東レは水素関連事業の売り上げについて、「中期経営計画」の最終年度である2025年度に、22年度比3倍の600億円を目指す。同社は燃料電池向けの電極基材のほか、水素を製造する水電解装置の中核部材である電解質膜などを手がけている。水素関連事業を含むサステナビリティイノベーション事業全体では、25年度に22年度比1・2倍の1兆6000億円の売り上げを目指す中、クリーンエネルギーとして注目される水素製造に関わる製品群で攻勢をかける。

日覚昭広社長は「当初は燃料電池関連の需要が増えると思っていたが、(水素ステーションなどの)インフラが少なく、(乗用車の普及には)時間がかかる。エネルギーとしての水素の方が伸びてくるのでは」と認識。「50年に世界のエネルギーの半分を占めるのではないか」とも予想する。

22年には、山梨県、東京電力ホールディングス(HD)と、やまなしハイドロジェンカンパニー(甲府市)を設立。またドイツ子会社においては、触媒付き電解質膜「CCM」の生産能力拡大も進めている。

東レが展開する高効率の電解質膜による固体高分子(PEM)型水電解方式は、「先行するアルカリ型水電解方式と比べ、取り扱いが容易などのメリットがある」(日覚社長)。今後、同社製品の需要も高まるとみて、積極拡大を図る。


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