今年8月、俳優の香川照之が銀座の高級クラブでホステスの下着をはぎとるなど性加害に及んだことが報じられ、ドラマ、CMからの降板が相次ぐ事態に。件のホステスは暴走を止められなかったという理由で、店のママを民事で訴えていたという。

 香川照之の「銀座セクハラ騒動」は、発覚から1か月以上が経過した今も多くの憶測を呼んでいるが、銀座村ではどう見られているのか。銀座で働くオーナーママ3人と夜の街事情に明るい有識者1人を緊急招集した。

◆チーママとオーナーママの意識の差

──まず、事件に対する率直な感想をお聞かせください。

河西泉緒(以下、河西):今回の件は、お店の管理体制やママ側の対応にも問題があったのではないかと感じました。舞台となったお店のママは「チーママ」らしいんですよね。一般の方にはピンと来ないかもしれませんが、チーママと「オーナーママ」では意識に差があるんです。

望月明美(以下、望月):チーママとは、言い換えると「雇われママ」。自分の席を盛り上げることが仕事であって、店全体を管轄しているわけじゃない。

白坂亜紀(以下、白坂):何か問題が起こったとき、まず女のコを大事にします。そこは基本姿勢としてブレてはいけないんですよ。

河西泉緒(以下、河西):通常、こうした場合はママが席を外していたとしても「こんなトラブルが起きています! 今すぐ香川さんの席に戻ってください」と報告が入るものです。その連絡が機能していなかった可能性は高いですよね。

◆「実は楽しく盛り上がっていた」という説も

望月:でも、香川さんが行った店というのは男性スタッフが多いことで有名なんです。だから謎として残るのは、「なぜスタッフが注意しなかったの?」という点。

河西:そこで可能性として浮かび上がってくるのは、「実は楽しく盛り上がっていたんじゃないか?」という仮説。有名人だろうがなんだろうが、女のコが「やめてください!」と騒いでいたら、さすがに周りも止めますよ。

甲賀香織(以下、甲賀):普通に考えたら、女性のブラを外すってかなり手間取る行為ですからね。相手の協力がないと現実的には難しいと思うんです。

望月:実は香川さんは例の事件のあとも何度かそのお店に顔を出し、楽しく飲んでいたそうなんです。本当にトラブルが起きていたら、そんなことってありますか? 普通は出禁になりますよ。

◆銀座ならセクハラはOKという声に対して

──それが事実なら、物語のトーンは変わってきますね。

河西:うちのお店でも、過去にお客様がホステスに暴力トラブルを起こしたことがありました。女のコには「申し訳ない。もう彼は出禁にするので許してほしい」と私が頭を下げ、封筒にお札を入れて渡しました。そのコは「ママがそこまで言うなら……」と気を取り直してくれたんですけど。本来ママというのは誠心誠意、向き合わなくちゃいけない。そういった信頼関係が香川さんの行ったお店で構築できていたのか、そこは論点にはなると思います。

──今「銀座は高い給料をもらえるのだから、ブラジャーを取られるくらい当たり前」という声もあります。

河西:とんでもない話です。性風俗のお仕事じゃないんですから。

望月:銀座での職場環境って、世の中が想像している以上にホワイトだと思うんです。あるお店で働くのが嫌になったら、すぐに辞めて他のお店に移ることができる。そうしたら、その日からすぐお給料だって出ますしね。「嫌だったら辞めればいい」というのが考え方の基本にあるから、わざわざ苦しい思いまでして働き続ける必要はないんです。だからこそ、ホステスとママの裁判沙汰というところに違和感が残るんですけど……。

白坂:そもそも、触ったらモテないですから。“痛客”扱いされて終わりです。

甲賀:もちろん、銀座のホステスさんの中には「軽いセクハラもOK」って考えの人もいるでしょう。ただ、営業の一環で能動的にやるケースで、強制されてニコニコしている人なんていません。

◆遊びの範疇なら許容されるが…

──銀座にも、色恋営業自体はあるんですか。

望月:もちろんいますよ。銀座から色恋を取って何が残るんですか(笑)。

白坂:過去にとんでもない判決が裁判所で出たんですよ。まず男性客の奥さんがホステスを相手に不貞行為だと訴えまして。普通だったらそこでホステスが慰謝料を支払うかたちで納まるはずなのに、裁判官は「支払わなくていい」と判断したんですね。つまりエッチもホステスとしての営業行為の一環だという結論を出したんです。

望月:ひと昔前の銀座では、「某大物代議士の愛人」ってホステスで溢れてました。

河西:銀座はあくまで楽しくお酒を飲む街。セクハラにしろ色恋にしろ、楽しい遊びの範疇なら、許容される懐の深さはあります。

白坂:今回の件について銀座を知っている人ほど「表沙汰になることはありえない」と口を揃えます。銀座のルールを逸脱した何かが起こってしまったことは間違いないでしょうね。

 功成り名を遂げた男たちが、己のステイタスを確認するための街、それが銀座──倉科遼原作の『女帝』で再三使われるフレーズだが、それは酒席での所作も加味したうえでの言葉であることに相違はない。“香川騒動”の詳細については、いまだ不明な点は多いが、どれほどの地位や名声を誇っていても、お店や働く女性への配慮の欠落がトラブルの元となるのは、銀座に限らず、どの街でも変わりはないのだ。
  
<取材・文/小野田 衛 撮影/渡辺秀之>