都会に住んでいると近所付き合いもほとんどないが、隣近所の住民に会ったら挨拶程度はする人も多いはず。人によっては無言で軽く会釈で済ましたり、無視して素通りしてしまう者もいないわけではない。それでも挨拶しただけで相手に怒鳴られるなんてことは通常ではまずありえないはずだ。
「でも、それが実際に起こったんです。子どものころ、挨拶しないで親や学校の先生に注意されたことはありましたけど、挨拶しただけなのに相手にキレられたなんて後にも先にもこの時だけですよ」

◆近所付き合いする気ゼロの老人に困惑

 そう振り返るのは、医療機器メーカーに勤める富岡誠二さん(仮名・40歳)。地方都市に単身赴任中だった18年、マンションの同じ階に一人暮らししていた70代くらいの年配男性とすれ違う際、「おはようございます」と挨拶したところ、返ってきたのはまさかの「うるさい!」の一言。想定外の事態に一瞬何が起こったのか理解できなかったという。

「その方はウチの2部屋隣に住まれていて、会うのはこのときがはじめて。まだ引っ越して間もない頃だったため、挨拶のあとに『今度越してきた――』と軽く自己紹介しようと思ったのですが、言うヒマすら与えてくれませんでした(苦笑)」

 ちなみに後日、年上の隣人Kさんにそのことを話すと「ああ、○○さんね」と妙に納得した様子。年配男性は富岡さんが引っ越す1年半ほど前から住み始めたそうだが、引っ越しの挨拶は一切なし。しばらく経ったある日、帰宅するタイミングで男性がちょうど家から出てきたため、挨拶しようとすると彼も「うるさい!」と怒鳴られてしまったそうだ。

「被害に遭ったのは自分だけじゃなかったんだと少しホッとしましたが、挨拶しただけでキレるってどう考えても普通じゃないですよね。そんな人なら問題を起こしても不思議ではないですし、今まで住んでいた場所の近所にはそんなヤバい人はいなかったのでとにかく不安でした」

◆「公園で遊ぶ子ども」にも怒鳴っていた

 実は、年配男性はこの時すでにマンションの住民の間ではブラックリスト入りしていた要注意人物。ほかの住民たちの証言から数々の問題を起こしていることが明らかになる。

「ワンルームじゃない普通のマンションのため、私と違って家族で住んでいる方が多く自治会の会合も定期的にあるんです。もちろん、あのじいさんはこうした集まりも出ませんけどね。基本的に面識のあるなしに関係なく挨拶を交わす住民の方が多いのですが、あのじいさんだけは誰に対しても『うるさい!』で返していたようです。さらに『公園で遊んでいる子どもたちに静かにしろと大声で叫んでた』や『選挙カーに向かってキレていた』などのエピソードが出るわ出るわ。管理人や自治会を通じて何度か注意しようとしたそうですが、話の通じる相手ではなく、どの住民もかかわらないようにしていたそうです」

◆耳元で「うるさいのはテメェだろ!」と…

 ところが、“ある出来事”をきっかけに年配男性は大人しくなってしまう。その立役者はKさんの息子。すでに就職して親元を離れていた彼は、富岡さんが引っ越してから約半年後に久々に帰省。2人の間に面識はなく、事情を知らない彼が元気よく挨拶するが例によって「うるさい!」と怒鳴られてしまう。普通ならこれで怯んでしまうところだが、Kさんの息子はなんと年配男性の耳元で「うるさいのはテメェだろ!」と盛大にブチ切れてしまったのだ。

「私は直接現場を見たわけではないですが、怒鳴り声がするのは聞こえていました。これは後からKさんに聞いた話ですけど、彼の息子は立派な好青年って感じでしたが10代の頃はかなりヤンチャしていたみたいなんです。しかも、じいさんには『今度同じ事やったら容赦しないぞ』的な脅し文句も吐いたようです。Kさんは『状況はどうであれ恫喝まがいの態度を取ったことは叱りましたが、正直よくぞ言ってくれたと思いました』って。私もまったく同じ気持ちでした」

 なお、年配男性はその後もほかの住民との交流はなかったが、富岡さんが単身赴任先に住んでいる間は怒鳴るなどの行為はしなくなったという。

「見るからにヤバそうな風貌をしてるならともかく、どこにでもいそうな高齢者。まあ、ひとりであのマンションに引っ越してきたってことは、いろいろとワケありだったのかもしれませんけどね」

 人は年を取ると怒りっぽくなると言われているが、こんな風に近隣住民に迷惑をかけるようにはなりたくないものだ。

<TEXT/トシタカマサ>

―[キレる老人の恐怖]―



【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。