三菱電機が炭化ケイ素(SiC)のパワー半導体の開発・生産に力を入れている。8インチという大型化したSiCウエハーに対応する新工場棟を熊本県菊池市に建設することを決定。このほど米国企業と8インチのSiC基板を共同開発することを表明した。脱炭素の流れを受けて高性能のパワー半導体の需要は高まっており、需要を確実に取り込む。

「SiCパワー半導体は電気自動車(EV)向け需要の広がりに伴って急速な拡大を見込むとともに、さまざまな応用分野で市場の広がりが見込まれる」。三菱電機の漆間啓社長は、SiCパワー半導体の需要の増加についてこう期待する。

3月にはパワー半導体に関連した設備投資で21―25年度の5年間で従来計画より1300億円積み増し、2600億円とすることを決めた。このうち1000億円は菊池市の新工場棟などに充てる。 26日には新工場棟で生産するSiCパワー半導体に使う8インチのSiC基板を共同開発するため、レーザーや材料関連製品などを手がける米コヒレント(ペンシルベニア州)と基本合意書を締結した。

コヒレントはSiC材料を長年開発しており、15年には世界初の8インチの導電性基板を実証し、19年には8インチSiC基板の提供を始めた。三菱電機とは以前から6インチのSiC基板を供給するパートナー関係にある。

両社は新工場棟での生産に適した高品質な8インチSiC基板の共同開発を進める。その後、高品質で信頼性の高いパワー半導体の安定供給を目指していく。

SiC製のパワー半導体は従来のシリコン(Si)製より電力損失が少なく、より高い電圧や電流、動作温度に耐えられる。EVだけでなく広く産業用に用途が広がる。


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