できるかが問われる。