積水化学工業はさらなる成長に向けた仕込みを加速する。2025年度までの新3カ年中期経営計画をこのほど策定。戦略投資の強化などで、総額6000億円を投資する計画を示した。設備投資や研究開発費の7割以上を高機能プラスチックス、メディカルの2領域と新事業に振り向け、キャッシュの配分にメリハリを付ける。同社は30年度に売上高2兆円(業容倍増)などを目指す長期ビジョンを示しており、実現に向けた基盤固めを進める。

25年度までに総額4500億円の戦略投資枠を設けた。うちM&A(合併・買収)などに3000億円、戦略的な設備投資に1500億円を充てる。通常投資を含む投資総額は6000億円と、20―22年度実績(1680億円)から大幅に引き上げる計画だ。研究開発費も20―22年度実績から24・3%増の総額1400億円に拡充する。

加藤敬太社長は新中計の3年間について「長期ビジョン実現に向け、非常に重要なセカンドステップになる」と語る。前中計期間では「売上高、純利益、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)が過去最高となるまでに力がついた」(加藤社長)と強調。一方で、コロナ禍の影響の長期化で構造改革を優先したことから、「成長投資は計画の一部にとどまった」(同)。今後は成長投資を積極化するほか、放熱材料や医薬品原料など前3カ年で投資した事業の利益貢献などが期待される。

部門別では、高機能プラスチックスが25年度の営業利益610億円(22年度は同400億円)、住宅が同400億円(同328億円)、環境・ライフラインが250億円(同211億円)、メディカルが同180億円(同125億円)を目指す。高機能プラスチックスが4セグメントの中で利益額、増益幅ともに最大となる計画だ。電気自動車(EV)化などによる放熱材料や高機能中間膜の事業拡大に加え、航空機関連の業績改善を見込んでいる。

メディカルは海外の検査事業を中心に成長を加速させ、医薬品開発・製造受託(CDMO)事業への本格参入も目指す。住宅は分譲・建て売り住宅の拡販に加え、ストック事業の強化などで市場環境が厳しい中でも利益の底上げを図る。環境・ライフラインは建築・プラント配管材、耐火材料の新製品拡販や合成枕木の海外展開などを加速させる。

また新たな事業基盤の確立を目指し、主要テーマを設定。ペロブスカイト太陽電池は25年度に事業規模5億円以上、可燃ゴミからエタノールを作るバイオリファイナリー技術は26年度以降の事業化を目指すとした。加藤社長は「前中計期間の取り組みを通じて事業化の可能性が高まってきた。この3年間で事業化までもっていければ、将来に向けた大きな足がかりになる」と期待を示した。