2023年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。男性の身だしなみがワンランクアップする「ファッション」部門の第4位はこちら!(集計期間は2023年1月〜10月まで。初公開2023年5月24日 記事は取材時の状況。価格の変更や現在販売していない商品もあります) *  *  *

 メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。よろしくお願いします。

 長年ユニクロを推し、年間1000万円近くをユニクロに費やしてきた私ですら、最近店舗に足を運ぶ機会が減ってきております。今回は王者ユニクロ帝国の陰りをお伝えします。

「最近、ユニクロよりGUに行くことが増えてきたなあ」

 そんなふうに思ってる人は、私だけじゃないはず……。

◆理由①「今のユニクロは地味すぎてワクワクしない」

ワイドフィットジーンズ(丈標準74〜77cm) 5~10年前までならユニクロでよかった。でも、今は「ユニクロだけ」ではなかなかおしゃれは実現しにくい現状があります。その原因は「トレンド」です。

 以前までのトレンドは「ノームコア」、スティーブ・ジョブズのようなシンプルな着こなしこそがかっこいいとされていた価値観ですね。普通の無地の服を普通に着るのが「結局、一番おしゃれでしょ?」と皆思っていました。

 これは60年代のカルチャーであるビートニクにも通ずるところがあります。文化・文学・思想などライフスタイルを包括したトレンドだった60年代のビートニクカルチャーでは、若者は皆あえて装飾的なものを避け、ごく普通の地味なコーディネートを好んでいました。

 その後、70年代に入りヒッピーやサイケデリックなどの装飾的なトレンドがやってきます。ジョン・レノンが活躍したあの時代、ブーツカットにミリタリーのジャケット、アクセサリーをゴチャゴチャとつけて花柄やピースマークのワッペンをこれでもかと貼り付けていたデザインが印象的です。

◆少し個性のあるコーディネートを好まれるようになったワケ

 まさに現代でもこれらのトレンドがリバイバルされており、シンプルな「ノームコア」から「装飾的」な着こなしに移行しているワケ。

 また、SNS文化がすっかり浸透した現代、インスタでは写真一枚でコーディネートを評価されることも多い。そのため、写真からではわかりにくい無地でシンプルな服が好まれず、ロゴや特別なデザインや派手な色使いを求めるようになりました。

 そうしてトレンドは徐々に派手な着こなし、少し個性のあるコーディネートを好むようになってきているわけです。

◆ほんのわずかに個性を取り入れた「ちょうどいいデザイン」

 もちろん無地やシンプルな服が悪いわけではありませんが、「それだけ」では地味な印象が強くなかなか評価されにくくなっているのが昨今。ユニクロのシンプル服は、「素材がいい」のは間違いないですが、なかなかそれだけではオシャレなコーデを作るのが難しくなってきています。

 他方、GUはデザインアイテムを取り入れており、大幅な増収益を実現しています。それも「やりすぎ」なデザインではなく、ほんのわずかに個性を取り入れ、今のトレンドにもシンプル志向の日本人の気質にも合ったウマい提案を続けています。

・ワイドフィットジーンズ(丈標準74〜77cm) 3990円

 ユニクロがトレンドを意識して作ったワイドジーンズ。確かに今までのユニクロにはない新しい取り組みで素材もよくコスパも素晴らしい。僕もこちら愛用していましたが……。

◆ユニクロの半額程度の価格にもかかわらず…

・デニムバギースラックス(丈標準68.0〜72.0cm)(セットアップ可能) 1990円

 GUでは同じようなワイドジーンズにほんのわずかにアクセントをプラス。スラックスのようなセンタープレスを入れちょっとデザインを入れておしゃれ感を強めています。

 しかも、ユニクロの半額程度の価格……。正直、どっちがおしゃれに見られやすいかと言われると、GUのほうかもしれません。

 無地シンプルなモノ作りはユニクロのコンセプトですが、それらが少しずつトレンドから乖離し始めています。「ユニクロはもう少しデザインアイテムを数点でもいいので取り入れて、おしゃれに見えやすくする展開をしなければならないのでは……?」と思います。

◆理由②「値上げがじわじわ効いている」

ウルトラストレッチスウェットセット(長袖) ユニクロは原材料費、物流コストの増大から値上げを決断しました。これはどの業界でもどの製品でも共通した問題で、ユニクロが企業努力していない結果などではありません。

 原油価格の高騰、世界的な物価高からくる原材料費の圧迫、円安……今まで通りの価格で提供できる業界の方が少ないはず。特に服作りは日本だけですべてを賄えるほど国内の生産キャパは大きくありません。

 どこかで必ず(made in japan表記のものでも、実はほとんど必ず)製造フローに海外が介入しているため、どのブランドもこの問題を避けて通ることはできないのです。

◆他ブランドと比較しても大きな値上げ率

 しかし、そんな値上げラッシュの中でも、ユニクロの値上げ率は甚大です。

感動ジャケット5990円→6990円
スマートアンクルパンツ 2990円→3990円
オックスフォードシャツ 1990円→2990円
スウェットフルジップパーカ 2990円→3990円
チノショーツ1990円→2990円

 代表的なアイテムを見てもご覧の通り。1990円が2990円に値上げって……わかりやすいように10円だけ繰り上げれば2000円が3000円になっているわけでその値上げ率はなんと驚異の50%。150%もの価格変化が起きているわけです。これは他ブランドから見てもかなり顕著な数字です。

 比率で言えば「2万円のアイテムが3万円になっている」のと同じですよ。小規模で経営がキツい高額なデザイナーズブランドでも2万円を3万円にいきなり上げるなんてことはそうそうしません。段階的に上げるならともかく、一気に値上げしすぎでは……?

◆2990円なら許せても、4000円なら気になってしまう

 もっともユニクロは客数減・客単価増でわずかに増収になっているので経営的には戦略大当たりなのですが、実経済で不況にあえぐ我々消費者からするとちょっと負担金額が大きいなと思ってしまいます。

・ウルトラストレッチスウェットセット(長袖) 3990円

 たとえば、こちら。ユニクロがコロナ禍で売上を急伸させたルームウェアカテゴリの中でもスタンダードなアイテム。

 僕も数着持って愛用していますが、これ以前までは2990円でした。上下2990円でこのストレッチ性、着心地もよく見た目もかっこいい。あまり文句がありませんでした。

 しかし、1000円高くなり、3990円……およそ4000円です。部屋着に4000円と言われるとわずか1000円の差ではありますが、ずいぶん高く感じます。それに伴って「粗」も気になってしまい……。

 この製品、ストレッチ性があまりにも高くて糸がテンションに耐えきれず、ほつれたり、穴が開いてしまうケースが多いよう。僕も空いてしまったしカスタマーレビューでもそうした声が目立ちます。

 2990円なら「まあ安いしこのくらいは」と許せていたものが、4000円となると「うーん……」とほかの選択肢を探し始めてしまう。

◆GUなら同じようなデザインで上下で2000円

・ソフトスウェットセット(長袖&ロングパンツ) 1990円

 ストレッチなど素材面ではユニクロより劣るもののGUなら同じようなデザインで上下で2000円、半額です。「これでいいかなあ」となっちゃう人も多いんじゃないでしょうか。

 ちなみにGUは値上げせずお値段据え置き宣言をしています。

◆理由③「コラボが減って変化がない見応えがない」

 素材を重視するモードなデザイナー「ジルサンダー」とのコラボ、グラフィックが印象的なハイブランド「マルニ」とのコラボ、アメリカで人気の「エンジニアドガーメンツ」とのコラボなど。

 ユニクロの得意技といえば世界的なデザイナーとの協業企画。毎年それを楽しみにしていた人も多いのではないでしょうか。

 しかし、ここ最近のシーズンではメンズはユニクロUとJWアンダーソンという長年続けてやっている定番コラボの2つのみ。今までとコラボの件数が減ってしまいました。

 さらに定番コラボのユニクロUとJWアンダーソンも展開型数が大幅に減ってしまっており、ボリューム不足。

◆毎シーズン、大型コラボを発表するGU

 ただでさえユニクロは定番品が多く、目新しさに欠けるのに、唯一の斬新デザインが楽しめるコラボレーションの展開型数が減ってしまいガッカリ。

 目新しさがないため店舗に足を運ぶ回数が減った人も少なくないのでは……。ユニクロ製品はせっかく質が高いベーシックが多いのに、知る機会を失っているのではと思います。

 他方、GUは以下のように毎シーズン、新しい大型コラボを精力的に発表しています。意外性も手伝って話題となり、多くの新しい顧客をつかんでいるのでは。

・GU×ビューティフルピープル
・GU×ミハラヤスヒロ
・GU×アンダーカバー
・GU×ソフ

◆優秀なユニクロ運営部隊による「逆襲」に期待

 ……と、ここまでユニクロのネガティブポイントを挙げてきましたが、もちろん「愛ゆえに」です。

 相変わらず素材の秀逸さは業界トップだと思いますし、それに伴いコスパも素晴らしいです。しかし、目新しさやトレンド感などわずかなポイントで評価を下げているのはあまりにももったいない!

 もちろん優秀なユニクロ運営部隊は今、私が感じているようなことはすでに織り込み済みでしょう。何か対策を準備していると思いますので今後に期待です! 頑張れ、ユニクロ!



【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『MBの偏愛ブランド図鑑』のほか、『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Twitterアカウント:@MBKnowerMag)