◆メンバー選考に向けた最後の強化試合

 11月20日に開幕する「FIFAワールドカップ カタール2022」に出場するサッカー日本代表は、11月1日に本大会に臨むメンバー発表を行う予定になっている。

 9月に行われたのが、メンバー発表前の最後となる親善試合で、23日のアメリカ戦は2−0で勝利、27日のエクアドル戦は0−0という結果に終わった。

 今回の試合はスコアよりも内容を重視すべき試合だ。メンバー選考に向けた最後の機会であると同時に、チームの連係を高める最後の強化試合でもあった。森保一監督は貪欲にその二兎を追い、二兎とも得たと言っていいはずだ。

 強化の面から振り返れば、アジア予選で定着した「4−3−3」のシステムではなく、それ以前の定番だった「4−2−3−1」を採用し、ある程度の手応えを感じる結果に。また、アメリカ戦では好調と思われる選手から起用したようで、そのスタメンが攻守において良い連動を見せ、それを選手らが確認し合えたことが収穫と言えるだろう。

 選考の面では、招集した多くの選手を出場させて現状を認識することができた。2戦目のエクアドル戦では、先発を総入れ替え。多くの選手にチャンスを与えつつ、さまざまな可能性を試していた。もちろん、思惑どおりうまくいった部分もあれば、決してそうならなかった部分もあっただろう。しかし、それらの良し悪しを本大会前に確認できたことは監督として十分な仕事をこなしている。

◆“調子の良さ”を優先した選手起用

 森保ジャパン発足以来の活動に加えて、今回の試合も含めた合宿の内容を見て、本大会に臨む26名を選ぶことになる。しかしながら、森保監督を大きく悩ませることになるほどのサプライズは起こらなかった。それでも、選手の序列が置き換わる結果は得られたことだろう。

 結論から言えば、やはり好調な選手を起用したほうが、良き結果を得られる可能性が高い。アメリカとエクアドルでは相手の戦術も違えば個々の能力も違うので単純比較することはできないが、内容、結果ともにアメリカ戦のほうが良かったのは明らかだ。その大きな要因は、所属クラブで好調を維持する選手から順に先発としてピッチに送り込んだことにある。守田英正、鎌田大地、久保建英らがその例に当たる。一方、不調と言われていた選手は、やはり内容、結果ともに良くないパフォーマンスだった。その代表例が南野拓実、田中碧、柴崎岳だった。

 日本代表の現状として言えることのひとつとして、先発に選ばれる11人の選手と控えの選手に大きな差はなく選手層は厚い。コンディションが80%の選手がスタメンとなっても、ベンチに控える選手より良いパフォーマンスを見せられることはない。それほど今の日本代表選手の実力は拮抗している。もちろん、起用選手によって細かい戦術は変更されるのが森保ジャパンなので、相手によって起用したいと思う選手はいるだろう。それでも今回の結果から考えると、細かい戦術を優先した選手起用より、好不調を見極めてより調子の良い選手を起用したほうが良い結果を得られるような気がする。

◆替えがきかない存在になった遠藤航

 好不調を見極めた選考を主張したばかりだが、調子の波が多少変化しても起用すべき絶対的な選手は存在する。それは遠藤航だ。アメリカ戦では先発、エクアドル戦では途中出場だったが、得意とするデュエルからのボール奪取は世界に誇れる日本のストロングポイントになる。アメリカ戦では前線との連動した守備からよりゴールに近い位置でボールを奪い、早く鋭いカウンター攻撃につなげていた。エクアドル戦では相手に押し込まれる状況のなかでの途中出場となったが、バタついた守備を安定させた。

 日本がグループリーグで対戦するドイツもスペインも、後方からショートパスでつなぎしっかりとビルドアップしてくるタイプで、どちらかと言えばアメリカに近いサッカーを展開してくる。それを踏まえると、アメリカ戦のような内容は日本にとっての理想となる。それ故に、何よりも遠藤航を中心に据えた戦術を考えて、試合に臨んでほしいと願う。

 遠藤航を中心に考えたとき、とあるFWの併用を推したい。それはアメリカ戦で先発した前田大然である。前田は持ち前のスピードを生かして、相手の最終ラインへ積極的にプレスをかけていた。そのプレスがスイッチとなり、日本の守備は全体的に連動して効果的な位置でのボール奪取に成功していた。また、前田はプレスバックも惜しまなかった。自身の守備ラインを越えて中盤のブロックラインでの守備時でも、ボール保持者の背後から距離を縮め後方から追い詰めて挟み込みボール奪取に貢献していた。前田以外のFWは相手が脅威に感じるほどのプレスは見られなかったし、相手にかわされる場面もあったりでパスコースを限定しきれていない場面が見られた。

◆実績や貢献度に忖度しないメンバー選びを

 トップの選手としては、ボール奪取後にパスの受け手としての役割を求められる。しかし、その役割は伊東純也、鎌田大地、久保建英らが請け負える。しかも、遠藤航がいることで最終ラインではなく中盤でボールを奪えるので、トップよりも低い位置にいる彼らはよりゴールに近い位置でボールを受けられる。そこから逆算すると、トップになる選手の守備負担は大きくなってもチームとしては問題ないだろう。

 さらに、そのままスピードを失うことなくフィニッシュに向かうためには、後方に下がってゲームを組み立てる田中碧より、積極的にゴール前に飛び込んでいける守田のほうが得点への可能性は高まる。

 遠藤航を軸とする戦術はあくまでも一例だが、森保監督はそういったさまざまなことを想定して、今もなお頭を悩ませていることだろう。巧者である相手が理想どおりにゲームを展開させてくれるわけではない。試合中にでもこちらの出方によってやり方を変えられる。多くの状況を考えて一手先、二手先を取って相手を上回ることのできる戦術を試行錯誤しなければならない。

 また、例年どおりではなく欧州のシーズン中に行われる過密日程のなかでは、先発の11人だけでは勝ち抜けない。増枠された5人の交代を上手に利用しなければならないことを考えると、選出された26人全員がスタメンを張れるだけの力が必要で、全員の力を使い切らなければ結果は残せないだろう。

 よって、思い出枠は絶対に排除してほしいと願うばかりだ。記録がかかっているとか、年齢的に最後の大会になるだろうとか、これまで貢献してくれたとか、そういった温情はいらない。11月1日には、完全実力主義で現状のコンディションを最優先した26名の選手名が聞けることを切に願う。

<文/川原宏樹 撮影/Norio Rokukawa>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる