―[シリーズ・駅]―

 現在、JR東日本で発売中の『旅せよ平日!JR東日本たびキュン早割パス』(通称『キュンパス』)。利用期間は2月14日〜3月14日の平日のみ、14日前までの購入など条件はあるが、1日1万円で同社管内の新幹線・特急を含む全列車とBRTが乗り放題(※指定席は2回まで)。さらに第三セクター鉄道の青い森鉄道線、いわて銀河鉄道線、三陸鉄道線、北越急行線、えちごトキめき鉄道線(直江津〜新井間)の各路線も乗り降り自由のかなりお得な切符だ。
 今回、筆者は利用開始日の2月14日にキュンパスを利用して乗り鉄の旅に出発。実際にこの周遊券を利用して気づいた点などを交え、旅の様子をレポートする。

◆指定席が利用できるのは2回まで

 当日早朝、始発6時8分発の上越新幹線に乗るべく東京駅に向かうと、ホームにはいかにも鉄道ファンという私服姿の男性たちが大勢いる。カメラやスマホで列車を撮りまくり、筆者と同じ車両の列に並んでいた神奈川在住の50代の男性会社員は「この日のために有休を取りました(笑)」と嬉しそうに話していた。

 なお、筆者が座ったのは上越新幹線の自由席。冒頭でも少し触れたが、この切符は指定席が2回までとの縛りがあるからだ(※指定席を3回以上利用する場合は、乗車券分のみ有効)。

 JR東日本管内を走る新幹線のうち、東北・北海道新幹線の『はやぶさ』『こまち』、秋田新幹線、山形新幹線、北陸新幹線の『かがやき』には自由席がない。加えて、首都圏発着の特急も大半が全車指定席だ。そのため、事前にどういったルートで回るかある程度決めておかなければならず、快速・普通列車が乗り放題の『青春18きっぷ』のような行き当たりばったりの旅は難しそうだ。

 列車は定刻通り出発したが、前日ほとんど寝ていなかったこともあり、大宮に着く前には爆睡。目が覚めると「次は終点・新潟」という車内アナウンスが。途中の雪景色を見ることができなかった。

◆冬なのに雪景色がまったくない!

 新潟駅からは在来線の特急『いなほ』に乗り換えて秋田駅へ。到着12分後の発車のため、駅の外をブラブラする時間もない。新幹線を降りた同じホームの反対側からが出発するため、乗り換えは楽だが新潟に来た実感をまったく感じられないまま列車は発車した。

 いなほ号は自由席があったが、秋田駅までは約3時間半と長いので指定席を利用。自由席は案の定混雑しており、この選択は間違っていなかったようだ。

 途中、お昼にはまだ早かったがお腹が減ってしまい、車窓の景色を眺めながら東京駅で事前に買っておいた駅弁を食べることに。お供は人気駅弁としても有名な米沢駅名物の『牛肉どまん中』(税込み1350円)。食べたのは10数年ぶりだったがやっぱり美味い。

 けど、肝心の景色は北上しても雪がまったくなく、まるで秋のようだ。それでも海沿いの区間が多く、ただ海を眺めているだけで心が癒される。こんな贅沢な時間の過ごし方も悪くないものだ。

◆もう少し時間に余裕があれば…

 終着の秋田駅では40分少々時間があったので駅構内を探索。巨大な秋田犬やなまはげの置物があり、駅に居ながらしてご当地感が味わえるのはありがたい。

 駅構内の立ち食いそば屋『しらかみ庵』をのぞくと、秋田名物の『稲庭うどん』(税込み900円)があったので券売機で思わず購入。ほかのメニューに比べると値段は張るが、生めんということで納得。のど越しよく駅そば屋で簡単に食べられるのもうれしい。

 駅ビルにも稲庭うどんや比内地鶏、地元海産物を扱った飲食店もあり、もう少し時間に余裕があればこっちでゆっくり食べたかったのだが……。

◆青森ではプチ観光と温泉を堪能

 そして、次は12時40分発の特急『つがる』で青森へ。4両中2両が自由席だったので発車5分前の乗車でもなんとか窓側の席を確保できた。

 発車後しばらくは相変わらず雪のない風景が広がるも、秋田・青森の県境地帯でようやく待望の銀世界に突入。北国の冬といえば雪景色だし、やっぱりそのほうが旅情を感じるというものだ。

 青森駅には15時22分に到着し、駅近くにある『青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸』と『ねぶたの家 ワ・ラッセ』を見学。その後は駅から歩いて5分ほどの『まちなか温泉』で小休止することに。

 ちなみにキュンパス訪問可能な駅では、最初の上越新幹線で通過した越後湯沢駅の構内にも温泉あったが営業時間前だったので断念。ほかに津南駅(飯山線)や高畠駅(山形新幹線)、ほっとゆだ駅(北上線)の各駅に温泉施設が併設されており、いずれかの駅を経由する形でルートを組むのも面白そうだ。

 ひと風呂浴びた後は、17時26分発の普通列車で隣の新青森駅に向かい、17時44分の新幹線『はやぶさ』で盛岡駅に移動。

 貴重な2回目の指定席だったが、夕食のためにあえてこの駅で降りることにしたのだ。

◆17時間半かけて東日本を一周!

 目当ては名物の盛岡冷麺。駅の商業施設内にある『大同苑』で『盛岡冷麺セット』(税込み1650円)を頼んだが、コシの強い麺がたまらない。駅やその周辺には同じく名物のわんこそばやじゃじゃ麺のお店も複数あり、乗り換えついでにご当地グルメを楽しむのにちょうどいいかもしれない。

 お腹が膨れた後はイルミネーションで彩られた駅前など周辺を散策し、自由席のある20時29分発の新幹線『やまびこ』で東京駅へ。23時44分に到着し、約17時間半に及んだ東日本一周日帰りの旅は無事終了。さすがに疲れたが乗り鉄的には大満足の1日だった。

 最初にも説明したが、キュンパスが利用可能なのは3月14日までの平日のみ。14日前までの購入が必要なので販売は2月末までということになる。加えて、JR東日本の予約サイト・アプリ『えきねっと』のみの販売で、みどりの窓口や駅券売機ではお買い求めができないので覚えておこう。

 仮に東京駅出発の場合、往復なら仙台駅、新潟駅、長野駅で十分すぎるほど元は取れる。旅行だけでなく前もって予定が分かっていれば出張用の切符にも使えそうだ。

 期間は限られているものの旅行や仕事で遠方に行く予定がある人は、この機会にぜひ利用してみては。

<TEXT/高島昌俊>

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【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。