JR東海が走行中の新幹線の電圧低下を抑えるソフトウエアを東海道新幹線「N700S」の営業車両に搭載し、機能確認試験を実施している。予定していた20編成への搭載を9月末までに完了しており、これまで順調に試験を続けている。試験は2023年2月まで実施。結果を受けて他のN700Sにも本機能の搭載を広げていく考えだ。

もともと新幹線は走行中に電圧が低下する課題があり、沿線の変電所内に「電力補償装置」を設置することで、電圧を維持していた。東海道新幹線は需要の高まりにより、運行本数がピーク時には3分間隔と山手線並みにまでダイヤが過密化しており、これに合わせて設備を増強しつづけた結果、現在は沿線に21台を設置しているという。

JR東海総合技術本部技術開発部電力技術チームの久野村健チームマネージャーは、同装置は変電所の敷地内に設置するため、「設置には限界がある」と指摘する。維持管理などのコストも負担となっている。

JR東海の電力補償装置。沿線に21台設置している(同社提供)

今回、N700Sに搭載する「主変換装置」のソフトウエアを改良することにより、電流の位相の遅れを小さくすることに成功し、架線からの電圧低下を抑制した。「ハードウエアを変えずに、ソフトウエアの改良により、車両側で制御することができた」(久野村チームマネージャー)。15年から開発に取りかかっており、地上の設備ではなく車両に搭載した装置でこうした機能を実装したのは世界初だという。

仮に東海道新幹線の全編成に導入すれば、同装置を12台削減可能と試算しており、合わせて変電所の約1割も削減できるという。これにより年約2000万キロワット時の電気使用量を削減できる見込みで、これは約3億円の電気料金と約1万トンの二酸化炭素(CO2)排出量に相当する。

N700Sを用いた機能確認試験では、地上設備や車両の他の機器への影響など、さまざまな環境下での試験データを取得していく。ソフトウエアを搭載した20編成は22年度までに導入予定のN700Sのうち約半分を占めており、試験の結果を受けて他のN700Sにも本機能の搭載を拡大していく方針だ。

また、海外特許も出願しており、久野村チームマネージャーは、本機能が「全世界的にスタンダードになってくれれば」と期待している。