YoutubeやSNSで自身の窮状を発信し、視聴者やファンからの救援物資で生活をするホームレスが増えている。中にはスター扱いされている人物もいるほど。なぜ今、彼らが脚光を浴び、支援を受けているのか? その実態に迫ってみた。
◆ネットカフェに寝泊まりする40代フリーター

路上の段ボールハウスに住み、早朝に空き缶や資源ごみを集めて小銭を稼ぐ―そんなホームレスのイメージは、ひと昔前の話なのか。最近は、動画配信やSNS発信によって、そこそこ不自由のない生活を送るホームレスが増えている。

汚部屋在住で働かない「底男1号」と3つの仕事をかけ持ちする働き者「底男2号」が、底辺で生きながら体を張った企画を繰り広げるYouTubeチャンネル「底チャンネル」が人気だ。

この底男2号氏(40歳)は昨年秋、新しいアパートに引っ越す際、入居直前で断られたことからホームレスになった。

「40代フリーターですからね。大家さんも不安だったんでしょう。現在はネットカフェに寝泊まりしていますが、この生活のほうが性に合っていると感じています」

◆お金や家はなくとも物心ともに不自由なし!?

月〜金曜は掃除の仕事とカラオケボックスの夜勤、土日はうどん屋で働き、水曜と日曜に動画撮影を行っているが、部屋を借りるほどのカネはもうない。

生配信中のスパチャ(スーパーチャット=YouTubeの投げ銭)を含む動画の収益も、撮影者を含むメンバー3人で割ったうえに撮影経費もストックするため、一人あたり月2万〜3万円程度。しかし生活には困らないと言う。

「視聴者さんの中に数人、裕福な方がいて。毎週のように底男1号宅にプレゼントが届くんです。下着や洋服だけでなくカメラ機材やiPad、お米やお酒、高級肉やフグをいただいたり、旅行にも連れていってもらいました」

しかしいいことばかりではない。いわゆるアンチが、底男2号氏の荷物置き場だったレンタル倉庫に「寝泊まりしている」と通報し、契約を解除されてしまったこともある。

「そんなツラいことも動画のネタになると思えば笑い飛ばせます。ホームレス生活を楽しめるのも配信のおかげ、視聴者さんのおかげだと思っています」

【底チャンネル】
底辺で生きているおじさん2人が体を張って実験したり、ケンカしたりするドキュメンタリー。’19年11月から開始。テーマは「視聴者が自分より底辺で生きている人をみて安心する」こと。チャンネル登録者数8490人(2023年3月現在)。最近、新メンバーが加入

◆ホームレス配信者に支援する人の本音とは

動画配信しているホームレスたちには、それぞれに「支援者」とも言うべきコアなファンがいるようだ。経済事情を聞くと、動画の収益よりも物資の支援で生活が潤っている感がある。

そんな支援者の一人が、九州在住の会社経営者A氏。YouTubeにはもともと興味などなかったが、仕事の合間にチラッと見たところ、たまたま目にしたのが「底チャンネル」だった。今から2年ほど前のことだ。

「鼻からお酢を飲むとかバカみたいなことをやっていて面白いなあと思いましたが、しばらくは単なる視聴者でした」

◆昨年はとうとう旅行までプレゼント

その後、ライブ配信でコメントの書き込みやスパチャのシステムを知り、試みるようになった。

「海外では路上パフォーマーにチップをあげますよね。私の中ではスパチャはそれとまったく同じ感覚です」

動画を視聴しているうちにファンというよりは身内に近い感情を抱くようになったというA氏。今では、自分が食べておいしいと思ったお菓子や食料を送ったり、昨年はとうとう旅行までプレゼントしてしまった。

「自分より底辺のホームレスの人に恵んでいるという気持ちは一切ありません。むしろ一緒に遊んでもらってうれしいのはこちらですから」

チャンネルの成功を、一緒に見届けたい……A氏はそんな思いで「底チャンネル」を見守っているようだ。

取材・文・撮影/和場まさみ 安宿 緑 片岡あけの(清談社)

―[[ホームレス配信者]の肖像]―