◆昨秋から続々と若手ジョッキーが初タイトルを獲得
猛暑日が続いた夏もようやく終わりを告げ、いよいよ競馬は秋G1戦線の足音が聞こえてくる時期になりました。リバティアイランドの牝馬3冠なるか、世界ナンバーワンホース・イクイノックスの連勝はどこまで続くのか、スルーセブンシーズの凱旋門賞挑戦など注目トピックは盛りだくさんですが、今回は「ジョッキー」に視点を向けてみたいと思います。
というのも、昨年秋以降のG1戦線では、「G1初制覇」がトレンドになっています。といっても、馬ではなく騎手。昨秋のスプリンターズSをジャンダルムで制した荻野極騎手に始まり、秋華賞を制した坂井瑠星騎手、チャンピオンズCを制した石川裕紀人騎手、そして今年に入ってからも高松宮記念を制した団野大成騎手などなど、若き初G1ジョッキーが数多く誕生しています。
今年の夏競馬では佐々木大輔騎手が函館リーディングを獲得するなど、依然として若い力の台頭が著しい昨今のジョッキー界。果たして、次の「初G1ジョッキー」は誰なのかを占うとともに、各騎手の狙いどころもお伝えしたいと思います。
◆ネクストG1ジョッキー筆頭候補・鮫島克駿騎手
まず筆頭候補に挙げられるのは、恐らく鮫島駿騎手ではないでしょうか。今やすっかり重賞の常連で、今年の春には重賞騎乗機会6連続馬券圏内を達成。桜花賞ではコナコーストに騎乗しあと一歩の2着と健闘を見せたほか、ジャスティンパレスとのコンビでは菊花賞3着、宝塚記念3着ともうひと息のところまで来ています。
もっとも、そのジャスティンパレスはルメール騎手とのコンビで天皇賞(春)制覇という悔しさも味わいました。他にもトウシンマカオやプロミストウォリアといったお手馬もいるので、秋は大舞台でチャンスをモノにできるか注目です。クレバーな騎乗が持ち味で、特に芝の中距離以上では特注のジョッキーです。
◆カラテで名を上げた関東期待のネクストG1候補・菅原明良騎手
続いて関東から、菅原明騎手にも注目です。2021年にカラテとのコンビで重賞初制覇を成し遂げた菅原明騎手。同馬とのコンビではその後も重賞を勝つなど、年々大一番での活躍が目立つようになっており、今年は既に重賞を3勝。G1戦線でも名前を見る機会が増えています。
菅原明騎手の魅力はその腕っぷしの強さ。若手屈指の「追える」ジョッキーで、昨年のNHKマイルカップでは最低人気のカワキタレブリーをグイグイ追って3着に持ってくるなど、大一番でも一発の魅力があります。引き続き健在のカラテ、今年重賞を制しているゴールデンハインドなどのお手馬もいますし、思わぬ穴馬での一撃があるかもしれません。
◆ドゥーラとのコンビで注目度UP! 雑草のエリート・斎藤新騎手
勢いという点で見逃せないのは、今年の春、オークス3着と健闘したドゥーラとのコンビで注目度を上げた斎藤新騎手です。斎藤新騎手の父は昨年の関東リーディング調教師である斎藤誠師。中学1年時に東京競馬場で行われた第5回ジョッキーベイビーズを制した、いわば競馬界のサラブレッドですが、そんな父が開業する関東ではなく、あえて父のもとを離れ関西でデビューしたという経歴の持ち主です。
端正な顔立ちから女性ファンも多いジョッキーですが、もちろん本業の実力も折り紙付き。デビュー年に42勝を挙げたほか、ドゥーラとのコンビではオークス3着のあとクイーンSを制するなど、打倒リバティアイランドの候補として注目を集めています。
すでに同期の団野騎手は今年の春にG1制覇。同じく初G1制覇に期待が懸かる岩田望来騎手や、前述の菅原明騎手も同期にあたるため、負けられないところでしょう。
◆今夏の重賞で大暴れ! 西村淳也騎手
今年の夏の重賞戦線で大暴れした西村淳騎手も注目でしょう。6月にビッグリボンとのコンビでマーメイドS制覇を果たすと、2週間後のラジオNIKKEI賞もエルトンバローズとのコンビで勝利。
さらにアイビスサマーダッシュ、小倉記念といった重賞でも穴をあけ存在感を示しました。今年は好調で、9月1週目終了時点で55勝とキャリアハイのペースで勝ち星を積み重ねています。
西村淳騎手の強みは、馬場読み力の高さです。若手騎手の中でも特に馬場の伸びどころを把握するのが上手で、その戦略力の高さが結果にも表れています。有力なお手馬も増えて来ており、そろそろG1にも手が届くかもしれません。
◆もはやベテランの域に達しつつある三浦皇成騎手!
最後に、若手ではないですが、G1初制覇に期待が懸かるあのジョッキーにも注目です。かつてゴールデンルーキーとして武豊騎手の記録を更新し、今年は通算1000勝も達成した、三浦皇成騎手です。
三浦騎手が未だにJRA・G1を勝っていないのは競馬界の七不思議といってもいいくらいですが、チャンスは近いところにありです。今年はフェブラリーSに出てくれば注目を集めたであろうギルデッドミラーというお手馬がいましたが、残念ながら直前回避→引退の憂き目に。運の歯車が少し噛み合えば…という状況でしょうか。
三浦騎手といえば、やはりスタートの上手さや腕っぷしの強さが魅力。特に芝のマイル以下やダートで強さを発揮するので、この秋も短距離路線やダート、あとはチャンスがあるとすれば2歳G1ではないでしょうか? 悲願のG1という意味ではもっともその言葉が似合う存在です。
というわけで、今回は5人のネクストG1候補の騎手を取り上げました。今のジョッキー界はいわゆる「デムルメ」(デムーロ騎手&ルメール騎手)が席巻した時代を経て、群雄割拠の状態。ルメール騎手もかつてほどの勢いはなくなっている上に、福永騎手は今年の春に引退し調教師へ転身。結果として新興勢力が台頭しやすい状況になっています。
是非、各若手騎手の狙いどころとともに、この秋の動向に注目してみてください。
文/TARO
【TARO】
競馬予想ブログとしては屈指の人気を誇る『TAROの競馬』を主宰する気鋭の競馬予想家。12月5日に最新刊『馬券力の正体 収支の8割は予想力以外で決まる』(オーパーツ・パブリッシング)が発売になった。著書は他に『競馬記者では絶対に書けない騎手の取扱説明書』(ガイドワークス)、『回収率を上げる競馬脳の作り方』『回収率が飛躍的に上がる3つの馬券メソッド』(扶桑社)が発売中。