2022年、日刊SPA!で反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。今回は該当ジャンルが無くトップ10で紹介できなかったが、実は大反響だった記事を紹介する!(集計期間は2022年1月〜11月まで。初公開日2022年10月2日 記事は取材時の状況)
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 現役東大生の布施川天馬と申します。学生生活の傍ら、ライターとして受験に関する情報発信などをしています。

◆「地頭がいい人」にはどうしたらなれるのか?

 皆さんは「地頭がいい人」というと、どんな人を思い浮かべるでしょうか? 僕の考える「地頭がいい人」は、知識がたくさんある人というよりも頭の回転が速くて、瞬時にいろいろなことに結論を出せる人という感じです。

 このあたりは人によってそれぞれ理想となる「地頭がいい人」像はあると思いますが、どちらかというと、知識よりも頭の回転が速い人というイメージのほうが強いのではないでしょうか。たとえば、IQが高い人などはこれに当てはまるでしょう。

 そういった人たちは、やっぱりとてもかっこよく見えるものです。どうにかして自分も「地頭がいい人」の仲間入りをしたいと思いますが、なかなかうまくはいきません。なぜなら「地頭をよくするためのトレーニング方法」がわからないからです。

◆思考力を鍛えるための超効果的なトレーニング

 では、逆に考えてみましょう。「地頭がよくない人」とはどういう人でしょうか? 「地頭がいい人」を頭の回転が速い人とするなら、その逆はきっと頭の回転が鈍い人となるでしょう。つまり、考えることに慣れていない、下手な人というわけです。

 もしこれが正しければ、考えることに慣れて、思考力をつけることができれば、自分の元々の能力に関係なく、地頭がいい人のふりをすることができると思いませんか? 結局、周りから「頭の回転が速い人」のように見られていればいいのですから。

 それでは、考える訓練とはいったいどのようなトレーニングなのでしょうか? 実は落ちこぼれたちが東大合格を目指すマンガ『ドラゴン桜』の中で、思考力を鍛えるための超効果的なトレーニングが紹介されているんです!

 水野直美と矢島勇介は、東大合格を目指す東大クラスに所属しているたった2人の生徒。ある日、彼らの前に国語担当の教師が現れます。彼は、着物に身を包んだ古風な格好をしており、名を芥山龍三郎といいました。

 水野と矢島がその風貌に困惑していると、芥山は「国語の授業を外で行う」と言い出し、生徒を連れて街へ繰り出してしまいます。彼曰く「そうすれば文章の正しい読み方がわかる」というのです。

◆思考力を上げるためのヒントは街中に溢れている

「こんなところに文章の正しい読み方のコツなんてあるのかよ」とこぼす矢島に対して、芥山は「さまざまなところにヒントは隠れている」として、標識を指し示します。

 いったいそこから何がわかるのか。2人の生徒たちが困惑していると、芥山は彼らを連れて駅を訪れ、そこでひとつ問題を出題しました。「この案内板には、日本語のほかに英語や韓国語、中国語なども併記されているが、それはいったいなぜか?」という問いです。

 最初は真面目に答えていく矢島でしたが、何を言っても芥山は「なぜ?」「どうして?」と返します。そうしてついに彼も業を煮やして、「どうでもいいでしょ!」と考えることを放棄してしまいました。

◆身の回りのさまざまなことにはすべて理由がある

 ここに芥山の厳しい一言が突き刺さります。「矢島くん。だからあなたはバカなのだ!」と言い放ったのです。

 もちろん、自分の質問に答えてくれなくて、へそを曲げたのではありません。身の回りのさまざまなことには、さりげないように見えてもすべて理由があります。

 そして、その理由を「なぜ案内表示には日本語以外も書いてあるんだろう?」「どうして全世界数千の言語の中から英語と中国語、韓国語の3か国の言葉が選ばれているんだろう?」と考えることこそが、地頭を鍛えることにつながるのです。

◆すべてについて「正しい答え」が見つからなくてもいい

 僕自身もこうした経験はあります。ささやかな疑問ではありましたが、散歩中や下校中などに「どうしてこのテナントは入れ替わりが激しいのだろう?」「どうしてこのお店は昼間に全然人が入っていないように見えるのに、数十年も店を構えていられるのだろう?」と考えることはありました。

 もちろん、すべてについて「正しい答え」が見つかったわけではありません。しかし、こうして考えること自体が頭の体操にもなりますし、何かについて考えるときにためらう気持ちを取り除いてくれます。

 何かについて考えることは、最初はひどく面倒に思えますが、往々にして、考えなかった場合よりもずっといい結果をもたらしてくれます。

◆答えを追求しようとする運動こそが思考力をはぐくむ

 考えることに慣れていない矢島くんには、確かにちょっと難しい問題ではありました。しかし、考える習慣をつけるのに「遅い」「早い」「難しい」「簡単」なんてありません。

 身の回りに潜んでいる疑問の種を見つけだし、できる範囲の中で、その答えを追求しようとする運動こそが思考力をはぐくむのであり、「正しい読み方」「正しい推測の仕方」につながっていくのです。

 これを伝えたかったからこそ、芥山は敢えて厳しく「バカ」という言葉を使ったのでしょう。思考力をつけるためのスパルタ式の特訓法でしたね。

◆「なんでだろう?」と考える癖をつける

 もしも、この記事をお読みの方の中に、本気で「地頭がいい人になりたい!」と思っている方がいらっしゃるのなら、同じトレーニングをおすすめします。つまり、明日からさまざまなことについて「なんでだろう?」と考える癖をつけるようにしてみてください。

 とはいえ、最初のうちは、あまり疑問も見つけにくいでしょう。慣れ親しんだものから疑問を抽出するのは大変です。

 そうした方には、いつもと違うことをするのがおすすめ。つまり、通勤・通学ルートをちょっと変えてみるとか、歩くときにスマホをカバンにしまって、少し目線を高くして歩いてみるとか、それくらいの工夫をしてみるのです。

「何が変わるのか」と思われるかもしれませんが、たったこれだけでも思っている以上に「いつもと違う街の景色」が目に入ります。

 そこから、「なぜ?」「どうして?」が始まるかもしれませんよ! この記事が皆様の生活の助けになれば幸いです。

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Twitterアカウント:@Temma_Fusegawa)