―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆ポルシェ謹製か? 中国製か?

「EVって、どれに乗っても航続距離とか乗り心地とか大差ねえべ!」みたいに思っている人、その認識はもう古いですよ! BMWi7のような高級車はもちろん中国最大手まで、気づけば日本にもいろんなEVが進出中。かつては金太郎飴みたいだったEVにも個性が出てきたのです。こうした流れは、古典的カーマニアも無視できません!

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信(流し撮り職人)=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

◆輸入車のEV比率は日本でも10%超え!! 両極の2台に乗ってみた!

永福:EVは我々古典的カーマニア最大の敵だけど、ついに日本でも売れ行きが伸び始めたよ!

担当K:確かEVの販売比率って1%ぐらいでしたよね?

永福:2022年は急激に伸びて2%ぐらい。なかでも輸入車の伸びがすごい。軽く10%を超えてきた!

担当K:そんなにですか!

永福:輸入車に限れば、EVの販売比率は、ヨーロッパと大差なくなってるんだよ!

担当K:でもなんか、魅力的なEVって少ない気がするんですけど……。

永福:国産・輸入を問わず、EVのスタンダードは、航続距離400㎞ぐらいのSUVタイプで、値段は500万円強。どれもこれも似た感じで、乗ってもあんまり違いがわからないよね。

◆EVのポルシェは…

担当K:その点、ポルシェはさすがです。タイカンターボに初めて乗りましたけど、ドライバーをその気にさせる感じがほかと違いました。

永福:ほかのEVは「EVの仲間」だけど、タイカンはEVなのに「ポルシェの仲間」なんだよね。

担当K:そうです! タイカンはEVというより、完全にポルシェでした!

◆値段は?

永福:ただ、電気をいっぱい食うから、バッテリーがデカいわりに航続距離は300㎞台と短くて、値段は今回乗ったタイカンターボ・クロスツーリズモで2105万円。猛烈に割高だよ。

担当K:いいんですよ! ポルシェの値段が高いのは当然ですから!

永福:ま、そうだね。

担当K:ほかのEVはスマホで聴く音楽ですけど、タイカンは目の前でアーティストがライブしている感じでした!

永福:ライブなんだから高くて当然ってことだね! 逆に輸入EVの最安が、BYDのATTO 3だ。

◆中国製EVの値段は…

担当K:話題の中国製EVですね。

永福:ついに中華製がクルマに進出! 航続距離は日産アリアとほぼ同じで、値段は440万円と発表された。100万円くらい割安だ。

◆走りの質感は?

担当K:乗ってビックリ。中国製EVは侮れませんね。

永福:見た目はちょっとオモチャっぽいけど、走りの質感はほぼ変わらないよ。

担当K:乗り心地はしっとりしてるし、内装はむしろATTO 3が勝ってますよ! 特にドアの内側にギターみたいにゴムの弦がついてるのが楽しくて、ずっと弾いちゃってました。

永福:もうちょっと安けりゃよかったんだけど、EVの値段ってバッテリー容量でだいたい決まっちゃうから、今のところ、値段を安くするには、航続距離を割り切るしかない。

◆航続距離を割り切ったEV

担当K:それが今2022年のカー・オブ・ザ・イヤーを獲った日産サクラ/三菱eKクロスEVなわけですね。

永福:激安EVの本家は、中国を席捲した45万円(現在は65万円)の宏光MINI EVでしょ。日本導入も計画されている。

担当K:そこまで安ければウチも一台欲しいですよ!

永福:日本に入れたら100万円は超えるだろうな。

担当K:激安じゃないなら、いらないです!

◆【結論!】

輸入車ユーザーは、世の中の先端に立ちたいという意識が強いため、損得抜きでEV志向を強めている。ただ、今のところEVは、頂点か激安か、極端なほうが魅力的だ。

◆▼EVでもその気にさせるタイカンは、ちゃんとポルシェ一族でした!

タイカンターボ・クロスツーリズモのバッテリー容量は93kWh、航続距離383〜452㎞(WLTCモード)。最高出力680馬力で最高速度は時速250㎞を誇る。最強のタイカンターボS(2507万円)なら、最高出力761馬力で最高速度は時速260㎞!

◆▼B.V.D.じゃないよ!テスラに次ぐEVメーカー、BYDのATTO 3だよ!

中国最大手のEVメーカー・BYDは、テスラに次いでEV世界第2位の販売台数を誇る。ATTO 3のバッテリー容量は59kWh、航続距離485㎞(WLTCモード)。サイズはホンダのヴェゼルぐらい。440万円で2023年1月31日より、全国22か所のディーラーで販売開始。

【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―