住友重機械イオンテクノロジー(東京都品川区、月原光国社長)は、2025年にも炭化ケイ素(SiC)パワー半導体向けのイオン注入装置を市場に投入する。同半導体は電気自動車(EV)の普及に伴い、市場規模は30年に21年比で24倍の約3兆4000億円に急拡大する見通し。すでに増産が始まっており、競合他社はSiC向け同装置を投入している。同社は従来よりもスループット(時間当たりの処理能力)の高い製品を投入し競合を追撃する。

SICパワー半導体市場

住友重機械イオンテクノロジーは住友重機械工業の子会社。イオン注入装置はウエハーにリンやボロンなどの不純物イオンを打ち込み、電気特性を変化させる装置。シリコンウエハーの場合、イオン注入後に熱処理を行うことで、結晶性を回復する。

一方、SiCでは、イオン注入後の熱処理でも結晶性を回復するのが難しい。そこでウエハーを500度C程度に加熱した上でイオン注入を行い、熱処理を施す。そのためSiC半導体は、シリコン半導体に比べ、スループットが落ちる課題があった。

今回、住友重機械イオンテクノロジーが投入する製品はイオン注入の方法を工夫するなどし、SiC半導体の品質を維持しながら、従来よりもスループットを高める方針だ。

経済産業省の資料によると、SiCパワー半導体の30年の市場規模は21年の1400億円から膨らみ、3兆円の大台を突破する見通し。EV用途として、電力損失の少ない同半導体の搭載が増えるとみられる。

住友重機械イオンテクノロジーは相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサー向けで強みを持つ。22年には愛媛県に新工場を稼働させ、生産能力を強化している。


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