多くの企業が業績悪化に苦しむなか、日本の「中流」と呼ばれた人たちの年収は未曽有のペースで減り続けている。さらにウクライナ問題や円安による物価高も重なり、生活を圧迫された人も少なくない。いまや全国民に襲いかかる年収100万円減の現実。多くの“沈みゆく中流”が直面する生活破綻のリアルを当事者たちの声とともに追った!

◆年収160万円減でマイホームを手放すことに

「5歳の息子と思いきり遊べるよう、広いリビングにこだわってこの家を選んだんです。『パパ、サッカーできるよ!』って目を輝かせた息子の言葉が嬉しくて、ようやく一人前の父親になれたようで誇らしかった。でも、今年6月に全社員給与10%カット、残業代・ボーナスなしを言い渡されまして……。この家も年明けに任意売却するんです」

子供用のサッカーボールが転がった18畳のリビングの一角。うなだれる吉岡宗孝さん(仮名・42歳)が東京都府中市で手にした5400万円のマイホームでの生活は、住宅ローン返済破綻により1年で終焉を迎えることになった。

「アパレルメーカーで営業職をやっています。コロナ流行直後から外出自粛のあおりで服が売れなくなっていましたが、昨年までなんとか年収550万円をキープ。しかし今年は記録的な円安によって繊維の輸入コストが急激に増大。販売価格への転嫁もままならないまま業績は悪化し、そのせいで今年の年収は390万円にまで下がる見込みです」

◆妻の産休も重なり世帯年収は260万円減

昨年9月、頭金500万円を支払い、住宅ローンで4800万円を賄い府中市に一戸建てを購入。月々の支払額は12万5000円だが「フルタイムの契約社員で働く妻の年収300万円も加味すれば、なんとか返せる額」だった。

しかし、昨年12月に妻の第2子妊娠が判明。9月から産休に入ったことで妻の収入は3分の2となり、世帯年収は一気に260万円も下がった。

「月の世帯手取りは10万円減少。頭金を払った直後で貯蓄は微々たるもの。住宅ローンの返済が2か月滞ったときに『僕らがもうこの家に住むのは無理なんだ』と認めざるを得なかった。自分が情けなくて、家族に申し訳なくて、夜中にこのリビングでひとり涙を流しました」

◆加速度を増して減少する年収

日本の’21年の世帯所得の中央値は440万円。’96年の550万円と比較すると、110万円も減少している。労働経済ジャーナリストの小林美希氏は「すでに日本は、平均的な年収では“そこそこの生活”さえできない国になっている」と断言する。

「そうした状況に、歴史的な物価高や水道光熱費の値上げ、増税や社会保険料の引き上げまでもが重なり多くの日本人の家計が加速度を増して逼迫され続けています。平均年収どころか、都心部では世帯年収が1000万円あっても生活はギリギリ。中間層の大多数が、生活破綻への不安や苦しさを抱えたまま家計を切り詰めているのが実情です」

冒頭の吉岡さんのようにコロナ禍や歴史的円安の影響まで重なり、年収が100万円単位で減少するケースも増加している。今回、全国の男女30〜64歳6000人にアンケートを実施したが「最近、家計が苦しくなった」と回答した人は75.1%と実に4分の3もの人が家計の逼迫を感じているという結果が出た。

◆Q1.最近、家計が苦しくなった

はい……75.1%
いいえ……24.9%

「家計が苦しくなった要因」として上位に挙がったのは「物価の上昇(90.51%)」「収入減少・横ばい(69.1%)」「税負担・社会保障費増(33.63%)」と、小林氏が指摘する問題点が浮き彫りに。日本の中間層は、もはや全員が家計崩壊予備軍となっているのだ。

◆Q2.家計が苦しくなった原因(複数回答可)

物価の上昇……90.51%
自身の収入減少・横ばい……69.1%
パートナーの収入減少・横ばい……59.1%
税負担・社会保障費増……33.63%
教育費・介護費増……14.8%
失業……4.96%

◆Q3.講じている対策(複数回答可)

家計の節約……73.88%
何もできていない……17.48%
副業……10.81%
借金……10.07%
本業をより頑張る……8.02%
ローンの見直し……3.31%

※全国の男女30〜64歳6000人にアンケート。調査期間:2022年11月11日〜20日

【労働経済ジャーナリスト・小林美希氏】
『週刊エコノミスト』編集部を経て’07年よりジャーナリストに。最新刊『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』が発売中

取材・文/週刊SPA!編集部
※12/6発売の週刊SPA!特集「[年収100万円減]社会の衝撃」より

―[[年収100万円減]社会の衝撃]―