愛媛大学は地域社会の課題を解決する「ソーシャルイノベーター」育成のリカレントで年間延べ約600人もの受講者獲得に成功。大学院への進学者も年4人ほど輩出している。講師の大幅見直し、ウェブの積極活用、部分受講の推進などが成功の要因だ。合意形成法や政策形成演習などを取り入れた実践的な地方創生の人材育成だけに、全国の各地域から注目されそうだ。(編集委員・山本佳世子)

愛媛大学のリカレントプログラムは長短織り交ぜて10を超える品ぞろえだ。同大地域協働推進機構の杉森正敏機構長は「方向性として“全世代対応型教育の知の拠点”を打ち出している」と説明する。中でも2022年度の再構築を経て柱となっているのが、同機構の地域協働センター西条が主催している「地域創生イノベーター育成プログラム(東予)」だ。受講生はまず、持続可能な開発目標(SDGs)やレジリエンス(復元力)など社会の最新動向の講義を受ける。次いで産学民官連携などで必要となる合意形成手法を専門家から学ぶ。

さらに政策形成演習を経て、受講生それぞれが商品・サービス開発や施策立案で手がけたいことを発表する。全72時間の履修証明プログラムで修了は22年度に26人、23年度で10人。分野横断の大学院「地域レジリエンス学環」「医農融合公衆衛生学環」などへの進学者も確保する。

実は21年度までは土木や防災、植物工場など学内の教員・研究を中心とした講座だった。しかし対面で地元からの参加に限られ、同じテーマでは数年たつと受講生が急減していた。そこで思い切って講師の約半分を産学民官の若手・中堅人材に変更。ウェブ活用に重ねて部分受講を広げ、大きく改善した。

次の一手は学びを細分化し知識・スキルの習得証明をする「マイクロクレデンシャル」と、履修をデジタルで証明する「デジタルバッジ」の導入だ。24年度に試行し、25年度に本格開始する計画だ。