アルプスアルパインは電動車(xEV)向け電流センサーの生産を強化する。2026年までに開発費も含めて累計約15億円を投じ、生産能力を直近の2・5倍強に高める。電気自動車(EV)では燃費を向上させ航続距離を延長するため、部品の小型・高効率化が求められている。コイルを使用した一般的な電流センサーに比べ小型化が可能で、電流検出感度が10倍以上高いことを訴求し、大電流・低背化要求の高いタイプの電流センサーでシェア30%を目指す。

アルプスアルパインの電流センサーは、磁界の変化によって電気抵抗が大きく変わるGMR(巨大磁気抵抗効果)の素子を使用するタイプ。長岡工場(新潟県長岡市)で10―15層の多層薄膜を半導体と同様のプロセスで基板に形成してGMR素子を製造した後、涌谷工場(宮城県遠田郡)で導体(ブスバー)などと組み合わせ、センサーモジュールに仕上げる。

完成した電流センサーは自動車内部のパワー半導体(スイッチング)とモーター間の回路に搭載して使う。生産能力増強の詳細は今後詰めるが、涌谷工場に部品組み立て加工設備を増設する。

一般的な電流センサーは磁気を効率的に集め、安定した磁場をつくるためにコイルが必要で、xEVの大電流に対応するにはコイルも大きくする必要があった。一方、GMR素子を用いた電流センサーはコイルが不要。大電流に対応する際も周辺材を含めた体積を増やさずに済む上、発熱量も抑えられる。

GMR素子とバスバーの位置関係の設計を工夫するなどして、小型・軽量ながら2000アンペアまでの大電流を高精度で測れるようにした。同社の電流センサーは23年に複数のインバーターメーカーで採用された。市場の拡大が期待できるxEV向けに販売し、採用先を増やしたい考えだ。


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