7月7日はそうめんの日。「日本の夏の風物詩」ともいえるそうめんだが、「あれば食べる」「そこまでテンションがあがらない」という人も多いのではないだろうか。

 しかし、そんなそうめんに対し異常に愛をそそぎ、そしてこだわる男がいる。芸人・俳優のマキタスポーツ氏だ。なぜ彼はそこまでそうめんを愛し、そしてその食べ方について提唱しているのか。話を聞くと、人生を豊かにするコツまで見えてきた。

◆そうめんは“意識する”と味の解像度が上がる

 マキタスポーツ氏は、プチ鹿島氏、サンキュータツオ氏と共にパーソナリティーを務めるラジオ番組「東京ポッド許可局」で度々そうめんへの偏愛を口にしてきた。

「そもそもは、ラジオで(共にパーソナリティを務める)サンキュータツオが、そうめんのことを『意味が分からない』『母親が作るやっつけのごはんでテンションが上がらない』と発言したことがきっかけ。それまでそうめんは『普通に好き』くらいだったんだけど、彼に対してこんな食べ方もある、あんな食べ方もある、と話しているうちにふつふつと気持ちが湧き上がっていったんです」(マキタスポーツ氏、以下同)

 ラジオでは食についてのテーマが多く挙がるが、とくにそうめんに関する話題が白熱、ついには番組オリジナルそうめんを販売するまでに。なぜそこまでそうめん愛が強いのか。

「そうめんの魅力は、口をつけたら入っていっちゃうというか、栄養うんぬんとかを気にせず無意識に食べちゃう“雰囲気の食べ物”であるところ。だけど無意識で食べているところを、あえて“意識する”と美味しくなる。それぞれメーカーとかで味が違うし、歯ごたえや喉越しも違う。こだわればこだわるほど解像度が上がってくるのが楽しいんだよね」

◆薬味はまとめて作り置き

 そうめんの麺だけではなく、薬味にも強いこだわりがある。

「僕は『薬味セット』と呼んでいるのですが、万能ねぎ・大葉・かいわれ大根・みょうが・パクチー・三つ葉を刻んでタッパーに入れておく。そうめんって意外と作るのが大変なわりにあっという間に食べ終わっちゃうのが解せない。だからせめて薬味だけでもまとめて作っておこうよ、ということを提唱しているんです。5日くらい持つし他の料理にも使えるし、気がラクになるぞ、と」

 過去には「マキタスポーツ流紅白つけ汁」として紹介したそうめんのつけ汁レシピが斬新すぎると話題にもなった。

「キムチとトマトジュースの赤つけ汁と、韓国の粉末出汁『ダシダ』を使った白つけ汁はそうめんがさっぱりしたラーメンっぽくなるのでハマっていたんだけど、今年おすすめなのは担々そうめん。めんつゆとゴマだれとラー油を混ぜてつけ汁にする。ポン酢と柚子胡椒を入れたり、薬味に青唐辛子を加えたりするのも良い」

 そうめんのイメージを覆すようなつけ汁・薬味の提案も多いマキタスポーツ氏が、こうしたレシピのアイデアを思いつくのには食へのこだわりが起因している。日々食への熱意をブログにも書いている彼は、なんと「料理の残り汁を捨てることができない食癖」があるそうで……。

◆料理の残り汁は捨てることができない

「いまこうして話してる間も実は頭の中では、自宅の冷蔵庫にある妻の作った豚肉と大根の煮物の汁をどうしようか考えてるんです。僕は料理の残り汁は捨てることができなくて、薬味を入れて食べたり、ご飯にかけたりして食べるのが好きなんです。フローチャートみたいに組み立てて、残り汁をどう1日の〆に楽しむのか考えます」

 なかなか聞くことがない「食癖」だが、彼の妻も当たり前のように「この汁は取っておく?」と捨てずに冷蔵庫内に保管してくれるのだという。

「野菜炒めの残り汁を冷蔵庫に保管している」と初めて発言した際にはラジオ関係者にも驚かれたそう。周囲には理解されないことも多いが、本人は「別に大したことをするわけではなく、ごはんにかけたり、うどんの出汁の一部にしたりしているだけなんだけどね……インスタント麺も大好きなので、残り汁をベースでどうアレンジしようかと考えているのが楽しくて」と意に介さない。

◆満腹になると「想像する楽しさがなくなるから」絶望する

 こうした食に対するアイデアは「常に食について気にかけること」で生まれているという。特に食べることそのものよりも、食べることについて考えている瞬間が一番好きなのだそうで、最もこだわっているのは「空腹の境目」だと話す。

「『空腹になる瞬間』って捉えたことあります? お腹は気づいたら空いているものじゃないですか。だけどデスクワークとかして意識が自分に集中していると『今、空腹になった!』とわかる瞬間がある。その瞬間にくす玉が割れるみたいな感覚で。よし、次のごはんを食べることができるぞ! とテンションがあがるんですよ。逆に満腹な時は一番嫌いで絶望しているかもしれない(笑)。想像する楽しさがなくなっちゃうからね」

 マキタスポーツ氏は「毎回の食事を『一食入魂』で楽しんでいる瞬間が生きてるって感じがする」と持論を述べるが、振り切った姿には憧れすら感じる。“食”は人間の3大欲求のひとつだが、世間の常識にとらわれず、自分なりの「食への偏愛」があれば人生が豊かになるかもしれない。

<取材・文・撮影/松本果歩>

【松本果歩】
恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。Twitter:@KA_HO_MA