コロナ禍の外出制限や在宅勤務の影響などもあり、宅配物の数量が増加する中、配達員を困らせているのが“再配達”です。顧客への再訪問によるリスクは、配送効率の悪化だけではなく、運送車両の排ガスによる地球温暖化にまでつながります。今回は、尋常ではない再配達に振り回された配達員のエピソードです。
 配達員歴4年目の小林さん(仮名・27歳)。大卒で就職浪人を余儀なくされ、資格取得のかたわらアルバイトで入ったこの道だそうですが、現在はこの仕事にやりがいを感じているそうです。

◆不在がデフォルトな配達先

「時には、3度目の訪問でようやく配達が完了することも珍しくはありません。特に、日中は外出する人も多いので困ったものです。最近は“置き配”という手段も定着化してきたので、少しはマシになりましたが、“不在”は私たち配送員にとってかなりのリスク要因ですね」

 と、不在配達を嘆く小林さん。中でも特に悩ませているのは、Mさんという女性宅への配達だといいます。

「住宅街エリアにある一軒家のお宅なのですが、ほぼ不在なんです。不在に加え、このお宅は細い路地のような階段状の私道を進んだ突き当たりにあり、台車も使用できず荷物を担いで向かうので、大きな荷物の場合はかなり大変ですね」

◆非常識な再配達依頼電話

 小林さんにとってMさん宅への配達は、いろんな意味でハードルが高かったといいます。というのも、不在票投函後しばらくして再配達の連絡が必ず入るそうです。

「たいてい僕が不在票を投函して20〜30分後には再配達の電話が入るんです。その内容が『ねぇ、今から持ってきてくださる?』とか『もう一度すぐ配達可能ですか?』など、とうてい対応できないような内容です。こちらも再配達は避けたいので極力がんばりますが、ほとんどがむちゃな依頼なんです」

 小林さんには、Mさん宅への配達に関して他にも気になる点があるそうです。

「以前配達にうかがったとき、明らかに家の中からお子さんの声やドタバタする音が聞こえるのに、何度ピンポンを押しても反応がなかったんです。しばらくして家の中は静かになったのですが、結局ピンポンに反応はなく諦めて帰ったことがありました」

 どうやら居留守の可能性が濃厚なのだそうですが、小林さんはその理由が不可解すぎるといいます。

◆居留守とその理由が明らかに

 毎度のごとく、その日もMさん宅への配達があった小林さん。しかし、案の定不在だったので、いつものように不在票を投函して車に戻ったといいます。

「しょうがなく荷物を持ち帰って車に戻りました。すると、運転席の窓を“コンコン”とたたく音がしたので振り向くと中年の男性が立っていたんです。その男性は『ウチに何か配達でした?』と言ってきたので、Mさんが不在だった旨を伝えると、少し驚いた男性は玄関まで一緒に荷物を運んでくれました」

 男性はMさんの夫で、荷物の宛先がMさん宛であることを確認したあと、リビングに向かって大きな声で「この荷物ママの?」と少し声を荒げて確認したそうです。

「びっくりというか、やっぱりというか、居留守は決定的でした。詳しくはわかりませんが、どうやら旦那さんに内緒でオンラインショッピングを楽しんでいたそうです」

◆待っていたまさかのサプライズ

荷物 居留守がバレてからMさん宅への配達はピタリと止んだそうですが、1か月後久々に配達へ向かった小林さん。1度のピンポンで応答があったといいます。

「なんか拍子抜けしました。以前は居留守の連続でしたからね……。そのまま玄関で荷物を持って待っていると、Mさんと旦那さんが一緒に現れたので、受領印をもらって帰ろうとしたら『少し待ってください』と呼び止められたんです」

 Mさん夫婦は、今受け取った段ボール箱を開け、その中に入っていた品物を小林さんにプレゼントしたといいます。小林さんが久々に運んだ荷物は、自分へのプレゼントだったのです。

「箱から出てきたのは、ラッピングされた高級なレインコートでした。今まで迷惑をかけたお礼だそうです。Mさんいわく、内緒で美容器具を買い漁っていたらしく、バレるのが恐くて、リモートワーク中の旦那さんがたまに外出する時に合わせて無理な再配達依頼をしていたそうです」

 それ以降、Mさん宅への配達頻度は減りましたが、不在はなくなったそうです。

<TEXT/ベルクちゃん>

―[カスハラ現場の苦悩]―



【ベルクちゃん】
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営