2021年10月、日本生活習慣病予防協会が40〜60代の男女3000人を対象に調査したところ、コロナ禍以前の2019年と比較して体重が増えた回答した人は、27.5%にものぼった。リモートワークや外出自粛を余儀なくされた毎日を送るなかで、体重が増えたと嘆いている人は少なくないだろう。

 しかし、体調の変化に関する項目で、体重の増加よりも回答者が多かった体の不調が存在する。「目が疲れやすくなった」と回答した人は28.8%にも達したという。

 2006年、都内に「眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック」を開設し、およそ16年間で9万人以上の患者を診察してきた眼科医の梶原一人氏もコロナ禍で在宅傾向が進むなか、「眼精疲労に悩んでいる方は増えている印象です」と指摘する。

◆眼精疲労になるリスクを減らす方法

 それでは、どうすれば眼精疲労になるリスクを減らすことができるのか。

「眼精疲労の原因のひとつとして、ドライアイが考えられます。ドライアイは目を守ってくれる涙の量が不足したりすると発生するので、パソコンで作業をするときは、モニターからできるだけ目を離して、上から画面を見下ろすようにするといいですよ。

 目とモニターの距離が近すぎると、集中してまばたきの回数が減ってしまい、涙が乾きやすくなってしまいます。また、画面を下から見上げるように見るのも、まぶたが開いて涙が乾く原因になるのでご注意ください。

 姿勢も大切で猫背だと首周りの血流が悪くなり、眼精疲労の原因になるので20分程度作業に集中したら、5m以上先を見るようにして目を休ませ、肩をストレッチするといいでしょう」

◆根治や回復が望めない緑内障

 目をつぶってまぶたの上から優しくマッサージをしたり、温かいおしぼりで目の周りの血流を促したりするのも効果的とのことだが、「眼精疲労が気になる方は、この機会に目の精密検査を受けてみたほうがいい」と梶原氏は語る。

「うちのクリニックには、検査をしてみると緑内障だったという患者さんが非常に多い。緑内障は視野が狭くなる病気で、自覚症状がほとんどないうえ、治療が遅れると失明に至るケースもあります。

 たとえ失明を免れても、緑内障で失われた視野は元には戻せません。根治や回復は望めず、今の医学では進行を予防することしかできないので、緑内障は早期に発見できることが何より大切です」

◆「高齢者の病気」のイメージは誤解

 日本人の失明原因の1位である緑内障は「高齢者の病気」というイメージも抱かれがちだが、実は「40歳以上の20人に1人は緑内障。総数は500万人にものぼると言われています」と梶原氏は警鐘を鳴らす。

「緑内障を発症する年齢は、個人差があるので一概には言えませんが、うちには20代で重症化して発見された方も珍しくありません。なかには9歳で緑内障が見つかった女児もいる。30代、40代で緑内障の検診を受けたことがない方は、必ず受けたほうがいいです」

 会社の人間ドックで目の異常がなかったからといって、安心するのは早計だ。梶原氏によると、「人間ドックで緑内障を見つけるのは非常に難しい」という。

「症状がある程度進行した緑内障は人間ドックの検査で引っかかると思いますが、初期の緑内障を見つけるのは困難です。そもそも緑内障の検査には、特別な機械が必要なうえ、視野検査までやるとなると時間もかかるので、オプションで検査しているところもほとんどありません」

◆眼科医が緑内障に気づかないケースも…

 緑内障を早期に発見するには、眼科での検査が必要になるのだが、梶原氏によると「眼科医が緑内障に気づかないケースもある」という。

「失明寸前まで自覚症状がほとんどない緑内障は患者さんだけではなく、眼科医にとってもとてもやっかいな病気です。

 患者さんの立ち場で眼科医の腕の善し悪しを判断するのは難しいかもしれませんが、説明がわかりにくかったり、検査結果に納得できなかったりしたときは、別の眼科で再検査してもらったほうがいいかもしれません。

 私のところに相談される方も検査結果や症状についてちゃんと説明してもらえないと不安を抱えて、受診されるというケースも多く、『眼科難民』と呼んでいます」

◆早期発見、早期治療が何より大切

 万が一、緑内障が見つかったときは、症状の進行を遅らせるために通院を続ける必要がある。

「特に男性に顕著なのですが、緑内障は自覚症状がないこともあって、仕事を理由に病院から足が遠のいてしまうケースも多い。せっかく早期に発見できても、治療を怠ったせいで緑内障が進行し、すぐに手術しても視覚障害者になってしまうほど重症の患者さんもいました。

 放置すればするほど治療が大変になりますし、失明するリスクも上がります。そうならないように、うちでは患者さんに正しい情報を伝えて、治療の必要性を理解していただき、希望を持って前向きに治療に取り組んでもらえるように全力で寄り添うようにしています」

 長引くコロナ禍で目を酷使していると自覚している人はもちろん、普段から目に優しい生活を意識している人も定期的な検査を欠かしてはいけない。目の異常に気づける絶好の好機だと心得たい。

【梶原一人氏】
1959年、東京都生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、眼科医に。1990年にハーバード大学に研究員として留学、世界的権威の科学雑誌『ネイチャー』『サイエンス』に研究結果が掲載される。1994年にスタンフォード大学・神経生物学教室にリサーチ・アソシエートとして移籍。1995年からは東京大学医科学研究所・科学研究部の客員研究員を兼任。日本人初のハワード・ヒューズ・メディカル・インスティテュート奨学生。2006年に「眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック」を開業。YouTubeチャンネル「100年生きる!眼科チャンネル」を更新中。著書に『ハーバード × スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』がある