◆大河ドラマ『光る君へ』の主演に

 吉高由里子(34)が2024年1月からのNHK大河ドラマ『光る君へ』に紫式部で主演するのは知られている通り。一方で来年1月からはテレビ朝日の連続ドラマ『星降る夜に』に主演し、産婦人科医に扮する。

 昨秋に放送されたTBSの主演連ドラ『最愛』はこの9月に発表された民放連の2022年テレビドラマ最優秀賞に輝いた。「吉高無双」といっても良いくらいの状態である。

 女優としての吉高はどこが優れているのか。まず当然のことだが、演技がうまい。

 映画監督や演出家に「どんな役者がうまいと言えるのか」と尋ねると、大抵は同じ答えが返ってくる。答えは2通り。故・高倉健さんらのように「どんな役柄も自分の個性に引き付けてしまうタイプ」か、大竹しのぶ(65)たちのように「どんな役柄にも成りきってしまうタイプ」である。その両方の良さを併せ持つのが吉高だ。

◆多彩な役柄を演じきる個性

 好例は当たり役の1つになった2013年の『ガリレオ第2シーズン』(フジテレビ)でのヒロイン・岸谷美砂役。正義感に満ち、真っ直ぐである一方、プライドが高く、鼻につくところもあり、いかにも若手キャリアだった。吉高は成りきっていた。半面、人懐っこくて愛嬌もあり、憎めなかった。吉高の持つ個性と重なり合った。

 2014年度上期の連続テレビ小説『花子とアン』(NHK)の安東(村岡)はな役もそう。経済的問題や学業の壁などに直面する女性だったが、吉高が演じると悲壮感が漂わなかった。はなは親しみやすく、チャーミングだった。それでいて苦労や努力は感じさせた。リアリティはきちんと担保されていた。

『最愛』で演じた主人公・朝宮梨央は製薬会社を経営する実業家で、やや毛色が異なったが、それでも愛くるしい吉高の個性が反映されていた。役柄をグイッと自分に引き寄せていた。

◆18歳に出演したデビュー作で高評価

 吉高は1988年、東京生まれ。高1だった2004年、上野樹里(36)と同じ芸能関係者から東京・原宿でスカウトされた。

 約2年後、18歳だった2006年にデビューする。吹石一恵(39)が主演した映画『紀子の食卓』で、家出する女子高生役だった吹石の妹役だった。やがて吉高の演じる女子高生も家出する。そんな筋書きだった。

 映画の評判は高かった。吉高は同年度のヨコハマ映画祭最優秀新人賞を得た。多くは主演級の女優が受賞する賞である。確かに吉高の存在感が際立っていた。多感な時期の不安定な少女を写実的に演じた。

 デビュー前に児童劇団などに所属していた訳ではない。才能に恵まれていたのだろう。スポーツなどと同じく、演技の才能も生まれつきある人と乏しい人がいる。

◆『蛇にピアス』撮影前のアクシデント

 その後、まるでフィクションのような吉高の快進撃が始まる。2008年9月公開の映画『蛇にピアス』の主演のオーディションを受けた。監督は演劇界の巨匠だった故・蜷川幸雄さんで、原作は金原ひとみさん(39)による人気小説だから、女優にとっては魅力的な仕事にほかならない。

 映画は序盤からヌードシーンがあったので、吉高はオーディションの過程で蜷川さんに対し、こう尋ねた。

「私、胸小さいけど大丈夫ですか。見ますか?」

 そして胸を見せた。後から分かると迷惑が掛かると思ったらしい。当時19歳である。

 胸を見せたところが評価された訳ではないだろうが、吉高は合格。主演のルイ役を射止めた。ところが、好事魔多し。撮影前に交通事故に遭ってしまう。

 ICU(集中治療室)に入ったくらいだから、生半可なケガではなかった。ここで降板したって不思議ではない。誰も責められない。

 だが、吉高は違った。蜷川さんに選んでもらったことへの感謝の気持ちを深め、この撮影への全力投球を決心する。その熱意が実り、この作品で日本アカデミー賞の新人俳優賞を得た。メジャーな女優の仲間入りを果たす。

◆デビュー時から変わらぬ吉高像

 吉高はいつまでも少女のような1面を失わず、不思議と可愛らしい。それでいて根性がある。蜷川さんに胸を見せたこと、交通事故で発憤したことにもその性格は表れている。これも魅力につながっていると見る。ちょっとやそっとのことではへこたれないから、笑顔を失わない。表情に陰りがない。

 テンションも変わらない。吉高は2011年6月から早々とTwitterを始め、約340万人もフォロワーがいるが、つぶやきの文体やノリはずっと同じ。「営業用」の言葉とは思えない。こんな内容である(以下、原文ママ)。

■9月21日「やればやるほど迷子になる あ、これか!思った瞬間にはもう またどっかに行っちゃったりして…ひぃーわっかんないなぁーって 演劇の洗礼を受ける毎日です岩松さんワールド。。天才の頭の中はわからないよね」(筆者注・10月7日から東京・下北沢の本多劇場などで上演される岩松了さんの演出舞台『クランク・イン』に眞島秀和とダブル主演)

■8月31日「キーマカレー作ってるなうだけど よく考えたら お昼麻婆豆腐食べたよ 今日は ひき肉食べたい日だったのかなぁ 辛いのに吸い付きたい日なのかな」

 多くの人が抱く吉高のイメージから外れていないところが面白い。

◆オン・オフを使い分けない自然体の魅力

 バラエティ番組で素顔をさらけ出すような人ではないが、女性誌のインタビューではオフタイムの自分を語っている。やはり視聴者や観客が思い描く吉高像のままだ。

――ストレス解消法は?

「『鬼滅の刃』の禰豆子みたいに寝る。私は割とストレスに無自覚なのですが、時々、2日近く寝ていることがあって。無意識に自分を守るとか、回復しようとしているのかな、と最近思います」(NIKKEI WOMAN 2021年11月)

――買い物スタイルは?

「洋服すらコンビニ並みの速さ。選ぶのも速いし、店員さんが洋服を丁寧に包んでくれるのも待てないくらいせっかち(笑)。包んでもらっている間に別の店を回って買い物しています!」(同2020年11月号)

 吉高が2年後の大河で演じる紫式部が、平安中期の貴族で女流物語作者なのは知られている通り。学者で詩人の藤原為時の娘で、本人も学問に通じ、1000年の時を超えるベストセラー『源氏物語』や『紫式部日記』などを残した。

 一方で恋もした。お相手は太政大臣や摂政などを歴任した藤原道長(配役未定)。道長は『源氏物語』の主人公・光源氏とも言われている。

 紫式部は生年月日を含め、謎の部分も多い。その分、脚本を書く大石静さん(71)が想像を膨らませ、斬新な紫式部像をつくり上げてくれるはず。それを吉高がいつもどおり、自分に重ね合わせて演じてくれるに違いない。

<文/高堀冬彦>

【高堀冬彦】
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞東京本社での文化社会部記者、専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」での記者、編集次長などを経て2019年に独立