三井不動産はトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」を見据え、高機能物流施設の開発・提案に磨きをかける。事業を始めた12年からの累計投資額は23年度中にも1兆円に達し、足元では国内外に62棟を展開。倉庫作業の大半を自動化した施設での実証も進める。「物件の開発・賃貸だけではなく、課題解決に取り組むことも重要な使命」(三木孝行取締役専務執行役員)とする。

三井不動産は5日、電子商取引(EC)向けに仕上げた千葉県船橋市の「EC自動化物流センター」を報道陣に公開した。建屋と各種自動化機器、システム、オペレーションを組み合わせた自動化倉庫で、昨年11月から同社のECサイト「&モール」の物流拠点として運用。すでに1日当たりの最大出荷量を従来の2倍以上、庫内作業にかかる人件費を同2割削減する効果を引き出した。

同センターは他のEC事業者にも共同利用を提案する計画。ドライバー不足やトラック1台当たりの低い積載率など、業界が抱える課題の解消を目指す。

併せて、ドライバーが事前にバースを予約する仕組みも導入。これを物流施設の車番認証システムやテナントの管理システムと連携させることで、積み下ろしの順番を待つ「荷待ち」などの待機時間を大幅に短縮できると見込む。

ロボットが専用コンテナを運ぶ。入出荷作業の自動化とキャパシティの拡大を実現した

三井不動産ロジスティクス本部の大間知俊彦ロジスティクス事業部長は「トラックドライバーの担い手不足は深刻で、30年には約35%の荷物を運べなくなると言われている」と指摘。「当社が荷主や物流企業、各種ソリューションの提供会社をつなぐハブとなり、課題解決に寄与するプラットフォームを提供する」との考えを示す。オフィス開発や街づくりの知見も生かしていく。

三井不動産など不動産大手は、高機能物流施設にもオフィスや商業施設、住宅、スマートシティーなどの開発で蓄積した強みをフル活用している。ドライバー・従業員向けのラウンジや託児所、ジムなどはその一例で、関係者は「一昔前の倉庫とは違う。満足度の高い“働く場”が求められている」と明かす。100%再生可能エネルギーの供給などの差別化も進んでいる。

コロナ禍で急伸したECを追い風に高機能物流施設への投資は拡大している。家庭外で調理された食品を持ち帰る「中食」など食事情の変化を受け、従来の物販に加え生鮮食品や加工食品を扱う冷凍・冷蔵倉庫のニーズも増加。物流各社や企業内物流で進む拠点の再編・集約も需要をけん引する。開発用地の高騰も目立ち、予定価格の5倍で落札された例もあるという。