「パチンコ店に就職する」
 この言葉を聞いたら、あなたはどのようなイメージを持つだろうか。

 一時は業界第3位の店舗数を誇っていたガイアが実質的に倒産となり、老舗メーカー「西陣」の廃業など、世間的にも「冬の時代」というイメージを与えてしまった2023年のパチンコ業界。世情の影響を受けやすそうなパチンコ業界だが、「転職事情」はどのようになっているのだろうか。

 そこで今回は、パチンコ業界の転職事情に迫るべく、パチンコ業界に特化した転職支援エージェントのパイオニア「株式会社パック・エックス」の嶌田氏と竹中氏のお二人に事情を伺った。嶌田氏は勤続17年、竹中氏は勤続10年で、両者ともパチンコ転職におけるエキスパートである。そんなお二人は、業界の未来をどのように見ているのだろうか。

◆パチンコ業界はコロナ禍で人材不足に

——まずは御社が紹介している就職先についてお伺いしたいのですが、主にパチンコホールという認識で間違いないでしょうか。

竹中氏:そうですね。9割方ホールへの就職で、稀にその法人が運営している他業種やパチンコメーカー、機械の販売会社等への就職もあります。

——そのうえでお聞きしたいのですが、ここ数年の求人の動きについていかがでしょうか。

嶌田氏:いわゆる「コロナ前」の2019年あたりは、ここ10年で最も多いといっていいほど求人数がありました。世間の有効求人倍率も1.6倍ほどあり、パチンコ業界以外も人材不足だったと思います。しかしコロナによりパチンコ業界は大打撃を受け、求人数も求職者数も減りました。ホールも当時の状況で「ホール運営を拡大・縮小するべきか、どこまで人を採用していいのか」と営業方針を悩んでいたと思います。

◆6年前と比べて25%近くのホールが閉店

——当時と状況は多少なりとも変わったと感じますが、昨今の状況はいかがでしょうか。

嶌田氏:弊社のサービスを利用するパチンコホール運営企業の動向データでは、2021年の5月頃から採用ニーズが徐々に高まっており、現在はコロナ禍以前の状況に近いといえるでしょう。他業種の求人が増加し競合性が増したことは明らかで、今年の2月頃からは求職者優位の売手市場へ完全に移行した、という数値が見てとれます。

——そんなにですか!? コロナ禍の影響でホールやメーカーが多く倒産したイメージもありますが……。

竹中氏:それも事実ですね。2017年は1万店舗以上あったパチンコホールが今は7〜8千店舗まで減りました。パチンコ・パチスロメーカーも老舗を含め何件も倒産や他メーカーの傘下になりましたよね。

——ホールも25%近く閉店したんですね……。「生き残ったホール」の採用については現状いかがでしょうか。

嶌田氏:営業意欲に燃えている法人が多いですよ。特に何十件もホールを抱える大手法人は今後出店計画を積極的に立てているところも多いです。

◆転職エージェントから見た「パチンコ業界の景気」

パチンコ——そんな昨今、エージェントから見たパチンコ業界の景気についてはどう感じますか?

嶌田氏:ホールとユーザーが減った分、業界の市場規模は縮小していますが、スマスロなどの話題性のある遊技台の導入などから、業界の盛り上がりを感じています。その影響なのか、パチンコ業界以外に転職をされた方から今の業界動向に関するお問い合わせは増えています。

——では、ホール社員の年収事情はどうなんでしょうか。私は「ホール店員=高給取り」というイメージがありますが……。

竹中氏:以前は店長で年収1千万円という方もいました。今は企業間の年収格差がなくなり、店長の平均年収は約630万ほど、エリア長で約800万くらいですね。店舗数が下がっている中でも安定した経営をされている優良法人は今も多く、そのような法人は年収が高い傾向があり、年収ベース自体が引きあがっている状況です。

◆パチンコ店員の労働環境は改善傾向に

——働き方に関してはいかがでしょうか。一昔前は「店内はタバコの煙があふれ、ドル箱運びで腰を痛め、朝から晩までの長い勤務時間で休日は少ない」なんてイメージもありましたが……。

竹中氏:そんな時代もありましたね(笑)。店内環境という点でいえば働きやすくなってきたと思います。現在は改正健康増進法に伴い、パチンコ店内は原則禁煙となっていますし。各台計数機や自動景品交換システムなどの設備の普及も進んで、肉体的にもかなり楽になってきていると思います。勤務数という点においても、5年ほど前の月間公休日は7.2日平均で現在は7.8日まで増えているなど、徐々に改善されている状況といえるでしょう。

——一昔前のパチンコ店のイメージとは全く変わっているんですね。環境がよくなっているからこそ志望する人も増えているのだと思いますが、パチンコ業界の転職を目指す人の志望理由はどういったものがありますか?

竹中氏:理由は様々ですが、正社員を希望される方は「接客スキルを活用したい、給与が良い、パチンコ・パチスロが好き」といった理由が多いです。なかには、YouTubeやSNSからパチンコ動画を見て興味を持ったという方もいますね。アルバイトスタッフの応募者では「髪型・髪色が自由、働いているスタッフの動画をきっかけに一緒に働いてみたいと思った」という声もあるようです。

◆今後のパチンコ業界はどうなる?

パチンコ——パチンコ店の労働環境については、今後も良くなっていくと考えてよろしいでしょうか。

竹中氏:設備が更新されていくことで機械トラブルは減り、ホールスタッフの作業効率は上がっています。ここ数年でも変化を感じていますが、より生産性があがるのではないでしょうか。働きやすい環境作りが進み、働く人にとってより良い職場環境に変わっていくと思います。

——では、パチンコ業界の今後はどうなっていくとお考えですか。

嶌田氏:これは今もいえることですが、パチンコ業界全体でみると二極化が進んでいます。大手企業は更に伸び、中小企業は大手企業の傘下に加わったり、残念ながら閉店、倒産を迎えるいう構図はこのまま続いていくのではないでしょうか。

店舗数が減ってしまうことでネガティブに捉えられがちですが、逆に「厳しい時期を乗り越えた優良企業といわれる企業の割合が増えている」とも言えます。業界を良くしたいという想いを持つ経営者の発信が増えていけば、業界はより良くなっていくはずです。その一端として待遇改善を行う企業も増えていますが、そのような企業が増えることで働く社員の幸福度は更に高まっていくでしょう。

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 一昔前の「労働時間が長く休みも少ない、ドル箱を運ぶ等肉体労働も多く大変」というイメージから、大幅に改善された現在のパチンコ店における労働環境。このような環境が業界のイメージを高めているのも事実であるため、パチンコ業界で働くことが自慢になるような日も遠くないのかもしれない。

取材協力/株式会社パック・エックス
全国のパチンコホールと求職者の支援を行い、今期で31年目を迎えるパチンコ業界転職支援のパイオニア。嶌田氏、竹中氏、両者とも国家資格キャリアコンサルタントを保有。

取材・文/バリンコン



【バリンコン】
パチンコ攻略誌の編集を9年間務めた後フリーの編集者へ転身。多数のメディアやメーカー等業界内に広い人脈を持つ。日々取材をこなしながら業界内の情報を収集中