街の至るところで再開発が行われている。まるで傷を覆い隠すかのように白い囲いができている。そんな再開発で今、急速に失われつつある古き良き“せんべろ街”。賛成派と反対派の声が錯綜する街を訪ね当事者たちに話を聞いてみた。
◆赤羽「一番街商店街」火災が“再開発の決定打”となるか

 JR赤羽駅東口のせんべろエリア「一番街商店街」。昭和の風情が漂う中、ひときわ賑わうのがアーケードのある路地「シルクロード」だ。

 木造長屋に飲み屋が密集しているため、かねてから防災面が不安視されていたが、’23年クリスマス、4棟が延焼する火災が発生。消防車が40台出動する大騒動となった。

 幸いケガ人は軽傷者のみだったが、火事は「再開発の決定打」と口にする住民もいる。これで再開発が一気に進むのか? 

◆「せんべろかタワマンか」の単純な2択ではない

 これまで紆余曲折してきた経緯を北区区議会議員の野々山研氏は話す。

「20年前から再開発の話はありました。そのときは駅前一帯の再開発案でしたが、地権者の数が多く頓挫。そこで’16年から、地域を3分割した再開発案が出てきました。比較的大きく、老朽化したビルがある第一地区では’25年に取り壊し開始、’29年に地上26階建てのタワマンが完成予定です」

 そして一番街のメインストリートで左右に分かれる第二地区、第三地区でも準備組合が設立され、詳細は未定ながら、再開発への機運は高まる。

 だが事態は「せんべろかタワマンか」の単純な2択ではない。飲み屋街に囲まれた北区立赤羽小学校が、再開発に巻き込まれているという。野々山氏が続ける。

◆「赤羽の顔はせんべろよりむしろ小学校」

「赤羽駅東口は150年近くの歴史を誇る赤羽小学校を中心に商店街ができ、栄えてきました。児童の登下校を商店街の大人が何世代にもわたり見守るなど、小学校と商店街の繫がりは特別なもの。住民からすれば赤羽の顔はせんべろよりむしろ小学校です。それがタワマンに囲まれると、日照の問題やビル風の影響は避けられないから、せんべろ街の再開発に合わせ『小学校を移転する』というわけです」

 この一連の動きに、「やさしいまちをつくる会・北区」代表の藤平輝明氏は不信感を募らせている。

「もし赤羽小学校を移転させるなら、赤羽会館や赤羽公園があるエリアしかありません。駅周辺では数少ない緑があり、親子連れの憩いの場です。区は民間コンサルタント会社に赤羽駅東口周辺の公共施設のあり方の調査を依頼しています。しかし開示された報告書の大半は黒塗り。区は広大な小学校の土地を開発業者に売却するために、再開発を誘導しているのではないでしょうか。公民連携といえば聞こえはいいですが、結局はタワマンを建てなければ民間にはうまみはないわけです」

 ’23年11月、駅前で行った署名活動では、2983筆を北区区長に提出した。「小学校移転反対の声が多数」だという。

◆「まだピンとこない」という声が多数

 公共施設の再編問題にも飛び火するが、現地を取材してみると、意外にも「まだピンとこない」という声が多数だった。野々山氏は話す。

「一番街はほとんどがテナントです。地権者以外の住人はまだ議論に十分参加できていません。正解はありませんが、後々、こんなはずじゃなかったと泣きを見るのが再開発の常です。区には幅広く住民の意見を聞いてもらいたい」

 来る者拒まずの寛容な赤羽の街は残るのか?

取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/杉原洋平 図版/松崎芳則(ミューズグラフィック)

―[[せんべろ街が消える]の大問題]―